気付けば吐息はもう白い…とはまだ言えません(少なくとも東京では)。どんな年にも異例な現象はありますが、2024年はどうも全国的に気温が平年より高いようです。東大でも、入試で文Ⅰ、文Ⅱの両方に第1段階選抜が実施されなかったり、学費値上げが決定されたり、さまざまな「異例」が起きました。同時に、日々の授業は例年通り開講され、五月祭や駒場祭、各部活のリーグ戦など、待み望まれてきた数々の行事は今年も無事行われました。12月号では、そんな東大・東大関係者の2024年を、研究、ニュース、スポーツなどさまざまな観点から振り返りました。さらに、新たに幕を開ける2025年に思いをはせ、豊かな生活をするには欠かせない「ウェルビーイング」の実現に焦点を当ててみました。心身ともに充実して過ごすためにはどうすればいいのか─医療や教育、ジェンダーなどに着目した記事を掲載しています。
こちらのページでは12月10日発行の「ウェルビーイング×年末特集号」の見どころを一挙に紹介します!最後に発行責任者よりコメントも掲載しています。
【見どころ一覧】
<インタビュー> 東大医学部附属病院・田中栄病院長に聞く 医療の意義と未来
<インタビュー> 村上祐介教授(東大大学院教育学研究科)に聞く ウェルビーイングと教育の関係
<記者の声> 東大入学を通して見えてきた、男性同士のホモソーシャルな関係
<ニュース> 2024年の東大を振り返る─キャンパス、運営システム、財政経営の変化とは
+菅野暁理事(CFO)インタビュー
<学術> 2024年の東大の研究、受賞結果を振り返る
<部活・サークル> 2024年東京六大学野球、春季・秋季リーグ戦を振り返る
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「できないこと」を自覚し続け、より良い医療を目指す─東大医学部附属病院・田中栄病院長インタビュー
東大医学部附属病院は「臨床医学の発展と医療人の育成に努め、個々の患者に最適な医療を提供する」ことを理念とし、診療・臨床研究・教育を行っています。しかし、いくら研究が進んでも、治せない病気や解明されていない病態は必ずあるように、医療や医学は明確なゴールがあるものではありません。できることの限界を意識しつつ、東大病院ではメディカルスタッフが最高の医療を提供できるよう務めている、と田中病院長は語っています。そんな医療の現場の実態はどんなものなのか、診療や研究、教育や経営面まで幅広く話を聞きました。
ウェルビーイングの実現のために政治参画と学校教育でのトレーニングを─村上祐介教授(東大大学院教育学研究科)インタビュー
教育はウェルビーイングを実現する上で非常に重要な機能を果たしているとされています。政治と教育の関係を研究している村上教授は、教育によって実現されるウェルビーイングもある一方で、教育を受けることそのものがウェルビーイングの実現でもあると話します。その上で、ウェルビーイングの実現に直結している政治に対して、国民が積極的に政治に参画できるよう教育におけるトレーニングが必要だと指摘します。
どのように教育と政治はウェルビーイングに関わっているのか。さらには、国民が自らの生活を豊かにする手段としての政治参画を確保するために教育に何が求められるのかについて深掘りました。
【記者の声】「男性同士の絆」を考え直す 〜東大入学を通して見えてきたホモソーシャルな関係〜
「東大の女子学生の割合はわずか2割」という事実が相変わらず注目を浴び続けています。一方、残りの8割という数字は家父長制社会の象徴として批判対象になっても、そこにいる彼らが置かれている実際の境遇についての議論はあまり耳にしません。しかし、周りのほとんどを男性が占める特殊な環境は、女性のみならず男性自身にも影響を与えているに違いありません。過度ないじり、恋愛をめぐるあれこれ、終わりの見えない競争─男性社会が抱える困難を語るものとしてこれまでさまざまな視点が提唱されてきました。
この記事が手掛かりとしている「ホモソーシャル」とは、男性社会の基盤にある、男性同士の関係について分析する概念として今から半世紀前に登場した社会用語です。身近な家族や大事な友達に時には特権的な地位を与え、時には生きづらさを背負わせることにもなるホモソーシャルな関係とは何か。そしてそれによる抑圧を少しでもなくすために何ができるのか。それらの答えを探っていく、編集部員によるエッセイです。
生まれ変わる東大 2024年をニュースで振り返る
今年9月、東大が約20年ぶりとなる授業料改定を決定し全国的な注目を集めました。しかし変わったのは授業料だけではありません。19号館の建設や1号館の改修工事、赤門の耐震工事計画など、3年後に迫る設立150周年に向けてキャンパスも生まれ変わろうとしています。
ソフト面でも多くの変化がありました。今年は、東大の運営における基本方針「UTokyo Compass」で示された理念・構想を具体化した機関の設立が続々と明らかになり、5月末には「UTokyo Compass2.0」と題した改訂版も発表されました。
東大は2024年を踏み台に、どこへ向かっていくのでしょうか。1年間の歩みを東大の変化に注目して振り返っています。
生まれ変わる財務経営 東大財政は今
東大は今年9月、来年度からの授業料値上げを正式決定しました。これを機に東大新聞では、東大の法人化から授業料値上げまで、東大の財政面での変化と、東大の今年の産学連携についてまとめました。さらに、昨年東大初のCFO(最高財務責任者)に就任した菅野暁理事に、東大の財務・経営の現状とビジョンについてインタビューしました。
2024年の東大の研究を振り返る
今年も多くの東大の研究者が、研究成果や長年の功績を認められさまざまな賞を受賞しました。日本学士院賞を授与された5人と春・秋の紫綬褒章を受章した7人を中心に、その研究や業績を紹介しています。
<紹介している教授一覧>
菊地重仁准教授、小原一成教授、安藤宏教授、菅裕明教授、清野宏教授、石原一彦教授、沖大幹教授、納富信留教授、藤田友敬教授、岩坪威教授、石原あえか教授、中畑雅行教授など
【六大学野球】攻守に個性が開花した春 2度実を結んだ歓喜の秋
今年の硬式野球部(東京六大学野球)は、0勝の春季リーグ戦から一転し、秋季リーグ戦では7年ぶりの2勝を挙げました。そんな2024年の戦績と選手の活躍を写真とともに振り返っています。さらに編集部員ピックアップの推し選手の紹介、門田涼平選手・鈴木太陽選手・杉浦海大選手・大原海輝選手の4人へのインタビューを掲載しています。多くの東大ファンに感動を届けてきた選手たちの目に2024年はどう映り、来年は何を目指すのでしょうか。
12月号発行責任者より
今年も東大新聞をご愛読いただき誠にありがとうございました。東大新聞では例年、12月号を「年末号」と称し1年間を振り返る特集を掲載しています。一方、今年は「年末」と「ウェルビーイング」と二つのテーマを重ねてみました。他にも、学費値上げに関しての社説を出したり、「東大新聞mini」と題した号外を配ったり、「記者の声」という名で編集部員のエッセイを掲載したり…2024年は東大新聞にとって多くの挑戦をする年となりました。
本号では、2024年に起きた変化や活躍を取り上げると同時に、われわれの日常の基盤にある医療や教育、ジェンダーについても特集を組みました。今年起きた変化や非日常を思い返したり追懐したりしつつ、変わらぬ日常を支えているものを考え直し、これからの生活に思いをはせるきっかけになれれば幸いです。
来年も、読者の皆さまのご期待に添えつつ、東大新聞ならではの新たな価値を届けられるよう頑張って参ります。今後とも東大新聞をどうぞよろしくお願いいたします。(2年・高倉仁美)