東京大学新聞社は第88回五月祭2日目の17日、シンポジウム「東大生よ、起業家になれ~IT時代の起業のカタチ」を開催した。
22歳で起業し、日本でのコンピューター言語Javaの第一人者としても知られる木寺祥友さんが講演した。シンポジウムは2部構成で、第1部では起業家として成功した自身の体験を踏まえた「起業論」を展開。第2部ではITやプログラミングに関する「IT論」を述べた。
前編「能力があるから融資や投資をしてもらえるわけではない」に引き続き、後編の本記事では第2部「IT論」の内容を紹介する。
【セッション2「IT論」】
今から20年以上前、飛行機で居合わせたワシントンD.C.の政府関係者に「あなたの国はあと20年は駄目だ」と言われ、日本で成功する方法を二つ教わりました。一つ目は、日本以外の国の企業と仕事をすること。二つ目は、成長が期待されるIT系の仕事をすること。半信半疑でしたが、もともとコンピューターが好きだったこともあり、コンピューターで仕事することにしました。まずはコンピューターを使って目標を設定しようと考え「コンピューターの第一人者になろう」と決めたんです。
その後ある時、久保田達也さんというプランナーの方とインターネット講座をする機会がありました。そこで「Javaでプログラムを組んでみないか?」と言われ、初めてJavaでプログラムを組みました。それをきっかけに曲折を経て、当時あまり知られていなかったJavaの普及に努めることになったわけです。携帯アプリを作る言語としてJavaが使われ始めたころには、携帯Javaのプラットフォームを手掛けさせてもらいました。
Javaを手掛けてからの約18年間で私が一番重要だと思ったのは、最初に仕事の目標を設定することです。私は目標を最初に決めて働いたため、コンピューター関係の仕事を始めて1年以内にJavaに関する仕事に巡り合え、今でもJava関係の仕事を多数もらえているのだと思っています。
ウェブはもっと発展すると思います。今までより、これから大きなことが起こるでしょう。最近ではスマートウォッチが出るなど機械はどんどん進化している。今後は、機械が人間の仕事を奪う時代が来ると考えています。例えば自動改札機の出現で、駅で切符を切る人は必要なくなりました。人間が担う仕事は、人間の仕事を奪う機械を管理する仕事、機械を導入するよりは人間を雇った方が安くなる仕事に分かれていくと思います。その中間の仕事は機械が行うので、人間はしなくなるでしょうね。
今まで起業やITについて話してきましたが、絶対にやってはいけないのは、「取りあえず会社を作ること」です。よく「会社を作って1年以内に97%がつぶれる」と言われています。昔に比べて起業に対するリスクが減っているのにつぶれるのは、起業についてきちんと勉強せずに会社を作ったからでしょう。勉強すればするほど会社がつぶれるリスクは低くなるので、起業について調べるなど学びを大切にしてほしいです。
最後に5年後までに皆さんに身に付けてほしい四つの能力について話します。まずは英語。東京オリンピックに際し世界中の人が日本に来て、英語で話します。英語ができるのは必須でしょう。それから中国語。ニューヨークでの自分の体験に基づきますが、東洋人で中国語が話せないと外国人からは頭が悪いと思われるんです。さらにコンピューターの言語も一つくらいできてほしいです。プログラムを少し組める程度のものを習得するのが大事でしょう。最後に、簿記。3級程度の知識があれば、帳簿がどうなっているかも分かり、起業に役立ちます。
これらの能力は、学ぶのにお金が掛かりません。ウェブ上の動画などでも学べます。これからの時代に必須な四つの能力を、皆さんに習得してほしいと思います。(談)