イベント

2022年11月5日

東大ガールズハッカソン2022開催 「つながり」をテーマに考え抜いた2日間

 

2日間のハッカソンを締めくくる集合写真

 

 東大の女子学生を対象に、プログラミングをゼロから学びアプリケーションの開発に挑戦する「東大ガールズハッカソン2022」が9月15日、16日に開催された(主催・東京大学新聞社)。ハッカソン(hackathon)とはプログラムの作成を意味するハック(hack)とマラソン(marathon)からなる造語で、一定の期間でマラソンのようにプログラムの開発を集中的に行い、チームごとにアイデアや成果を競うイベント。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、オンライン開催となった。(取材・松本雄大)

 

開発テーマは「つなぐ」

 

 東大の情報理工系学科の女子率が低い状況を受け、プログラミングや情報理工系への進学に興味を持ってもらうための本イベント。情報理工系学科での男女比不均衡の改善やIT業界における女性エンジニアの活躍を目指し、2016年より開催している。本年度参加したのは学部生と大学院生合わせて13人で、およそ半数がプログラミング初心者だった。

 

 参加者はハッカソンに先立ち、8~9月にプログラミング講習を受講。プログラミング学習サービスProgateを利用してJavaを学習し、プログラミングの基礎知識を習得した。9月6日には、ハッカソンで開発するアプリのアイデアを出し合うアイデアソンを開催。参加者は4~5人ずつの計3チーム(「白い猫」「猫カフェ行きたい×3」「さんじゅういち」)に分かれ、初めて顔を合わせたにもかかわらず白熱した議論を行った。

 

 今年の開発テーマは「つなぐ」。新型コロナウイルス感染症により、われわれを取り巻く「つながり」の形が変化したことを受け、人と人とのつながりや人とものとのつながり、ものとものとのつながりなど、無数のつながりを再考してアイデアを想起し、アプリ制作を行った。

 

2日間の奮闘の行方は

 

 迎えたハッカソン当日。1日目は9時に開始し、昼食・夕食の時間を除き20時までアプリ開発に取り組んだ。アイデアソンで出たアイデアを基に、チーム「白い猫」は、コロナ禍を家で過ごす人が多い中で映画鑑賞を楽しむ人が増加したと考え、アプリ内での映画の検索や同じ映画が好きな人を見つけるアプリを開発。役割分担を明確にして取り組んだ。チーム「猫カフェ行きたい×3」は、知り合ったばかりでほとんど話したことのない人と仲良くなるためのアプリを開発。当日になってチームの人数が減るというトラブルに見舞われるも、メンターの協力を受けつつ、画面共有などを積極的に活用して完成させた。チーム「さんじゅういち」は、自身のアイデアを投稿し、同じような関心や考えを持った人を見つけてつながれるアプリを作成。活発な議論が行われ進捗も良かった。

 

アプリの構成を話し合うチーム「猫カフェ行きたい×3」

 

 そして2日目の昼食後からは発表準備に移った。アプリそのものだけでなく発表も審査の対象となるため、時間内に的確かつ印象的な発表ができるよう練習を重ねた。

 

 2日目の17時から発表会が開始。各チームの持ち時間は発表10分、質疑応答5分で、各協賛企業と東京大学新聞社の審査員が評価する。メンバーとの意思疎通がとりにくいなどオンラインならではの難しさがある中、実際にアプリを使用した様子を動画で見せるなど、工夫が見られた。質疑応答では、実際にプログラムを組む上で困難だった点やアプリの仕様の詳細を問うような質問もぶつけられた。

 

 全てのチームの発表が終わると、審査を経て、協賛企業から企業賞が授与される表彰式が行われた。PCIソリューションズ賞を受賞したのがチーム「白い壁」。発表がスムーズでハキハキと話しており、自分の開発したアプリを自信を持ってプレゼンしているところが評価された。

 

