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2015年5月29日

「能力があるから融資や投資をしてもらえるわけではない」木寺祥友さん

 東京大学新聞社は第88回五月祭2日目の17日、シンポジウム「東大生よ、起業家になれ~IT時代の起業のカタチ」を開催した。

22歳で起業し、日本でのコンピューター言語Javaの第一人者としても知られる木寺祥友さんが講演した。シンポジウムは2部構成で、第1部では起業家として成功した自身の体験を踏まえた「起業論」を展開。第2部ではITやプログラミングに関する「IT論」を述べた。

前編の本記事では第1部「企業論」の内容を紹介する。

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【セッション1「起業論」】

私が大学を中退し22歳で起業して、今年で30年目に入ります。起業前から、会社の経営に関わったことがありました。19歳の時に大学に行きながらカフェバーの店長をしたんです。知り合いの美容院のオーナーに「新しく出す店で働いてくれないか」と言われたのがきっかけです。

しばらくしたら、オーナーに「自分が保証人になるので店を買わないか」と言われ、実際に購入しました。店が自分のものになるとがぜんやる気が出ましたね。

そのうちに、常連さんに店を売ろうと考えました。でも店を売って利益が出た場合、保証人のオーナーにも行ってしまう。それは嫌なので、オーナーを保証人から外すことを考えました(笑)。

オーナーに「店の経営が危なそうなので保証人を辞めてはどうか」と言い、客入りが比較的少ない月曜日に店を見せて保証人を外れてもらいました。一方で店を売ろうとしている常連さんには繁盛している金曜日の店を見せ、購入してもらいました。20歳でM&A(企業の合併・買収)のような経験ができたことは起業にもとても役立ちましたね。

もともと大学は途中で辞めるつもりで、3年生の1年間は好きな授業に出てやろうと思い立ちました。単位を気にしなくてよいので、興味のある授業にひたすら出ていましたね。

何か変化が欲しいと思い、それまでいつも一緒だった友達ではなく2年留年した人たちと交流してみようと思いました。話をするうちにその人たちが留年を大したことだと思っていない、と知ったんです。留年で落ち込む人が居る一方で、何とも思わない人も居る。物事は考え方次第だと気付きました。

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それで、物事に対する考え方を変えました。大学を中退したら大企業への就職などが難しくなり、出世しにくくなると思っていましたが「どうせ出世しないのなら起業しよう」と切り替えることにしました。

自分の起業を振り返るに「かわいげ」の有無が成功のポイントだと思います。能力があるから融資や投資をしてもらえるわけではない。私に援助をくれた方は「一緒に仕事をすると楽しそうだから」助けようと思ったそうです。周りに「何かしてあげたいな」と思ってもらうことが大事です。

昔の起業について考えると、携帯電話などが普及していないので誰かが事務所に常駐しなくてはならず「物理的制約」が多かったですね。今ではウェブの普及などで「物理的制約」はなくなりました。一方で何かの失敗がすぐにウェブ上の掲示板に書かれて記録として残ります。それを恐れて起業をためらう、起業への「心理的制約」が昔より目立ってきたと思います。

それでも今は起業しやすい時期だと考えています。2020年の東京オリンピックで日本に世界からの注目が集まっている。起業をしやすくする制度も整いつつあります。20年ごろを境になくなる制度もあると思うので、この機会を生かすのがいいかもしれません。

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次回「起業を考える学生が、5年後までに身に付けておきたい4つの能力」木寺祥友さんシンポジウム抄録(後編)では第2部「IT論」の内容を紹介する。

この記事は、2015年5月26日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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