本シリーズは、東大の「PEAK(教養学部英語コース)」の学生有志らで運営されている「Komaba Times」との連携企画です。
以下は、Komaba Timesに掲載された記事”Class of 2019: Lost in transition“の和訳です。
平成27年度に、 “よりグローバル、よりタフな人材の輩出”を目的に、学部教育の総合的改革が実施された。そのうち、前期課程から後期課程へ進むときに適用される「進学選択」の制度の改革が話題を呼んだ。しかし、平成28年度の進学選択の制度が一年使われただけで廃止となることになり、平成27年度入学の学生が東京大学の歴史の中で忘れられる学年になりそうだ。
S1タームが終わったところ、二年生の履修計画にいくつかの傾向が見られた。前期課程の修了要件を一年生のうちに満たそうとして今学期あまり授業を履修していない学生もいるようである。このような履修計画を立てた理系の学生は2S1タームには必修の授業があるが、2S2タームにはなにも授業がない。一方で、文系の学生は二年次の時に必修科目がないため、実質的に一年次の12月下旬から始まる冬休みから二年次の夏休みまで、9か月間の休みがある。
まだ前期課程の修了要件を満たしていない学生から見ると、この暇な時間割は羨ましい限りである。しかし、本来二年間をかけて満たす単位数を一年に詰めるのもなかなか大変なもので、一年次に修了要件を満たした学生の多くは勉強に対する意欲が高く、二年次に授業を履修していなくても聴講はしており、この “休み時間”を有効活用している。
平成28年度以前に実施された進学振分けでは「追い出し」という必要単位数より多く取得した科目の点数の平均点への重率を0.1にさげる制度があったのに対し、28年度に実施される進学選択ではすべての科目の成績が平均点の算出で同一の重率であった。この変更点は学生がどの授業を履修するかだけでなく、授業を履修する時期にも影響し、学生の履修計画に大きな影響を与えた。
制度が変わることによって学生の履修計画の傾向に変化が生じるのは当たり前のことである。0.01点の不足で希望学部に進学できなくなるような厳しい状況を直面している学生は点数が期待できそうな授業しか取らない、または2Sセメスターの成績は進学選択に寄与しないため二年生になってから本当に取りたい授業を履修するようにして、リスクが低い履修を行なっていた。また、平成28年度以前の制度が適用されていた学生は「追い出し」制度を活用し、平均点をあげるために必要単位数以上の授業を履修していたが、今年度の制度下では授業を多く履修すると平均点が上がるどころか、下がるリスクが高く、必要単位数以上の授業を履修するモチベーションがない。
リスクを避けようとして授業を選択的に履修する傾向はリベラル・アーツを重視する前期課程の方針に矛盾する。「追い出し」が効かなくなったゆえに生じた消極的な低リスクの履修パターンは教務課にも問題視され、平成29年度の進学選択では「追い出し」制度が復活した。また、もっぱら高い平均点を稼ぐのではなく、前期課程の主旨にあった関心のある分野を探りながら様々な分野わたる主体的な履修行動を促すため、平成29年度の進学選択は抜本的な改革を多く含む。例えば、今までは第二段階では同一学部の異なる学科しか志望できなかったが、来年からは理論上すべての学部や学科を志望することができるようになった。また、今年は第三段階で限られた学科でしか実施されていない成績以外の面接や志望理由書での進学は来年から第二段階から、そしてより多くの学科が実施する予定となっている。
平成29年度の進学選択は今年の問題点を踏まえて変更が行われたが、新たな問題点が浮上するかは疑問である。筆者は後になってから平成28年度の進学選択制度は臨時体制であったと知ったが、多くの学生は消極的な履修パターンを示した。しかし、2Sセメスターや2S2タームに授業を履修していない一部の学生は教室外の学習機会に目を向け、国内や国外で開催されるサマープログラムやインターンシップに参加した。教室の壁に限定されず、外へ飛び出て自分の関心のある分野を探ることこそ前期課程の教育の目的なのではないか。
By Yu Yu Phan
【KomabaTimes】