東大は松本大(おおき)氏(マネックスグループ会長)から10億円の寄付を受けたと発表した。日本の資本市場の課題や方向性を研究する研究組織の設置に役立てられる。松本氏と藤井輝夫総長、相原博昭理事・副学長(経営企画、財務、資産活用)が7月19日、経緯や今後の展望を説明した。
松本氏は会見で日本経済の改善や日本企業の強化につなげたいと言及。GDP世界3位の日本の資本市場を活用して日本企業の国際競争力を高めていくため、既存企業の生産性向上を促す枠組みの設計やスタートアップ企業の成長を高めるファイナンス手法などの研究を行う組織の必要性を実感。藤井総長らと話す中で寄付を決めたという。「東京大学資本市場研究センター」を仮称とする研究組織について、相原理事は10月をめどに立ち上げたいとした。
松本氏は東大卒。1999年にマネックスグループを立ち上げ、現在は取締役会議長兼代表執行役会長を務める。今回の寄付はマネックスグループからではなく松本氏個人によるもの。
資金運用で得た利益を運営に 「エンダウメント」型で持続的・自律的な経営目指す
今回設置する研究組織は、大学独自基金(エンダウメント)の資金運用で得たリターンを元に研究活動を行う。エンダウメントでは、寄付金を消費して財源とする運営方法などとは異なり、持続的な価値創造が可能だ。こうした「エンダウンメント型研究組織」の設立は東大初。
会見で藤井総長らはエンダウメント型を拡大していきたいとも強調。今回設置した組織をモデルケースとして大学の財務経営モデル全体も、安定性に欠ける従来の補助金型から、大学独自の判断で長期的・持続的な運営がしやすいエンダウメント型への移行を進めていきたいとした。
東大は気候変動など地球規模の課題に機動的に対応するため、独自財源を確保する方針を掲げている。大学運営の財源には運営費交付金といった基盤的経費に加え補助金などがあるが、補助金は活動の幅や使用期限の制約があり、独自の研究投資や長期的な博士課程の学生の支援などにつなげづらかった。エンダウメント型の研究組織モデルでは、基金の元本を直接使わず、専門性の高いスタッフによる投資で得た運用益を研究などの事業推進に充てることで、大学独自の判断で使える財源の半永続的な確保が可能だ。東大は4月に初のCIO(Chief Investment Officer)として福島毅(たけし)・元ブラックロック・ジャパンCIOを起用するなど、基金運用の高度化に向けた体制を構築している。
藤井総長は会見で、2027年の大学創設150周年も見据え、150年間で培った広範で多様な「知」を、いつでも社会に還元できる体制をエンダウメント型により整えていきたいとした。