本企画では各学部の4年生に取材。後期課程進学後の生活や進学先の特徴について語ってもらった。受験生や1年生にも役立つ内容だ。3S1タームとA1タームの時間割も掲載している。志望先決定の一助としてほしい。(構成・赤津郁海、取材・堀添秀太、丸山哲平、杉谷光亮、吉野祥生)
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文I→法学部第1類 学部の外とのつながりも大切に
国家公務員になりたいと思い、高3の頃に法学部第1類に行くために文Iを目指しました。前期教養課程の授業で印象に残ったのは「日本の政治」です。法学部での学びにつながる内容であることに加え、法学部ではあまり書かないレポートの書き方を学べます。また、理系科目や言語などは法学部に入ると全くやらなくなるので、前期教養課程で触れられて良かったです。前期教養課程では、文IIなど他の科類の人と仲良くなっておくことをおすすめします。就活の情報共有もできますし、法曹界に行く人は法学部では多いですが世間から見ると一般的ではないので、外の世界の視点を得られるという良さがあります。部活やインターンなども外の世界に対してオープンになるのに役立ちます。
出席が必須でなく、シケタイ制度(担当者が授業の書き起こしをする非公式の制度)が充実しているので人間関係は希薄です。緑会(法学部生の自治組織)や東大法律相談所などに半数ほどの人が入っており、そこに入ればコミュニティーはあります。
法学部の魅力は実際に法律作りに関わった人の話を聞けること、比較政治の研究が充実していることです。ただし授業は大教室での講義が中心なので、自分の意見を話す機会は学術的でなくてもいいので課外活動などで確保しましょう。また、法学部のゼミは1セメスターで終わる演習なので、興味のある分野をちょうどよく深掘りできます。今は行政学演習というゼミをとっていて、統治についての東西の文献を比較しながら読んでいます。難しい本を素朴な疑問を出し合いながら読むのが楽しいです。
現在は民間企業に就職し、地元に貢献しようと思っています。第1類は国家公務員になる人と民間に行く人が1:2ほどです。他学部も含めた人とのつながりを生かし、情報収集に努めるといいと思います。
文Ⅱ→経済学部 金融学科理論と現場を幅広く学ぶ
入学時から経済・金融の分野に興味がありました。前期教養課程の2年間でもその姿勢に変化がなかったため、文Ⅱから経済学部への進学を決めました。経済学部には経済・経営・金融の三つの学科があり、それぞれ、卒業するために履修が必要な専門科目が異なります。その中でも、経済の理論的な内容と実際の現場の状況に基づいた実証的な内容をバランス良く学ぶことができる金融学科を選びました。
金融学科と聞くと「金融のスペシャリスト」のように思えて敬遠している方も多いと思います。しかし、実際には経済学科と経営学科で学ぶことを両方ある程度カバーしつつ、専門的な金融の知識も学べる、といったイメージです。そのため、経済について幅広い知識を身に付けたい方には向いていると思います。
経済学部では多くの学生がゼミに所属しています。自分は現在二つのゼミに所属していて、一つは金融政策についてのゼミ、もう一つは分析に数学を広く用いる経済理論に関するゼミです。ゼミは経済学部内での重要なコミュニティなので、これから経済学部に進学する方はぜひ入ることをおすすめします。ゼミの雰囲気によって就職先の傾向や院進率が変わってくるので、ゼミに入る前に説明会や体験会に参加して自分に合うものを見つけるとよいと思います。
経済学部の授業で印象に残っているのは「インベストメント」という授業です。経済学部の授業は理論系の授業が大半なのですが、この授業は実際に銀行や証券に勤めている現場の方がゲストスピーカーとして招かれるオムニバス形式の講義でした。理論の勉強を多くしている中で「実際に株式や債券がどのように運用されているか」を知ることができ、とても新鮮だったので印象に残っています。
経済学部の学生は金融・コンサル・商社のいずれかの業界に就職することが多く、院進する人は全体の十数%ほどです。日系企業のインターンシップが解禁される3年生の夏ごろから就職活動をする人が多いです。
