東山大毅特任研究員(医学系研究科)らを中心とした研究グループは10月26日、これまで謎とされてきた哺乳類特有の顔の進化に関するメカニズムを発見したと発表した。今回の研究結果は哺乳類の進化を探る多くの研究の基盤になるとともに、顔面の解剖的構造の位置関係やその発生についてのこれまでの教科書的知見を書き換えるものとなる。
哺乳類の顔面は上顎から独立した可動式の鼻を持つことが特徴であり、上顎の先に直接鼻がある爬虫類や両生類とは大きく異なる顔つきをしている他、神経の分布パターンや骨格にも大きな違いが見られる。このように哺乳類の顔は、爬虫類や両生類など顎をもつ脊椎動物に広く共通する顔面形成パターンから大きく逸脱しており、こうした特徴を持つ進化は全くの謎であった。(下記図を参照)
東山特任研究員らのグループは哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類のさまざまな動物を用いた発生過程の比較を実施。爬虫類や両生類でいう上顎の先端部を使い回して突出した鼻を作ると同時に、別の骨を発達させ口先を作り替えているというメカニズムを発見した。また、遺伝子変異マウスを用いた分子発生学実験で、この変化が顔全体の原基(器官ができる前の段階の細胞群)の違いに由来することが分かった。化石記録を利用した古生物学的解析により、口先の骨の変化が約3億年前のペルム紀からジュラ紀におよそ1億年かけて起こったことも明らかになった。
東山特任研究員は生物の持つ複雑構造について、脊椎動物を用いて形態形成の過程や進化を研究している。今回の研究結果をまとめた論文は米国科学アカデミーの機関誌である『PNAS(米国科学アカデミー紀要)』にオンラインで掲載される。