本格的な就職活動シーズン。学生にとっては、人生をかけた決断の時期だ。就活は自己分析を繰り返すなど、「自己」ベースでやることが重要な一方で、「社会」の時流に乗ることも大切だ。あなたが見ているその業界、今はよくても、未来はどうなのか。学生はどのような未来予測のもとで、今を決断すればいいのか。
サンリオ、東急ハンズ、東京ディニーランドなどの開発業務に関わった、「伝説のプランナー」であり、今でも時代の先をゆく、くぼたつさんこと久保田達也さんによる白熱教室の第二段。来るべきAI社会での「仕事」の仕方を語ってもらった。
これからは語学学習の価値すら下がる
僕の住む原宿では外国人観光客が増えてきて、私もよく道案内がてら、仲良くなって喫茶店で話し込むことがあります。何語で話し込むかというと…、Siriです。Google Siri。自動翻訳ですよ。ときどき変な事言うから笑いながらコミュニケーション取れる。明治神宮の森は100年かけて造られていることや鉄砲の玉を日本刀だと真っ二つに切れる話など笑顔で話すんです。「じゃあ、この寿司屋がネタがいいよ」「コスプレ専門店で衣装替えしてみたら」「和服の古着屋はここがいい」といった今風提案などするとみなさんキャッキャ喜ぶんです。質素でエレガントなヨーロッパ人、ジョーク好きのアメリカ人、親切丁寧な対応を喜ぶアジア人と千差万別だけどすぐに仲良くなるコツは皆同じ、笑顔とおもしろ提案なんですよね。
2020年オリンピック年には髪の毛の色はちがう、話す言葉は違う、食べたいものも違うといった国際社会の仲間入りする日本では、今後スマホ自動翻訳を使いながら英語を覚えてゆく若者が増えるでしょうね。語学学習よりもどんどん海外の方と日常会話して日本文化を説明し、海外文化との交流から「じゃあ、いっしょにこんなことができるね」とクリエイティブな会話をする人がカッコいいな。
これからの仕事の創り方
先日、出版社から「本を出しませんか」という話を持ってこられたのですが、提示された印税は7%。それに対してAmazonで電子書籍として自分で発行すれば印税は70%です。本の内容としては、ネット情報が一般化したので知識本は売れず、著者の独自理論をビジュアル化したものや、だれもが考えもしなかった新しい提案内容が注目を浴びる時代になりました。
僕が出版依頼を受けたのは、「くぼたつ式発想法100」という40年間蓄積したアイディアを出す方法なんです。 自分でアマゾンから出版する、と出版社に告げたところ「やっぱそうしますか、そうですよね。ではうちでアプリを出しませんか?」と代案を出していただきました。ところが教え子がだれでもアプリ制作できるWEBサービスを紹介してくれたんです。それを使って自作してみるとあっという間にできちゃったんですよ(笑) iTunesやアンドロイド系販売サイトで売らなくても自分でWEBアプリとして有料販売することも可能なので、自分で制作販売することにしました。印税を7%より70%にして、その分書籍代を10分の1にしてたくさんの人に読んでもらうことの方が、著者としては本望なんですよ。アプリも同じです。
更に、何か事業をしようと思ったら、クラウドファウンディングで資金を集められます。つまり今は、アプリも本も事業も、ネットで全部できる時代なのです。そんな時代に重要になってくるのは、企画力やアイディア出しの能力です。いいものがあれば、人もお金も全部寄ってきます。 要となるのは創造力。脳細胞が固まる年齢に達する前に究極まで磨いて欲しいですね。何よりも楽しんで発想力、想像力、知恵力を伸ばしてほしい。
―学生に何かメッセージはありますか。
想像力を身につけて大志を抱いてほしいですね。例えば、GoogleのラリーペイジCEOと話したことがありますが、Google設立当初の夢を聞いたら「子供たちが世界中のあらゆる本をどこででも読めるようにしたい」とマジ顔で言ったんです。人類のために何かをしたいという想いに、あふれていたんですね。けっして金儲けやビジネス戦略などではなく、あくまで技術力で切り開くと断言していました。
このとき僕は、新しい現実をビジネスノウハウではなく、技術知識と想像力で創り上げる技術系リーダーが世の中を変えているのだと確信しました。社員が平均年齢30歳前後、ジーンズを履いたジョーダン好きの社長が技術力と実験で世の中を良くしていく本人をみて、日本ももう一度かつての輝きを取り戻してほしいと思いました。
今後日本企業は人工知能ロボット雇用によって低労働力確保がなされ世界の檜舞台に復帰する可能性があります。日本人の若者から枠に囚われない想像力をもってその人工知能型企業を牽引していく日が必ず来ると信じています。
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ITプランナーとして、現在でもパワフルに活躍し続けている久保田さん。手詰まりな教育の打開策として「創造性教育」を打ち出し、実行している。同様の直近の活動としては、独自の発想法教材をもとに創造力で自立できる能力を鍛える、「くぼたつ塾」の立ち上げが話題となっている。「お金をもらえる文章力」「使ってもらえるアプリ開発販売」「クラウドファンディングで資金援助してもらえる新規事業開発」の3本を実行できる人材育成を目的として演習と添削中心の少数教育を行なっている。学生の参加も可能だ。興味のある方は東京大学新聞社文化事業部まで問い合わせ、もしくは久保田達也(くぼたつ)さんhttps://www.facebook.com/kubotatu まで。
「学生の皆さんも、是非一緒に学びましょう」
大幅に変わる未来を前に、行動の指針を与えてくれたくぼたつさん、貴重なお話、ありがとうございました!
(企画・文 沢津橋紀洋)