東大は今秋、東京大学マーケットデザインセンター(UTMD)を設立した。人やモノの望ましい組み合わせを考える「マーケットデザイン」の研究の深化と、研究から得られた知見の社会実装を目指す。27日には、オンライン上でキックオフシンポジウムが開催される予定。
UTMDのセンター長を務めるのは、今年9月に米スタンフォード大学から東大に移籍した小島武仁教授(東大経済学研究科)。小島教授によると、米国などに比べ日本はマーケットデザインの社会実装例がまだ少なく、センターでは成功例を増やしていきたいという。若手のリサーチアシスタントも採用し、研究の発展と共に人材育成にも積極的に取り組む姿勢だ。
マーケットデザインは、人と人、人とモノの最適なマッチング方法を研究する学問。価格による需給調整に注目してきた伝統的な経済学に対し、価格では調整できない市場を「デザイン」することを考える。理論的な研究も重要だが、社会実装まで考えることを求められる分野だ。
マーケットデザインの社会実装が有望とされている問題の一つに待機児童問題がある。保育園の受け入れでは、少数の認可保育園と、保育園の必要性が点数化された多数の入園希望者をマッチングする。現行のマッチング方式はアルゴリズムに無駄があり、手作業のため労力も掛かる。マーケットデザインの知見を生かすことで、年齢別の定員を柔軟に設定してミスマッチを削減。コンピューターによる自動化で手間を省く。
UTMDのプロジェクトの一つには医療・災害に関わるものも。新型コロナウイルスのワクチンが開発され製造が開始されても、数は限定的であることが想定される。限られたワクチンを必要性の高い人に効率良く配分するのにマーケットデザインの知見が役立つことが期待できる。
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27日のキックオフイベントでは、諸外国におけるマーケットデザインの社会実装成功事例を紹介する予定だという。本紙では小島教授のインタビュー記事を後日掲載予定。
この記事は2020年10月13日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。
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