駒場東大前商店街の活性化などを目指して活動する学生団体「KOMABACK」が駒場祭の11月26・27日、都市計画の専門家などを交えて駒場の未来を語り合うトークセッションを開催した。27日のセッションでは、東大や駒場東大前商店街などが協力し、複合的なまちづくりをしていくという「駒場キャンパスタウン」構想、その活動の主体となる「UDCKom(アーバン・デザイン・センター・コマバ)」の創設を提案した。
本郷地区・柏地区でそれぞれ「東京文化資源会議」「UDCK(柏の葉アーバンデザインセンター)」という地域連携の活動に参加している吉見俊哉教授(情報学環)、出口敦教授(工学系研究科)がセッションに参加し、構想に対して「駒場地域のアイデンティティは何なのか、より深く考えた方がいい」「学生から見た駒場という視点が必要」などと指摘した。会場に来ていた目黒区議や地域の住人なども「駒場は現在再開発が進んでいて、まちづくりの可能性がたくさんある」「住宅地として静かな方がいいというニーズも生かしたい」といった意見を出し、来場者全員で構想を深める場となった。
代表の吉田渉さん(法・3年)はセッションで、「文化交流」「防犯」など「駒場キャンパスタウン構想」の各分野ごとの方針を発表。東大の果たす役割についても「街の文化的な活性化の拠点となる」と説明した。
一方で「駒場には商店街の衰退や駒場東大前駅のホームの狭さなどの問題があるが、例えば駒場東大前駅のホームの狭さを改善しようにも、駅前の土地は東大が所有していて京王電鉄は身動きが取れない」など、全体的な改革をする際の問題点を指摘。東大・目黒区・駒場東大前商店街・京王電鉄など町の主体を結び付けていく拠点として、「UDCKom」を提示した。
構想を提案した後は、吉見教授・出口教授らが専門家からの知見を出しつつ、構想を深めるディスカッションに移行した。
吉見教授は「そもそも戦後の東大は、地域と連携しつつ復興してきた」と歴史的な東大と地域のつながりを解説し、「東大と地域がどのようにつながれるか、他大学・近隣の公園なども複合的に含めて考えていくべきです」と新たな視点を補足。構想の実効性については、複数の区にまたがる地域の連携を本郷地区で推進した経験から「まちづくりを進める上で、目黒区・世田谷区などとの連携はとても重要」と助言した。
出口教授は、柏地区のまちづくりの拠点として自身が参加するUDCKが、地域に建物があって専門家が駐在していることを説明し、「地域の活性化には、皆が課題を持ち寄って話し合うような『場』が大切です」と提案する。「これからのまちづくりは行政・NGO(非政府組織)が単独でやるのではなく、公・民・学が連携して行うものになっていく。UDCKomには、楽しいまちづくりを発信していくセンターになってほしい」とエールを送った。
セッション終了後、吉田さんは「吉見・出口両教授からの知見を得て、今必死に消化している状況です(笑)。今後UDCKomに関わっていく様々な立場の人たちが、話題を共有できる場になって良かった」と振り返った。魅力的な駒場を目指す彼らの挑戦は、まだ始まったばかりだ。
◇来場者コメント
商店街に店を構える男性
「東大生が地域にこんな関心を持って、計画的な構想を提案してくれるのはうれしいね。今後も継続的に意見交換をする場を設けたい。他の商店街の人はそもそもこういう場があることを知らないので、地域への周知が課題かな。我々地域の人間は皆、学生と仲良くしたいと思っています」
地域連携の活動を行う女性
「駒場地域を活性化させたいとは思っていたが、どのような方法があるのか悩んでいた。東大の教員や学生が真剣に駒場について考えてくれるのは、とてもありがたいです」