目白台インターナショナルビレッジは、キャンパス構成員の多様性を高め、東大の教育研究の質の向上を図る目的で建設される宿舎。本年度9月オープンに伴う学生・若手研究者支援の拡大と施設について、学生支援担当の松木則夫理事・副学長、設計に携わる千葉学教授(工学系研究科)らに話を聞いた。
(取材・山中亮人)
今後の東大の宿舎について、松木理事・副学長は「目白台インターナショナルビレッジの建設に伴い、宿泊施設が拡充されることを受け、若手研究者や学生支援を充実させるため、東大が所有する宿舎の位置付けを見直す」と説明する。本郷キャンパスから最も近い追分国際学生宿舎は、入居対象者を障害のある学生、ポスドク、特任研究員などの若手研究者、研究などで来日した外国人研究者、大学の危機管理に携わる職員や研修医などに変更。2021年度まで現行通り運用し、同年秋季入居で募集を停止する。
豊島国際学生宿舎B棟は、本年度9月より経済困窮学生の宿舎費を2万円から1万円に変更し、経済支援を拡大する計画。豊島国際学生宿舎に入居を希望し、経済困窮学生と判定されたにもかかわらず入居できなかった学生は、目白台インターナショナルビレッジに月額施設使用料1万円で入居できるよう大学が支援することも考えている。ただし、管理費・光熱水費などは別途負担となる。
目白台インターナショナルビレッジは、外国人研究者、留学生や日本人学生を対象に入居募集が行われている。施設部の有村義幸管理課長によると、第2次募集を終えた段階での入居希望者は328人。来年度4月からの入居者を考慮し、合計855戸に対して、開寮時点で50%の入居者数を目標としている。7月31日までの第3次募集が終了した後も随時入居募集を行う。
豊島国際学生宿舎や追分国際学生宿舎とは異なり、日本人学生・留学生別の定員は設けていない。希望者の内訳は留学生の比率が高めだ。定員を上回る応募が集まった場合の選考基準は「検討中」とのこと。
単身用だけでなく、夫婦向けの住戸が96戸ある点も注目を集める。「留学生や外国人研究員向けの住居であるインターナショナル・ロッジを参考にし、一定量の需要が見込まれると判断した」と有村さんは話す。
施設使用料は、最も安い住戸でも5万5300円と他の宿舎に比べて高いが、近隣住宅の相場よりは安く設定されている。「充実した施設と管理運営を提供するため」という。
国際交流をしながら1人でくつろげる場所も
8、9年ほど前から宿舎の設計に携わる千葉教授は「従来の宿舎で実現できなかったコモンスペースを設けることで、留学生が日本の生活に自然になじんでいけるようなコミュニケーションの場を目指した。『第2のキャンパス』とも位置付けられる場だ」と話す。シェア型住居では20LLDKとして、約20人がキッチンやシャワー室などのある一つのシェアブロックを共有する。「20人は、緩やかなコミュニティーを形成する上で適切な人数。日常生活の延長で国際交流が図られれば」と期待を込める。
一方、畳コーナーや多数のシェアリビングなど多様な場所を確保した。「一歩自室から出たら常に誰かと顔を合わせなければならないわけではない。1人でくつろげる場所も必要」と千葉教授は説明する。
セキュリティー面では、鍵と電子キーの併用や宿舎エントランスでの受付常在など、万全を図る。一方で宿舎前の広場や、1階に入居するコンビニ・レストランなどの施設の一部は地域に開放することを検討しているという。宿舎内に併設される産学連携施設は、プロジェクトルームや講義室、コワーキングスペースなどを設置し、主にコンピューターを用いた実験を行うドライラボとして使用される予定。
千葉教授は「学生や研究者が共に暮らし、そこに産学連携施設が連携している国際宿舎はあまり前例がない。大学宿舎の新しい在り方として意義を持つのではないか」と思いを語った。
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この記事は2019年7月30日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナル記事を公開しています。
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