東京大学法学部緑会委員会は12月18日、法文2号館31番教室で学生大会を開催した。緑会は東大の授業料値上げ検討に関する学生大会での審議を求める署名提出(61筆)を8月8日に受理。午後5時30分頃から2時間以上の議論を経て、六つの議題について審議した。採決は会場に集まった約20人の学生の票に、電子投票での約50票を加算して行われた。学生大会は数十年ぶりの開催だという。
当日の司会進行を務める議長は2024年11月の選挙で選出された伊藤快さん(法・4年)が務めた。緑会と学生双方の提出案に基づく①授業料値上げ②総長懇談会の形式③学部折衝④緑会の運営⑤法学部の学生生活向上⑥総長懇談会での提案内容─が議題だった。それぞれ複数人の学生が意見し議論が行われた(表)。
緑会の民主的正当性をめぐる議論が活発に展開され、緑会が委員会内部だけで選挙を行っている現状では法学部全体の学生の意見を十分に反映できないとの批判が上がった。学費運動への消極的な対応の背景に民主的正当性の欠如があるとの指摘もあった。緑会委員会は現行の運営体制が業務の円滑な遂行に最適であり、法学部の学生なら誰でもいつでも参加可能なので選挙によって一定の正当性が確保されていると主張。学生自治の在り方への関心の高さと課題が浮き彫りになった。
議案の進行は提出者の説明後に質問や意見を受け総括演説を経て、採決に移る形式。参加者の発言は1回2分以内とされた。緑会など特定の団体に行動を求める場合は、全体討議に移る前に関係機関の意見を聴取する時間も設けた。
学生大会は300人の普通会員の出席で成立。今回のように定足数を満たさない場合でも仮決議を行うことが可能だが、学生大会を再度速やかに開く必要がある(定足数は問われない)。投票の結果、議案は全て仮決議となった。投票後には議場から緊急動議が提出。総長懇談会が公開されない場合に緑会がボイコットするよう求めたが、出席者の過半数の賛成を得られず否決された。
法科大学院に通うある傍聴人は、この大会をXでの告知をきっかけに知った。学生大会の不開催が常態化していたことは「残念」としつつも、緑会が本来の役割を果たして開催に至ったことを評価。「今回仮決議になってしまっても、1回やったことがあるというのが大きな財産になるのではないか」。学生間の議論の場を広げ、最終決定へとつながることを期待した。
議案提出者の2人もインタビューに答えた。議事進行の柔軟な対応で学生が自由に意見できた点を評価。ただ発言が一部参加者に偏ったことは課題であり「表面化しない声の拾い方は考えていかなくてはいけない」。定期的な学生大会開催が主体的参加を促す動機付けになると指摘した。2人が提出した法学部の教室のコンセント不足の議案が重視されたことを挙げ、学生大会が問題解決の契機となることに期待を示す。
学生大会議長は数十年ぶりでノウハウがない中での大会開催を振り返り、緑会との間で適切な距離感を保ちながら議論が進められた点、事前議論などの工夫で活発な意見交換ができた点を評価した。一方2時間で六つの議題を扱う厳しさや参加者数の少なさといった課題にも触れた。学生の声の反映が等閑視されていたのは「大きな損失でありますし、規則に則っていなかったというところも今までの委員会なり議長なりが反省すべきところだ」。12月の任期終了後の引き継ぎを円滑にし、学生大会を定着させることの重要性を訴えた。
【用語説明】緑会
緑会とは①学生自治による学問の自由の確保②学生生活の向上③会員相互の親睦─を目的とした法学部の団体。普通会員(法学部生全員)と特別会員(職員)から成る。卒業生は賛助会員になれる。緑会委員会は学生有志が構成し、ロッカー貸し出しや学部折衝、講演会運営などを行う。学生大会は学生自治の最高議決機関で、①春秋2回の定期大会②委員会による請求③60人以上の連署─で開催される。