本シリーズは、東大の「PEAK(教養学部英語コース)」の学生有志らで運営されている「Komaba Times」との連携企画です。
以下は、Komaba Timesに掲載された記事”Little Children in Komaba -From the day nursery-“の和訳です。
読者の皆さんは、カートに乗って駒場キャンパスを巡回していたり、よちよち歩きをしたりしている小さな子供たちを見たことはあるだろうか。あるいは、キャンパスの端の体育館の近くに、大学では見慣れない木造の家を見たことがある人もいるかもしれない。これが、駒場キャンパスの保育所である。筆者は保育所の所長である池見さんに、駒場の保育所について学生が知っておくべきお話を伺った。
東大には幾つか保育所があるが、”東大駒場地区保育所”(この保育所の正式名称、以下駒場保育所と呼ぶ)の特徴は、保育所に通う子供たちの両親が、大学関係者だけでなく、駒場キャンパス周辺の住民によっても構成されていることである。このような状況になった理由は、保育所の形態にある。駒場保育所は無認可保育所である。無認可保育所というのは、国が定めた保育所の設置基準を満たしていないため、国から保育所として認可されていない保育所のことである。しかし、東京にある保育所にとって、国の設置基準を満たした上で、子供を便利な保育所に長時間預けたいという共働きの家庭のニーズに応えることは、難しい場合が多い。そこで東京都は保育室制度として無認可保育所を支援するシステムを作ったのち、2001年からは都が定めた設置基準を満たした保育所を認証保育所として、補助金を出すようになった。無認可の駒場保育所がその補助金の申請をした際、条件とされたことは、大学と地域住民の双方から子供を預かって保育することであった。このため、駒場保育所に通う子供たちの両親の構成は上述したような独特なものとなったのである。
駒場保育所は1971年に設立され、大学ではなく教職員組合が設置主体として運営してきた。2003年に設置主体はNPO法人”東大駒場保育の会”へと改組され、現在に至る。駒場保育所は東京大学教養学部男女共同参画支援施設の1つであり、地所は大学から借りている。駒場キャンパスには武蔵野の自然がよく残っているため、キャンパスは子供たちにとって格好の散歩コースとなっていると池見さんは言う。
駒場保育所の保育方針は、わかりやすくどこか素朴なものであり、子供たちに英才教育を施すような他の保育園や幼稚園のそれとは異なっている。駒場保育所では、思い切り水や砂、泥で遊び、おいしい自然のものを食べ、自然と触れ合うことが子供たちにとって大切なことだと考えられている。保育所には、0歳児から就学前の子供まで様々な年齢の子供たちが通っている。4~5歳になると駒場保育所の子供たちは高尾山(海抜599m)に登り、就学前になると長野県栄村にて稲刈り体験を行う。池見さんによると、落ち着きのない子供たちにとって、自然の中で一生懸命に遊ぶことが気分の発散につながるという。
保育所の利点について、池見さんは次のように語る。
幼稚園とは違い、保育所には赤ちゃんから就学前の子供たちまで通っているので、年長の子供と年少の子供の間に助け合いの関係が生まれます。保育所で年長の子供たちが年少の子供たちを助けるのです。赤ちゃんは年上の子供たちから見て学び、成長すると年上の子供たちが接してくれたように年下の子供たちに接するようになります。一方で、年長の子供たちは赤ちゃんの手に触れることで癒されるのです。時々、子供たちの間にけんかが起こることもありますが、長期にわたり同じ保育園で暮らすことで、深い信頼関係が生まれていきます。
私たちにとって、幼少期をどのように過ごすかは人格形成において重要なことである。日本が少子化の時代に入っているからこそ、就学前教育のあるべき姿について再考することは、重大な問いとなるであろう。
By Naoki Mizutani
【KomabaTimes】