6月から手続きが始まる進学選択。後期課程のイメージができず、志望先を決めかねている2年生も多いだろう。本企画では各学部の4年生に取材。後期課程進学後の生活や進学先の特徴について語ってもらった。受験生や1年生にも役立つ内容だ。4年生が経験した3S1タームと3A1タームの時間割や本年度の進学選択手続きの日程も掲載している。志望先決定の一助としてほしい。
(構成・石川結衣、天川瑞月、取材・本田舞花、中村祐貴、阿部孝太郎)
理Ⅰ→理学部情報学科
自由度の高い実験が魅力
「成績が良いから、せっかくなら人気な学科に進学しよう」。パソコンを使うのはレポートを書くときくらいだったという藤野さん。何気ない理由で進学した情報科学科でプログラミングに出会い、夢中になった。
学科の授業は思いのほか自由度が高かった。実験科目が多く、スライドは一気に配られ、30分〜1時間ほど実験内容や手順について説明されると授業は終了。分からないところは自分で調べたり先輩に質問したりしつつ、期限までに課題を仕上げる。課題の内容と期限は決まっていて、あとは自由に勉強に取り組める。当初はびっくりしたが、今となってはむしろそこが魅力だという。
3Sセメスターの「システムプログラム実験」の後半で「ベアメタルプログラミング」を行ったのが印象深いという。「OSを利用せずに行うプログラミングのような感じです。ページテーブル(仮想アドレスと物理アドレスとの対応づけを行うテーブル)を利用するという内容にそんなに原始的なところからやるのか、とびっくりした記憶があります」。また、3Aセメスターでは「CPU実験」と呼ばれる、セメスターの終わりまでに 3D映像を動かすコアやアセンブラ(プログラミング言語)などを作る授業があった。「説明を基に自分で考えて完成させるのは大変でしたが、楽しかったです」
前期教養課程で情報関連の授業をあまり履修していないが情報科学科に関心がある人は、「アルゴリズム入門」などを履修しておくのがおすすめだという。複素解析など数学もしっかり学んでおくと役立つそうだ。
学科は30数人と少なめで仲が良い。学科の同期で学部卒業後就職予定の人は数人程度で、大方が院進予定。藤野さん自身も院進を目指し、現在勉強中だ。
文Ⅲ→工学部建築学科
実習の中で学びを深める
高校では世界史が好きだったため文系を選択。一方で、生物学にも興味を持っており、理転が可能な東大を志望し、進学先が多様な文Ⅲに入学した。
しかし、大学の生物学の授業を受けて「違うな」と思い、生物学への道は断念した。結局、進学先は最後まで悩んだ。決断の契機となったのは、安藤忠雄氏が設計した地中美術館を訪れたことだった。「この美術館に感動し、建築学科で学びたいと思いました」
建築学科は、同じ部屋で設計課題に取り組むことが多く、学科生同士で過ごす時間は長い。学年を超えた交流も活発で、五月祭の準備や卒業制作を一緒に作業する機会がある。
建築学科のカリキュラムは座学より実習という傾向がある。実習が多く、セメントの調合や溶接体験をする授業もある。進学先での印象的な授業は「造形」で、画家などのさまざまなクリエイターの指導の下、ものづくりを体験する授業だ。「写真家のホンマタカシさんがいらっしゃって、ピンホールカメラを自作し写真を撮った、といったことも体験できました」
建築学科への進学を検討している学生へのアドバイスは、建築学系以外の授業をたくさんとること。専門外の知識が建築学科での勉強に結び付くことが多々あるそうだ。実際、金子さん自身も社会学や政治学の知識が役に立ったことがあったという。
卒業後の進路は院進が多い。金子さん自身は米国やイタリアの大学院への進学を考えているという。かねてから留学したいという思いがあり、建築教育の姿勢にひかれたからだそうだ。大学院修了後は帰国し、国内の建築系の仕事に携わるつもりだ。
理Ⅰ→工学部都市工学科都市環境工学コース
「水」という視点から都市を見る
都市工学科との最初の出会いは、高校時代に訪れた東大のオープンキャンパス。学科の企画に立ち寄ったのは偶然だったが、都市・インフラへの関心が高かった五百藏さんの心を引き付け、東大を志望することを決めた。入学後は地理部に所属するなど地理への関心もあった五百藏さんは、特に水・河川について学べることにひかれ都市工学科都市環境工学コースに進学した。
都市計画コースと進路を迷うこともあったが、実際に進学してみると、国際的な環境問題や上下水道といった分野が自分の関心と合致していて面白かったと語る。
学科ので特徴的な授業は、必修の「都市工学演習」や「環境工学実験演習」だ。都市環境工学コースでは、他の建設系の学科・コースと異なり化学系の実験も多い。中でも印象的だったのは、実際に河川へ出向き、水質調査などの実験・解析を行ったことだという。実験の予習やレポートの負担は大きいが、その分達成感があるという。演習では地球温暖化や大気汚染などの環境問題に関する文献調査・データ解析を行う。上下水道の設計や降雨と河川流量のモデル化など、水に関する演習も多い。都市に留まらない大きなスケールで対象を扱うのも、都市環境工学コースならではだろう。
コースは人数が少なく、グループワークも多いため、全員と仲良くなりやすい環境だという。有志で旅行に行ったり五月祭で企画を実施したりと、授業外での関わりも深い。
卒業後は院進する人が多いが、建設系の企業やコンサル、商社などに就職する人もいる。進学先は工学系研究科都市工学専攻のほか、学科内の一部の研究室が属する新領域創成科学研究科などだ。五百藏さんも院進し「下水道の研究をする予定です」。