学術ニュース

2022年12月1日

自殺者は非自殺死亡者よりリチウム濃度が低いと発見 眼房水の解析で

 安藤俊太郎准教授(東大大学院医学系研究科)らの研究グループは、自殺者と非自殺死亡者の眼房水中のリチウム濃度の比較によって、自殺者の方が体内リチウム濃度が低いことを示した。メカニズムが解明されれば、微量リチウムの自殺予防効果の検証も期待される。成果は11月7日付で学術誌『Translational Psychiatry』のオンライン版に掲載された。

 

 自殺は生物学的、心理学的、環境的要因間の相互作用によって引き起こされる。生物学的要因として、食物などから取り込まれるリチウムが注目された。メタ解析により地域の水道水中のリチウム濃度と自殺率が逆相関することが報告されていたが、体内リチウム濃度と自殺の関連を決定的に示した研究はなかった。

 

 眼房水は角膜と水晶体、虹彩と角膜の間を満たす液体で、死後変化が遅いことが知られている。安藤准教授らのグループは、自殺者12人と非自殺死亡者16人に対して測定を行い、自殺者で眼房水中のリチウム濃度が有意に低いことを示した(図)。複数の自殺症例を用いて体内微量リチウムと自殺の関連を示したのは、世界初の成果だ。

 

 

(図)自殺群と非自殺死亡群の眼房水中リチウム濃度の比較

 

 今後は自殺者で体内リチウム濃度が低いメカニズムの解明が求められる。そううつ病のそう状態の治療などに用いられる炭酸リチウムは自殺予防にも効果が示されているが、副作用のために過小利用される傾向がある。微量であればその問題も少ないことが期待されるため、微量リチウムの自殺予防効果についても検証が進むことが期待される。

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