進学選択

2024年8月8日

東大の後期課程、各進学先の特徴は? 学部4年生に聞く(農学部・薬学部・医学部編)

 

 本企画では各学部の4年生に取材。後期課程進学後の生活や進学先の特徴について語ってもらった。受験生や1年生にも役立つ内容だ。3S1タームとA1タームの時間割も掲載している。志望先決定の一助としてほしい。(構成・赤津郁海、岡嶋美社、山下凛太朗、柴田凛)

 

【昨年度の記事はこちら】

各学部4年生に聞く 後期学生生活紹介(医学部・薬学部・農学部編)

 

理Ⅱ→農学部環境資源科学課程森林環境資源科学専修 実習や学部独自のプログラムで学ぶ

 

伊藤千尋(いとう・ちひろ)さん
伊藤千尋(いとう・ちひろ)さん

 

 元々環境問題に関心があり、前期教養課程では「環境」と名の付く授業は積極的に取りました。農学部の場合は単位を多く取ると進学選択で有利になるので、興味のある授業はどんどん受講すると良いと思います。

 

 農学部進学後に特に面白いと感じたのは、森林土壌など「土」に関する授業です。さまざまな種類の土の構造や特徴を学んだのですが、普段触っている土に対する解像度が上がっていく実感があり、とても楽しかったです。

 

 一緒に実習を行い、夏には泊まりがけの実習もあるので、学科の仲は非常に深まりますね。3Sセメスターには週に4回も実習があり、忙しかったです。実習というと「外に出て体を動かす」イメージが強いと思いますが、将来の林の成長をコンピューターで予測するなど、室内で行う実習も意外と多いですよ。一番印象に残っているのは、猟師さんにお話を聞く実習です。実際に命のやり取りをされている方なので、一つ一つの言葉に重みがありました。

 

 私が所属しているのは林政学研究室です。森を巡る人と人との関係や、森と人との関わりを研究しています。森林にまつわる文系的なこと全般を扱うという印象ですね。文科からでも進学しやすいのではないでしょうか。

 

 私は「ONE EARTH GUARDIANS」という、東大大学院農学生命科学研究科のプログラムに参加しています。日本語で言うと「地球医」。100年後の地球を守るというのがコンセプトです。私は7期で、主な活動は、企業と共に環境に関する課題を解決する「実学研修」です。インターンシップに近いかな。他にも単発のイベントを行ったり、環境問題に関心のある人が集まって勉強会を開いたりすることもあります。

 

 大学院に進学するのは例年6〜8割ほどの印象です。林野庁などで公務員になる人もいますね。ただ年によって変動も大きく、私の代は院進する人がほとんどだと思います。

 

農学部時間割

 

理Ⅱ→薬学部薬科学科 ワイワイしつつ、学問にも向き合う

 

吉川芽生(よしかわ・めい)さん
吉川芽生(よしかわ・めい)さん

 

 学べることの幅広さと、仲の良い雰囲気に引かれて薬学部を選びました。薬学部には、薬学に関する幅広い分野を学ぶ薬科学科(4年制)と、主に薬剤師を目指す人のための薬学科(6年制)の2学科があり、私は薬科学科に在籍しています。研究室では、自然言語処理を使って既存論文の知見をまとめる研究を計画中です。

 

 薬学部のカリキュラムは、2年次が座学中心、3年次が午前1コマの座学と午後3コマの実習という構成で、授業は全て対面です。3Aセメスターに学科と研究室を選択し、4年次から本格的に研究室の活動を始めます。2年次はターム毎にあるテストの前に忙しさが集中するのに対し、3年次はレポートによる評価が多いためコンスタントに忙しいイメージです。卒業後は、ほとんどの学生が院進します。

 

 薬学部は、生物学や化学から物理学に近い内容まで幅広く学べ、研究室のテーマも多様であるところがおすすめです。学生同士の仲が良いのも薬学部の特長で、五月祭への出展や、球技大会、ボートレース大会などのイベントも多くあります。また勉強面では、課題に真面目に取り組んだり、純粋な学問的興味に基づいて研究室を選んだりする学生が多く、ワイワイしつつ、学問にもちゃんと向き合っているのが薬学部の良さだと感じています。

 

 逆に気を付けてほしいことは、思いの外基礎研究寄りである点です。授業は化合物の作り方や作用などがメインで、臨床研究ができる機会は研究室に入ってからもわずかです。また研究室選びでは抽選があり、思い通りの結果になるとは限りません。昨年は約80人のうち9人が落選しました。

 

 「薬学部に入るためには今から生物を勉強しておかなくちゃ」などと無理に逆算する必要はありません。実際、暗記が苦手な私でも、薬学部に入ってから生物学を勉強し始めて何とかなっています。むしろ、これから薬学部を目指している人には、前期教養課程のうちに幅広い分野の授業を履修しておいてほしいと思います。

 

薬学部時間割

 

文Ⅲ→医学部健康総合科学科看護科学専修 将来にもつながるリアルな声を今聞ける大切さ

 

檜垣媛子(ひがき・ひめこ)さん
檜垣媛子(ひがき・ひめこ)さん

 

 私は興味がないと言い切れる分野がないほど、幅広い興味を持っていました。そのため、学部は後から決めようと思い、文Ⅲに入学。先輩を通して、国際保健の研究室を知り、次第に引かれていき、医学部健康総合科学科への進学を決定しました。看護科学専修(看護)に入ってから修士で別の研究室に入ることは出来ますが、他の研究室から移る場合はもう一度看護の免許を取るコースを受けなければなりません。少しでも興味があるなら看護に進んだほうが良いと言われ、看護科学専修を選びました。

 

 学科の特徴は圧倒的な少人数とそこから生まれる自由度の高さ、教員からの全面的なサポートです。定員が40人の健康総合科学科ですが、同学年は15人ほど。大講堂でやる、いわゆる大学の講義はありません。授業も出席が重視され、出席率が3分の2以上の生徒のみ期末テストを受けられます。少人数のため、教員にも顔を覚えられるのは当たり前。中でも、私の専修の必修科目は教員と1対1の授業。緊張するのはもちろんですが、ディスカッションもできないので、少し寂しく感じます。しかし、少人数だからこそ教員から生徒一人一人に対してのサポートは手厚いです。また、好きな題材の研究に没頭でき、どんなアプローチ方法でも教員がサポートに回ってくれます。健康総合科学科では人の健康に関することなら基本なんでも研究が可能です。特に入る前から目標が明確に決まっている人に適した環境と言えます。

 

 授業も詰め込み型より、基礎的な授業であっても実習や専門家の話を聞いたりするものが多いです。印象的だったのは精神看護に関する授業。実際に精神疾患をお持ちの方が講師として教えてくれました。普段は聞きにくいことも質問でき、中々経験できない大切なことを知れる授業でした。

 

 卒業後は院進する人も、就職してから研究室に戻ってくる人もいます。就職先は保険会社などが多いと思います。私は看護師国家試験を受けてから修士課程に進む予定です。

 

医学部時間割

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