就活

2021年9月5日

【官庁訪問2021】東大出身者・採用担当者が語る国家公務員の仕事③金融庁・文化庁

 

 毎年多くの東大生が受験する国家公務員採用総合職試験。国家公務員を志す学生にはもちろん、まだ進路に悩んでいる人にとっても国家公務員自らが語る職務の実情やその素直な感想は参考になるだろう。東大卒業・修了生の就職も多い6省庁のうち、今日は金融庁・文化庁の東大出身者と採用担当者2人づつに、担当する業務内容、求める学生像などを聞いたインタビューを紹介する。 (構成・渡辺光、取材・市川智也、渡辺光、鈴木茉衣

 

金融庁:先入観捨てた選択を

 

濱脇諒(はまわき・りょう)さん 金融庁企画市場局総務課 総合職試験=工学

 

 修士課程では工学系研究科システム創成学専攻に所属し、シミュレーションを用いた金融システムの安定化分析を行っていた。大学で学んだことを少しでも生かせるような職に就きたいと考えていた中、学内で行われていた金融庁の説明会に参加したことが入庁を志望するきっかけになったという。苦労したのは、試験対策の参考書探しを含めた情報収集。自身の専攻に近い試験科目を選び、大学院入試のために使用した勉強資料も復習した。

 

 筆記試験後の合格発表が官庁訪問前日だったため、不安な気持ちもあったが、志望動機や大学での研究内容の確認をするなど面接の準備を進めていた。当日は、政策立案の現場で働いている多くの職員と会って、仕事内容や関心分野、働き方など、さまざまな話をしたという。

 

 現在は企画市場局に所属している。銀行に関する法律を所掌する部門だ。若手のうちは裁量が少ないかと思っていたが、今は事務的な作業に加えて、今後の制度設計のためのデータ分析にも携わっている。実際に世の中で起こっている問題を定量的に分析するに当たって、理系としての素養を発揮できやりがいを感じていると語る。

 

 入庁してみて予想外だったのは、職員の多様性だ。弁護士や会計士など、さまざまな人の専門的な知識を総動員させて問題解決に取り組むのが金融庁の現場だという。理系出身で法は未知の分野だったが、法律や政治に関する知識を身に付け、公務員としてのスキルも磨き活躍したいと語る。

 

 金融は縁遠い分野だと感じる人も多いが、実際には日々の生活に密接している。目まぐるしく変化する金融環境への対応に携わることができるのが金融庁ならではの魅力だと語る。入庁を迷っている学生に向けては「先入観を持たずに広い視点から自分の将来を決めてもらいたい」とアドバイスをもらった。

濱脇諒(はまわき・りょう)さん

 

柔軟な発想で社会貢献(採用担当より)

 

吉澤匡登(よしざわ・まさと)さん 金融庁総合政策局秘書課

 

 例年15人程度の総合職を採用しています。金融庁とはいえ、採用時に金融に関する専門的な知識は必要ありません。金融は経済のインフラ・血液であり、金融を取り巻く行政課題は、日本経済や社会が抱える課題そのものです。金融に限らない幅広い視野や好奇心をお持ちの方と一緒に働きたいと考えています。実際に、法律系・経済系・理工系出身の職員が毎年バランスよく入庁しています。

 

 金融庁は2000年にできた、まだまだ若い役所です。役職や年次にとらわれず、自由にアイデアを議論する風通しの良さは今も健在です。社会や金融を巡る変化を楽しみながら、柔軟な発想で日本社会に貢献したいという方にはぴったりの職場だと思います。若手のうちから組織や日本を代表して活躍できるフィールドが広がっています。(談)

 

吉澤匡登(よしざわ・まさと)さん

 

文化庁:多様なアクターを意識して

 

長谷川智(はせがわ・さとし)さん 文化庁文化資源活用課 Ⅰ種試験=人間科学Ⅱ(当時)

 

 義務教育の在り方に関心があり教育学部総合教育科学科教育行政学コース(当時)に進学。学校教育政策の情報が最も集まるのではないかと文科省を選択肢として考え始めた。

 

 就活では民間企業・教職含め教育に携わる多くのアクターを検討、民間への就活と並行して進めた。I種(当時、現・総合職)の中でも学部での学習内容と出題が直結する、人間科学II(教育 ・ 福祉 ・ 社会系)の区分で受験。自己分析など基本的なことは就活全般の中で進めたが、受験には短期集中で臨み、官庁訪問を見据えて「先に入省した先輩に頼んで論理的な議論の仕方を特訓したこともありました」。試験・官庁訪問時は元より、入省後にも筋の通った主張や意見を述べる能力が必須だが、その基礎は政策や社会課題を議論する自主ゼミや学園祭実行委での企画立案などを通し、大学時代に培われたと感じるという。

 

 現在は文化庁に所属し、全国の文化財の保存・活用に向けた法令の解釈・整備を担当。観光資源としての文化財の整備と、歴史的価値の保存を両立させるには、関連する法律の運用、他省庁との調整や専門家との折衝も必要だ。「関係者同士の理想像が対立し合うこともありますが、他省庁や専門家との針の穴を通すような調整を終えたときにはほっとします。それが行政の面白さかもしれません」

 

 現在の業務の中心は大学で専門に選んだものとは異なる分野だが、教育も文化財の取り扱いも、長い時間軸で捉え、各関係者の理想を束ねながら決定を進める必要があるという点で、共通点があると感じている。将来国内外の専門家とも対等に議論ができるよう、学術的なトレーニングにも取り組み、さらに経験を積んでいきたいという。
 公務員を目指す学生には「就職を希望する分野について深く調べ、官民多くのアクターの存在を認識してほしい。各々の強みを多角的に理解し、公務員も含めて自分がコミットしたい形を選択してほしいです」と語った。

 

長谷川智(はせがわ・さとし)さん

幅広い挑戦への意欲を(採用担当より)

 

田中義恭(たなか・よしやす)さん 文部科学省大臣官房人事課

 

 省全体で、来年度も事務系 22 人(うち施設系約1人)、技術系 14 人程度を採用予定です。文科省は総合職採用者の女性の割合が4割を上回っており、理系分野を勉強していた人もいるなど、人材の多様性が特徴です。

 

 文科省の業務は事務系・技術系問わず教育、文化、科学技術・学術、スポーツと幅広いため、いろいろなことに関心を持って見識を広げ、前向きに取り組めるかどうかを見ています。自治体や他省庁から民間まで多くの人と利害調整をするので、うまくコミュニケーションを取り人間関係を構築する力も重要です。

 

 進路選択は人生の大きな節目になるので、国家公務員含めさまざまな仕事を十分に検討し、自分にとって最善の選択をしてほしいと思います。(談)

 

田中義恭(たなか・よしやす)さん

 

 <連載>

【官庁訪問2021】東大出身者・採用担当者が語る国家公務員の仕事①厚生労働省

【官庁訪問2021】東大出身者・採用担当者が語る国家公務員の仕事②国土交通省

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