2025年度入試は新しい学習指導要領に対応する初めての試験だ。東大入試で点数が使われる大学入学共通テスト(共テ)も大きく変わり、その向き合い方に悩む受験生も少なくないだろう。東大新聞恒例の受験生応援連載。今回のテーマは共テ前後の過ごし方。現役東大生が対象のアンケートによって明らかになった多種多様な戦略の中から、間もなく勝負を迎える受験生諸君らの可能性を広げるような回答を紹介する。ぜひ自分に合った過ごし方を見つけてほしい。(構成・戸畑祐貴)
2025年度共テ攻略 追試は1週間後に変更
25年1月18・19日に本試験が行われる令和7年度の共テは、新しい学習指導要領に対応した試験となり、大学入試センターは変更点を公表している。以下では主な変更点を科目ごとにまとめた(表1)。ぜひ参考にされたい。
新たな出題教科の「情報I」は試験時間60分、配点100点。新課程を履修していない受験者は旧課程科目の「情報」の問題を選択することもできる。
1日目の終了時間は昨年度までより10分遅い午後6時20分、2日目の終了時間は10分遅い午後6時になる。「情報」は2日目の最後の時間帯に行われる。近年、追試験はコロナ対策として本試験の2週間後に実施されていたが、今回からコロナ禍以前と同様の1週間後に実施される。
共テへの向き合い方 力の入れ方は人それぞれ!?
共テ対策の取り組み方と試験前日までの過ごし方を現役東大生へのアンケートから紹介する。
Q.共テ対策にはどれくらい力を入れましたか?
「とても入れた」または「結構入れた」と回答した人の理由は以下のようになった。
・「共テで高得点を取り自信を持って2次試験に臨みたかったから」(文I・1年)
・「共テが苦手だったから」(文III・2年)
・「確実に受かりたかった」(文II・2年)
最も多かったのは、合格を確実にするため安心して2次試験に臨みたいという回答だった。東大の入試では総合得点の8割が2次試験で決まる。共テの点数の割合が小さい中、共テ前の時間をどう使うかは合格者の中でも意見が分かれるところだ。「やや入れた」または「あまり入れなかった」と答えた人は、「とても入れた」と「結構入れた」との回答よりも多かった。
・「模試の段階でずっと狙った程度の高得点を取れていて、特に問題を感じなかったので、感覚が鈍らない程度に対策しておけば十分だと考えたから」(理II・2年)
・「東大だとかなり点が圧縮されるけど、ハンデは背負いたくないし私大の入試でも使うかもしれないので、それなりの点(東大のボーダーくらい)は取りたかったから」(文II・2年)
・「社会以外は新しく勉強することがほぼないので、基本予想問題集などを解くぐらいのことしかやっていなかった。2次試験の対策をなるべく減らさないことが大事だと思ったから」(理II・1年)
模試の結果をもとに自身の目標点数を早くから設定している回答が目立った。共テ直前期には予想問題を解いたり教科書を確認したりといった知識の定着を確認することに時間を多く割いていた。私立大学の共テ利用入試を視野に入れた回答も見られた。直前期に東大入試の対策ができる点で、私立大学の併願校からの合格を早めに勝ち取れるメリットは大きい。
Q.共テ前日はどのように過ごしましたか?
勉強面では以下のような回答を得られた。
・「暗記系を見返すくらいで力を入れてガッツリ問題を解くようにはしなかった」(文II・2年)
・「実力に自信があったので、リーディング、リスニング、数学1Aだけ確認で一回解き、あとは自作のまとめノートを確認しました」(理II・2年)
・「国語と英語の共テパック(予想問題集)を解いた。日本史や地理の知識の確認はしていたらきりがないのであまりしなかった」(文I・1年)
・「数学と英語は模擬試験みたいなのといて、他の科目は最終確認みたいなかんじ」(文III・2年)
・「苦手だった国語の勉強をしていた」(理II・1年)
・「過去問を全科目解いた」(文II・2年)
回答は大きく分けて、普段の学習習慣の通りに問題を各教科解く人と、暗記の確認や苦手科目の復習のみをして翌日に疲れを残さないようにする人の2種類であった。前日に多くの知識を詰め込んでも定着が期待できないので、当日不安にならない程度に頑張るのが良いだろう。
健康面では以下のような回答を得られた。
・「自習室からは早めに帰宅し、ご飯をたくさん食べていつもより長めに寝ました」(理II・2年)
・「21時半には就寝し、いつもより多く睡眠をとった」(文I・1年)
・「早めに寝ました。食事は油控えめのメニューにしてもらいました」(文I・1年)
睡眠に関する回答がほとんどであった。当日開始時刻の早い社会2科目受験者は早い時刻に就寝した傾向にあった。試験の間、集中力や思考力を高く保つには十分な睡眠が不可欠だ。食事に関しては消化の良いものを食べるなど当日の体調に配慮した回答が多く見られた。一方、食事をしっかりと取ったという人もいた。
共テの準備「下見なし・2時間前以前の出発」が多数派
Q.共テの会場の下見はしましたか。
全体では「しなかった」と答えた回答が約6割であった。その理由としては
・「当日の気温や湿度、雑音の量などは分からないので得られる情報がないと考えたから」(理II・2年)
・「その時間があるなら勉強したかったから」(文III・2年)
会場の下見では当日時間通りに会場に着くために、あらかじめ所要時間や道順を主に確認することが多い。一方、会場に行った経験があったり、会場が出身校であったりと、下見が十分に済んでいた場合もあった。「した」と答えた回答では
・「受験場所が駅から遠かったので、行くのにかかる時間・混雑を鑑みて通るべき道などを事前に確認したかったから」(文I・1年)
・「万が一遅れそうになった時などに迷わないように」(文II・2年)
・「道に迷った時のリスクが高いのと、気分転換も兼ねて」(文I・1年)
当日と同じ曜日、時間帯の混雑状況は、実際に下見に行かないと分からない点だろう。
Q.共テ当日は何時ごろに家や宿泊先を出ましたか。
約半数が「試験開始の2時間前以前」と答え、以降順に「2時間~1時間30分前」、「1時間30分~1時間前」が続く。「1時間前以降」と答えた回答者はいなかった。理由として、遅刻しないようにより早く出発したという回答や、気温が低いため開場5分前を目標にしたという回答があった。「持ち物は指差し確認していいレベル。時計とか消しゴム忘れたら目も当てられない」(理II・2年)など、当日の持ち物の最終確認の必要性に言及する回答もあった。会場にもよるが、試験開始時刻の直前まで最終確認ができることもあり、早く着いたことが良い効果をもたらしたという回答も複数見られた。
当日の過ごし方 休み時間は次の試験科目の勉強を!? 1日目夜に難しい追試の過去問を解く人も?!
