大学を中退して、コンピューターの世界で起業家として成功した――。
こう書くと、同じく大学中退者の故スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツ、Facebookのザッカーバーグのことを思われる人が多いだろう。五月祭に登壇するのは、そんなアメリカン・ドリームを、日本で体現した木寺祥友氏だ。
帝国大出身の祖父
自分は中退者ですから――と言い切る木寺氏だが、東京大学と縁がないわけではない。
木寺氏の祖父は、木寺柳次郎氏。東京帝国大出身のエリートで、わずか28歳で、春日部高校という、今でも埼玉県では有数の公立男子校の初代校長に抜擢されている。
そんな家庭で育った木寺氏は、高校時代に建築家を志し、建築学科のある大学に進学する。
しかし、その夢も在学中に潰えることになる。
木寺氏によれば、建築家になれば、一つ建物を手掛けると、施工費用の2割が収入として入ってくるが、そのポジションに到達するまでに、30年の年月がかかるという。
「人生は不公平だと思いました。建築家が描いた、ラフなスケッチをきっちりと図面に落とす、手間暇がかかる裏方の仕事もあるのですが、ほとんど報われない。僕は、頑張った分報われる仕事に就きたい、と思いました。」
大学で学んだこと
そうして建築の道に関心がなくなった木寺氏は、大学を中退することを決断する。
「不思議と、中退を決心してからの方が、大学の勉強に身が入りましたね(笑)。在学しているうちに、しっかりと学べることを学ぼうと思いました」と語る。
実際に、建築学科で培った図面を引く能力が、プログラミングを組む際に役に立っているという。
「建築学科にいるとき、僕は狭い建物を設計するのが好きでした。狭いなかで、徹底して合理的にスペースを有効活用することを考えていました。プログラミングも同じで、コードも徹底して合理化して組み立てるのです」という。
祖父の影響
木寺柳次郎氏の孫で著名な実業家として、春日部高校の記念講演にも呼ばれる木寺氏であるが、祖父の影響で教育にも熱心で、後進の起業家育成にも力を入れており、「東大生だったらどう起業すればうまくいくかも、日夜考えていますよ」と語る。
セミナーで起業について語る木寺氏
「起業は学べる技術です。日本のベンチャー企業は、欧米諸国と比べて苦戦していますが、起業を教える場所がないのは問題です」と、今回の講演会依頼を受諾した理由を語る。
東大の肩書きを生かす起業術
氏のオフィスには起業に関する書籍があふれており、まさに「三度の飯より起業好き」ともいえる木寺氏。
本講演会では、木寺氏の長年の経験と研究から導き出された、「東大生のための起業術」が開陳される予定だ。
(文責:沢津橋紀洋)
日時:5月17日(日)14:00~16:00(開場13:30)
場所:東京大学本郷キャンパス法文1号館22番教室(正門入りまっすぐ・安田講堂手前)
事前申し込み不要。当日会場までお越しください。