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2025年2月21日

【東大生から受験生へエール】「仮面浪人で一番大事なのはメンタル保持」二重生活への挑戦

 

 大学生活と受験勉強を両立させる──。一般的な受験生とも、大学生とも一線を画す仮面浪人を経験した末、東大に合格したAさん(文系・1年)に、浪人期の話を聞いた。(取材・溝口慶)

 

二つの顔を持つ浪人期の過ごし方

 

 東大に不合格だった自分はX大学へ進学しましたが、東大への思いを捨てきれず、表向きには大学生として過ごしながら、裏では受験勉強もする二重生活を送りました。いわゆる仮面浪人です。当時は尋常でない精神状態だったと思っています。

 

 浪人期は非常に計画的だったので、出席が取られない授業には出席せずに、図書館やカフェ、自宅などその日の気分に合わせて場所を変えながら勉強していました。と言ってもまた東大に落ちた時のためにX大学でも必修の授業は受けて単位も取っていました。共通テスト当日も終わった直後にX大学のテスト勉強をしていましたから。その代わり併願の必要はありませんでした。

 

 過去問は現役の時に一通り触れていたので、現役期に塾でもらった教材を使って勉強していました。現役期より丁寧に問題を解くようになって、世界史は問題を山川の教科書と対比して、足りない箇所を確認しました。もちろん単語帳はずっと継続していました。直前の冬にもなって初めて知ることがあって焦りましたが、現役の時は表面的な勉強しかできなかったと反省して、「また賢くなってしまったかも」と自分に言い聞かせて自信を持つようにしていました。不安は絶対に消せないので、そこに何を上塗りするかが大事ですね。

 

仮面浪人のメンタル保持

 

 仮面浪人で一番大事なのはメンタル保持だと思います。常に不安が絶えず心も落ち着かない状況でしたが、元々0.1点差の不合格だったので、こうも浪人生として頑張っているんだから絶対大丈夫だ、と自己暗示を何度も掛けるようにして毎晩寝ていました。人に会うと気が晴れるタイプなので、時々自分の受験を知る友達に会いに行ってお喋りする日もありました。高校の知り合いには仮面浪人していることを知られたくなかったので、SNSを高頻度で更新して普通の大学生活を送っているフリをしていたんです。でも時々東大生の友達のインスタを見て陰気になることもありました。

 

仮面浪人を決意するまで

 

 X大学へ進学した自分でしたが、出身高校が進学校で、現役で東大に進学した友達が多くいました。SNSでは友達が投稿した東大の入学式やオリ合宿の写真を目にする機会がかなり多かったんです。しかも知る限りでは自分の部活で部長を務めた人の中で、東大に落ちたのは自分が初めてだったり、東大卒の家族がいたり、どうしても東大への思いが断ち切れませんでした。年末にコロナにかかった上での0.1点差の東大不合格でした。共通テストでも防げたミスを多数していて、どれか一つでも正解できていれば合格だったと思うと、本当に悔しくてたまらなかったんです。

 

 それで6月に東大再受験を決心しました。決してX大学が不満で東大を再受験したわけではないですよ。最初に両親や高校の元担任に背中を押してもらいました。でも知り合いには見つかりたくなくて、仲の良い友達に話した以外には話さないでいましたし、予備校にも行かず、模試も高校の近くでは受けませんでした。

 

仮面浪人の大学生活

 

 現役時代に受けなかった予備校の東大模試を7月に受けるところから受験勉強が再開しました。現役とは違うものをやってみようと思ったんです。現役時代の記憶は意外と消えていないもので、夏休みの東大模試も好成績でした。

 

 X大学でも既に二つのサークルに所属していたのですが、忙しいとごまかしてあまり行きませんでした。とはいえ脇目も振らずに、ともいかず友達のSNSを見てふさぎこみ、勉強が手につかなかった5日間は今でも覚えています。気持ちのやり場がない、異常なメンタルだったと思います。

 

 仲が良かった2人の友達には仮面浪人を打ち明け、よく一緒に学食などで勉強していました。受験勉強をしていることを他の人に知られたくないという気持ちは常に念頭にあったので、単語帳は隠して持ち歩き、大学では過去問は解かないようにしましたし、授業中に受験勉強をするときは、先に撮った問題集の写真を見ながらこっそり解いていました。図書館で勉強をしたいときには、大学の授業動画を見ると伝えてクラスメートと別行動をしました。

 

仮面浪人を振り返って

 

 今思えばあの1年間の自分は本当に異常なメンタルだったと思います。周りに悟られないように受験生活を送ると決めて、現役時のトラウマや再受験へのプレッシャーと絶えず戦いながら勉強をするという経験はもう二度としたくありません。しかし、X大学に通えたことはいい経験でした。大学の英語の授業のおかげで英語の点は上がったと思っていますし、クラスやサークルでも友達ができ、東大とはまた違った楽しさがあるキャンパスライフでした。X大学での友達は五月祭や駒場祭にも遊びに来てくれるなど、今も親交があります。

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