Q.共テ当日の休み時間は食事以外に何をして過ごしましたか?
選択形式で質問した。選択肢と回答割合は以下の通りであった。
・「友人と話をした」40%
・「次の試験科目の勉強をした」46.7%
・「気分を切り替えることに注力した」40%
・「やる気の出る好きな音楽を聴いた」6.7%
科目間の休み時間が40~50分、昼休みは80分となっているが、解答用紙の回収・配布などで時間が取られ自由に休憩できるのはせいぜい20分ほど。貴重な時間で何をするのかは以降の試験にも影響を与える。多くは気分転換や次の科目の準備に時間を割いていた。模試受験時の過ごし方を振り返り、自分に合った過ごし方を見つけてほしい。
Q.1日目の夜はどのように過ごしましたか?
・「家に帰って軽く復習したが、早く寝ることを心がけた」(文I・1年)
・「勉強は化学の無機だけ総復習した」(理II・2年)
・「世界史と地理で間違えた問題を少し復習」(文III・2年)
・「数学が不安だったので、平均点が著しく低かった年の数学の追試を解いた。点数が58点とかだったけどむしろ怖いものがなくなったので良かった」(理II・2年)
1日目で気になった点の振り返りや2日目の不安な科目の復習など軽めの勉強に留めたという回答が多かった一方、苦手科目の過去問を解いたという回答もあった。
健康面では
・「ご飯はなんでもいいよおいしければ。験担ぎよりおいしさが大事」(理II・2年)
・「次の日の教科の知識の確認とかをしました ご飯はいつも通りたべました」(文III・2年)
・「かなり自信があったので気分上々で帰宅し、持ち物の確認をして早めに寝ました」(理II・2年)
早く寝ることを大切にしていた回答が多かった。2日目も全力で戦うためには十分な睡眠が不可欠だろう。
Q.1日目の答え合わせは2日目の試験までにしましたか?
東大を志望する場合、1日目の科目の配点は文系で600点分、理系で500点分。1000点満点である共テの半分以上となっており、結果は受験生ならば誰でも気になるところだ。だが、今回のアンケート調査では全体の9割以上の回答者が「しなかった」と回答した。理由としては以下のようにメンタルへの悪影響を懸念した回答が多かった。
・「もし出来てなかった時に立ち直れず2日目に響きそうで怖かったし、採点するより2日目の勉強をした方が有意義だから」(文II・2年)
自己採点の点数がどうであっても気の緩みや後悔など試験2日目への影響しうるため、不確定な要素を持ち込むことを嫌った意見が多かった。時間のかかる採点よりも、勉強を優先しようとした回答もよく見られた。
2次試験への切り替え 「勉強しなかったら数年間の努力が無駄になる」
Q.共テ受験後、2次試験に向けてどのように精神的に切り替えましたか。
切り替えたという回答では以下のような回答があった。
・「共テ直後は気が緩んで数日間勉強に集中できなかったが、ここで勉強しなかったら受験勉強の数年間が無駄になると思って気を入れ直した」(文I・1年)
・「ちょうどボーダーくらいだったし、東大模試の判定も悪くなかったので、実力を出し切れたら大丈夫と思って心を落ち着けた」(文II・2年)
一方で切り替えられなかった、またはその必要がなかったという回答は以下のような理由であった。
・「直前までは1日16時間程度勉強していたが、共テの結果が良かったので気が抜けて勉強量を落とした。成績は別に落ちなかったので特に問題はなく、切り替える意識を持つ必要はなかった」(理II・2年)
・「浪人時は、共テ前からずっと2次試験を視野に入れており、共テの勉強に絞りはしなかったので切り替え自体あまり必要ありませんでした」(理II・2年)
自己採点の結果による合否予想判定を参考にしたという回答も見られた。共テ利用の私立大入試で合格を決めて落ち着くことができた、キャンパスでの生活を夢見てモチベーションを高めたなど、現状分析や目標の再確認などから冷静に2次試験の対策に移行できたとする回答もあった。
多様な向き合い方の中から 受験生諸君、勝負の日を楽しめ
共テは年度や科目によって難易度が変動し、安定した得点には柔軟な対応力が重要になる。一方出題される知識や形式には傾向があり対策が可能だ。共テへの向き合い方は人それぞれだが、東大合格者らの回答の中から自分に合った方法や姿勢を思い描けたなら、共テを戦う準備がまた一つ整ったわけだ。万全の準備と積み重ねた努力と共に、勝負の日をぜひとも楽しんでほしい。