進学選択

2024年8月7日

東大の後期課程、各進学先の特徴は? 学部4年生に聞く(理学部・工学部編)

 

 本企画では各学部の4年生に取材。後期課程進学後の生活や進学先の特徴について語ってもらった。受験生や1年生にも役立つ内容だ。3S1タームとA1タームの時間割も掲載している。志望先決定の一助としてほしい。(構成・赤津郁海、取材・小原優輝、清水央太郎、佐々ひなた)

 

【昨年度の記事はこちら】

各学部4年生に聞く 後期学生生活紹介(理学部・工学部編)

 

理Ⅱ→工学部システム創成学科Cコース 幅広く学び、社会課題の解決を目指す

 

王振徳(わん・ちんで)さん
王振徳(わん・ちんで)さん

 

 理Ⅱで入学しましたが入学後には経済にも興味を持ちました。文転も考えましたが、2年次の5月ごろ現在の学科で経済寄りのことも学べると聞き進学を決めました。

 

 私が所属するCコースでは、社会実装をゴールとし、社会課題を解決するため、技術や社会について学びます。人工知能や次世代通信といった最新の工学技術の社会応用からエネルギー・資源、経済学の基礎など幅広く扱う点が特徴です。105分の対面授業が基本です。

 

 週何コマも実験をすることはなく授業の負担は理系では軽い方ですが、卒業に必要な授業(必修や準必修)の多くが2Aセメスターの駒場Ⅰキャンパスで開講され、私は週19コマを履修しました。

 

 2Aセメスターの「ビジネス入門」は新規事業を考案するなど経済学寄りの内容です。セメスターごとにある必修の「プロジェクト」はグループワーク形式の授業で、プレゼンが重視されます。その他にも、2年間で「複数人で何かを作っていく」プロセスを多く体験し、社会に出ても困らないくらいのスキルを身につけることができます。2Aセメスターで履修した必修の「動機付けプロジェクト」では、商品をプロデュースする課題に取り組みました。グッドデザイン賞の関係者から直接講評を受けられます。Cコースに所属する学生のみが履修できる3Sセメスターの「知能社会システム研修」では、霞が関に行き、官僚からこれからの日本の海洋政策に関する説明を受け、意見交換をしました。実験はありませんが、座学だけでなくこのような体験型の授業も多いです。

 

 学科のメリットは「人に恵まれる学科」であることです。理系の学科の中では専門性が低いので、一つの学問を突き詰めたい人には向かないかもしれませんが、文理融合的な内容を学べるので興味範囲が広い人に向いており、優秀で向上心が高い人が多いです。同期とのつながりが強い点も良いと思います。

 

 工学部の中では就職率が高く、コンサルなどの文系職に就く人も多いです。院修了後の将来はまだ悩んでいますが、文系就職や起業も考えています。

 

シス創C時間割

 

文Ⅱ→工学部精密工学科 幅広い学びから知る「ものづくり」の楽しさ

 

後藤美和子(ごとう・みわこ)さん
後藤美和子(ごとう・みわこ)さん

 

 高校時代は理系だったのですが、文転し文Ⅱに入学しました。ただ依然として理系の内容には興味があったので、前期教養課程では理Ⅰの必修科目など、合計90単位以上の幅広い授業を履修しました。2年次の進学選択ギリギリまで進路に悩みましたが、ハードとソフト、両方のものづくりを学べる点に魅力を感じ、精密工学科に進学。特段工学系の知識やスキルがあったわけではないのですが、ロボットや工学の社会応用というキーワードに引かれました。

 

 精密工学科には進学先として、大変満足しています。印象に残っているのは設計演習という授業です。前半には手を動かして課題に合わせた物を作る実習があり、後半ではCAD(コンピューターによる設計の支援ツール)を使った演習も経験しました。学科の特長として、とにかく幅広い「ものづくり」に触れることが可能です。自分はサービス工学を研究しているのですが、同じ研究室でも人支援ロボットの開発や接客サービスについての研究など、研究分野は幅広いですね。ただ授業数も多く、前期課程ほど自由に学べない点は少し残念でした。

 

 特に忙しいのは2Aセメスターと3Sセメスターです。3Sセメスターは必修に加え取ったほうが良い授業が多く、課題も多いため、特に多忙を極めます。学科の人数は約50人で明るい人が多く、テスト後の飲み会など交流の機会も豊富で、顔を合わせる機会は多いです。卒業研究で配属可能な研究室は21個で、先生1人に対して2~3人の学生が所属します。学生が第1〜21希望までを紙に書いて提出し、成績などは関係なく、各自の希望に基づいて学生が配分される形式です。私は第1希望の研究室に配属されましたし、第3〜5希望に落ち着く人が多かったです。

 

 卒業後はほとんどの学生が大学院に進学します。学部時代の研究室に加え、大学院から新たに配属可能な研究室も存在します。希望する研究室によって院試の内容はそれぞれ異なるため、情報収集も必要です。修士課程を修了した後は、メーカーの技術職やコンサルティング業界に就職する人が多い印象です。

 

精密工学科時間割

 

理Ⅱ→理学部生物学科 生物を広い視野で捉える

 

田村幹太(たむら・みきた)さん
田村幹太(たむら・みきた)さん

 

 東大を志望した時から生物学に興味があり理Ⅱに入学しました。1Sセメスターで履修した「初年次ゼミナール理科」で理学部生物学科の教員に担当になっていただいたのが、今の学科に興味を持ったきっかけです。

 

 東大で生物学を学べる学科は他にも生物化学科や生物情報学科などがあります。その中で生物学科を選んだ決め手は①実習が豊富②教員が学生の熱意に応えてくださる印象があった③扱える分野や研究方法が多様で、興味関心を詰め切れていない自分に合っている―という3点です。しかし生物学科の3年次は人類学を扱うA系と植物学・動物学を学ぶB系に分かれています。

 

 私はB系に所属していたのですが、A系で取ってみたい授業があっても開講時期や曜限(授業が開かれる曜日と時限)が被るなどしており、思い描いていたほど興味に即した履修は出来ませんでした。当初は落胆しましたが、自分から教員に掛け合い特別にA系の授業を取らせてもらえることに。その柔軟さが、理学部生物学科の大きな魅力だと強く感じています。総合的に生物を学びたい人にはぴったりの学部です。

 

 学科の特徴はやはり実習の多さです。2Aセメスターでは持出科目(内定先の学部の授業)として「骨格人類学実習」を履修しました。ヒトの骨格標本の観察や歯の模型の制作をしたのが印象に残っています。3年次以降は集中科目として、東大理学系研究科付属の日光植物園や臨海実験所のほか、北海道や西表(いりおもて)島などの遠地に4泊5日程度の泊まり込みで実習を行います。その中で学生同士の交流も深まるため、学科内は比較的仲が良いのではないでしょうか。4年次の今は必修の座学を取り終え、通称「プレ卒研」という卒業研究を想定した研究を行っています。

 

 ある時期に忙しさが集中することはなく、いつでも学問にきちんと向き合える環境だと思います。

 

 私も含め、生物学科の学生の多くは東大大学院理学系研究科に進学します。まだ何を研究したいと明確に決まったわけではありませんが、学部で学んだことを基に研究を続けていきたいと考えています。

 

理学部時間割

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