 ニッセイグループ賞とLINE賞を受賞したのがチーム「猫カフェ行きたい×3」。発表が分かりやすかった点や制作途中で生じた問題に応じて方針を変えつつ実装に持っていった点などが評価された。ジョルダン賞と東大新聞賞を受賞したのがチーム「さんじゅういち」。今年のテーマである「つなぐ」から普通ならコミュニケーションツールが思い付きそうなところ発想を転換させ、東大生限定という閉じた空間の中でアイデアを投稿し、連想していくアプリを開発したことが東大新聞賞受賞の理由だ。着眼点の良さと高度な技術に挑戦した点なども評価された。

 

発表会で自分たちが開発したアプリを紹介するチーム「さんじゅういち」

 

 それぞれの企業の審査員は各チームの努力をたたえた。協賛企業・日本生命の勝永さんは「文理関係なく意欲のある女性が気軽にハッカソンに参加できるというのが良いと思います。今回のイベントをきっかけに、今後も情報工学などの分野に興味を持ってほしいです」と述べた。

 

 アプリ開発技術だけでなく、それ以上の学びも得られるハッカソンは本年度も成功に終わった。2日間の奮闘を終えて成長した参加者の今後の活躍に期待したい。

 

 

東大新聞賞(最優秀賞)受賞チーム「さんじゅういち」メンバーの感想

 

Y.Zさん(文Ⅱ・1年)

 高校や大学の授業で初歩的なプログラミングを教わって面白さを感じ、実用的なプログラミングにも挑戦したいと思いハッカソンに参加しました。開発する際には既存のアプリとどのように差別化していくかという点を意識し、ユーザーに、既存のアプリにはない新しさを感じてもらうため、検索結果の表示方法を工夫しました。事前課題が思いのほか多く、アプリの制作中も分からないことだらけで、プログラミングの難しさを痛感しましたが、メンターの方やチームメンバーと共になんとかアプリを形にできたことは、今後プログラミングを学んでいく上での大きな自信につながったと思います。

 

大保双葉さん(文Ⅲ・1年)

 中学生の時からウェブ制作をかじっており、さらにプログラミングの技術を磨いてみたいと考えハッカソンに参加しました。アプリ開発ではFirestoreというサービスをセットアップすることやそのデータを取得することなどが特に難しかったですが、メンターの方にも手伝っていただき進めることができました。事前に教材を見ながら自分で勉強していた時はどんなアプリが作れるのか全然イメージがつかなくて不安だったのですが、チームでアイデアを出しながらわからないなりにもAndroidStudioを触ってみるとアプリがどんどん出来上がっていって、チームで開発をする楽しさを感じました。

 

毛利未来さん(工学系・修士1年)

 周りの友達がアプリ開発を行なっており自分もやってみたいと思ったこと、またガールズハッカソンということで、女性エンジニアを目指す同志と関わりたいと思い参加しました。「つなぐ」というテーマから、「ちょっとしたアイデアを共有する」ことを考え、オンライン上で思いついたことを寄せ集め、大きなプロダクトの実現に向けて人々がつながれるアプリの仕様を意識しました。プログラミングに難航しましたが、各自が積極的に調べ、メンターからアドバイスをもらうことで形にできました。今回のアプリはまだ実装できなかった部分があるため、もっと勉強して構想段階のものに近づけられるようにしたいと思います。

 

 

ハッカソン運営代表のコメント

 

 どのチームも実際に使いたいと思えるような素敵なアプリを開発していて感動しました。オンラインではありましたが、ZoomやSlackを通して活発にやりとりしている様子を見て、協力して一つのアプリという作品を作り上げることの素晴らしさを感じました。参加者の皆さまにも楽しんでいただけていたらとてもうれしいです。

 

 

協賛企業

ジョルダン株式会社

日本生命保険相互会社

ニッセイ情報テクノロジー株式会社

PCIソリューションズ株式会社

株式会社Progate

LINE株式会社

(順不同、敬称略)

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