文Ⅱ→文学部人文学科社会学専修課程 都市を通じて社会を考察する
文Ⅱから、文学部の社会学専修課程に進学しました。もともと、都市に興味を持っていたのですが、1Sセメスターで都市の授業を受けて都市に対する情熱が再燃しました。それが後期課程で都市社会学を専攻するきっかけになったのだと思います。都市工学を研究できる工学部とも迷ったのですが、2年次の6月には興味があった社会学とジェンダー論を同時に学べる社会学専修課程への進学を決断しました。文Ⅱからの進学でしたが経済学部への進学とほぼ変わらず特に苦労しませんでした。
3Sセメスターでは週10コマほど授業を履修していました。試験は少ないですがゼミ(演習)で文献の輪読の番が回ってくる時や期末レポートを書く際には忙しくなります。2Aセメスターに履修した数少ない必修の「社会学概論」は社会学専修課程の先生方がオムニバス形式で自身の研究内容を紹介するもので、大きく広がる社会学の見取り図が自分の中でできた気がします。加えて「社会調査」という授業の最終課題では、大学が所有するデータを使ってレポートを書くのですが、意外に楽しかったですね。パラメーターを制御して、自身で仮説を組み立てる面に魅力を感じたのです。
私は二つのゼミに所属し、都市社会学と計算社会科学を学んでいます。毎ターム一つ以上ゼミの履修が必要です。ゼミごと雰囲気が異なりそれも考慮してゼミを選ぶ人もいます。学科全体としては交流する機会があまりないのは少し残念ですね。周りの人は意外に3年次は勉強に興味を持たず、卒論の準備を少し進める程度で、4年次になると積極的に勉強し、卒論を本格的に書き始める人が多く感じます。
印象として、学科全体では7、8割が就職し、その他は院進します。自分は、都市社会学の知識を生かせる職業に就けたらと考えています。現在は台湾に留学しており再来年に卒業する予定です。前期教養課程の皆さんにはぜひ本を読んでほしいです。本を読むと、独自の考え方が生まれてより有意義な進学選択ができると思います。
文Ⅲ→教育学部比較教育社会学コース これまでの教育を考える
教育学部に進学することを決めたのは2年次になってからでした。それまでは教養学部への進学を検討しており、進学選択に向けて高い基本平均点を維持していました。しかし、2Sセメスターで履修した「教育と社会」(教職課程科目)で教育社会学の基礎に触れたことで、教育社会学に興味を持ち、教育学部比較教育社会学コース(通称・比教社)へ進学を決めました。
比教社の強みはコースの仲が良く、自身の居場所ができることです。必修の授業や合宿を通して他の学生と交流することで、学生間の強固な絆が生まれます。比教社の特徴として、教育社会学に関する調査実習の授業が3年次に必修で行われることが挙げられます。中学校を対象にした大規模なアンケート調査を実施し、その結果を統計分析する手法を学ぶなど、総合的に社会学の実証的方法を身に付けることができます。また、他コースや他学部の授業の履修が容易で自身の関心に合わせて、幅広い授業に参加できることも魅力の一つです。
東大の教育学部は教員養成のみを目的としているわけではありませんが、中学校や高校の教員免許取得のための教職課程科目を取る学生は他学部に比べて多いです。私も社会科の教職課程科目を履修しており、1年次から集中講義などで根気強く単位を取得してきました。しかし、教職課程科目は片手間にできるほど楽ではないので、最終的に教職免許を取得する学生はある程度教員志望度が高い人だけです。
また、他の社会学を学べる学部・コースと迷われる方もいますが、教育社会学の射程は幅広く、基本的に高校まで教育を受けてきた経験があれば、誰でも教育社会学を学ぶことができます。特に、教育格差への興味や、これまで自身が受けてきた教育を顧みる視点がある人におすすめのコースです。
卒業後の就職先は、公務員から民間企業まで幅広く、そのまま教員になる人はあまり多くありません。大学院に進学して研究を続ける人も一定数おり、私も院進する予定です。教育の性別間不平等に興味があるので、特に文理選択や文系専攻分野選択のジェンダー差について、大学院でも引き続き探究したいです。