本企画では各学部の4年生に取材。後期課程進学後の生活や進学先の特徴について語ってもらった。受験生や1年生にも役立つ内容だ。3S1タームとA1タームの時間割も掲載している。志望先決定の一助としてほしい。(構成・赤津郁海、取材・赤津郁海、宇城謙人)
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文Ⅰ→教養学部教養学科地域文化研究分科フランス文化研究コース 現代フランス文学を学ぶ
駒場の比較文学に進学するつもりで大学に入学しましたが、まずは語学を鍛える方が良いと考えました。そこで、同じ駒場の教養学部教養学科地域文化研究分科フランス文化研究コースへ進学しました。
前期教養課程で大切なことは、幅広い科目を履修することです。後期課程ではこれまでに履修した授業内容の全てが満遍なく生きてくるので、全部の授業を真面目に受けましょう。
私のコースの特徴は、卒論をフランス語で書くことです。負担も大きいですが、留学にも有用な、貴重な機会となります。フランス語選択でなくとも、20世紀のフランス社会や、現代思想に興味のある方におすすめのコースです。文学部人文学科フランス語フランス文学専修よりも、前衛的な思想を学ぶのに適した環境といえます。一方授業の大部分がテキストの輪読なので、体系的にフランス語の文法を学ぶ機会は少ないです。
必修が存在しないので自由度の高い履修を組めますが、3Sセメスターは忙しい人が多いです。コースの授業で印象に残っているのは「広域フランス語圏文化論」。担当の森山工教授はマダガスカルの専門家。 本コースではフランス本国に限らず、フランス語文化圏全てが研究対象となります。また、履修者の半数以上はフランスに留学に行きます。私も現在留学中です。
コース内の交流は活発で、教員を交えて飲み会に行くことも多いです。参加は強制ではなく、参加しないこともそれはそれでフランス科らしいとされる気風があります。人数は年度によりばらつきがありますが、基本的に少人数です。同学年は3人でした。
卒業後は大学院に進学する人が半数。就職する場合は、官公庁と民間に行く人が半々です。私は就活をしていますが、恋愛論の研究のために院進することも視野に入れています。
文I→教養学部教養学科超域文化科学分科学際言語科学コース 必修少なく、言語学以外も学べる
熊田哲典(くまだ・あきのり)さん
入学時は文Ⅰでしたが、法学部は自分に合わないかもしれないと感じ、哲学、文化人類学、社会学などの分野への進学を考えるようになりました。進学選択間際まで悩みましたが、その頃読んだ本がきっかけとなり言語に関わるトピックに強く興味を持ち、学際言語科学コースを志望しました。
このコースの魅力は、教員との距離が近く、学生も学年を問わずつながりが深いことです。駒場Ⅰキャンパス8号館にある専攻の共有スペースには学年を問わず学生が集まり、助教の方々を含め雑談をすることもあれば、研究の話をして刺激を得ることもあります。
また、履修の自由度が高く、言語学以外の授業にも参加して視野を広めることに役立っていると思います。一方で、履修の自由度が高いあまり分野の概観がつかめず、2Aセメスターの開始直後の時期はどのように学びを進めるべきか戸惑いました。
私は進学当初、言語哲学に興味があったのですが、それを専門にしている教員が専攻におらず思うように学べませんでした。しかし次第に言語と社会の関係にも興味を持つようになり、現在の主要な関心になっています。進学後にも新たな興味に出合える環境が整っているので、さまざまなことに興味を持っている人に向いているコースだと感じています。
最も印象に残っている授業は、「文化人類学特殊講義(言語人類学の射程)」です。この授業では文化人類学に言語という観点を加えた「言語人類学」の視点から、人々が言語を通してどのように生活しているかということを扱いました。言語と社会の関係性への学問的アプローチについて考えるきっかけとなり、これは私の卒論のテーマへとつながっています。
学際言語科学コースでは、学部卒業後に就職する人と院進する人がほぼ同数の印象です。学部では知識のインプットに使える時間が2Aセメスターから3Aセメスターの期間で短かったので、私は院進するつもりです。言語学の外の領域も勉強して研究に役立てたいと思っています。
理Ⅱ→教養学部統合自然科学科数理自然科学コース 数学起点に学際的研究を
外国学校卒業学生特別選考第1種(私費留学生)で理Ⅱに合格しました。もともとは環境・エネルギー問題に関心を持っていたので、工学部システム創成学科Aコースに内定していました。しかし授業を受けていくなかで、数学や認知科学に興味を持つようになりました。東大では入学の1年目に留学生に個別チューターを配置する制度があります。私の担当だった教養学部生の方に進学先について相談したところ、教養学部に自分の興味にあうコースがあると知りました。進学先の変更を決意、元の内定を撤回して教養学部統合自然科学科数理自然科学コースに進学しました。同じ統合自然科学科に認知行動科学コースもあり、心理学や脳科学の授業を履修できることも魅力的でした。
前期教養課程では、専門にしようとしている学問以外の授業も受けるべきです。私も、教育臨床心理学の授業がきっかけで心理学に興味を持ちました。数理自然科学コースは自然現象の背後にある数学を広く学べることが特徴です。数学と物理を組み合わせるなど、学際的な研究をしたい人におすすめのコースです。
必修は少ないですが、4年次からは研究室に配属され授業をとる余裕がないため、3年次は多くの授業を履修しました。数理自然科学コースは各学年9人ほどであり、基本は少人数講義になります。統合自然科学科の他のコースとの違いは、良い成績を収めることができれば数理科学演習が受けられること。印象に残っているのは、実解析学の授業。数学の中でも難しいといわれる分野ですが、担当の石毛和弘教授が丁寧に教えてくれました。
同期の仲は良いです。授業が多く被っているので、隣の物質基礎科学コースとの交流も盛んです。卒業後は院進する人が6割ほど。総合文化研究科や数理科学研究科に進学します。就職する場合は金融機関に行く人が多いです。私は海外の大学院に進学し、応用数学やコンピューターサイエンスを研究する予定です。