インタビュー

2021年2月3日

【仕事・家事・育児すべて諦めない】子育て支援策進める東大卒弁護士・市議の挑戦

 弁護士・IT企業代表取締役・つくば市議会議員と多様な分野で活躍する、東大卒業生の川久保皆実さん。紆余曲折あった弁護士までの道のりや、自身の政策の一つである「子育て支援制度改善」にも関係する共働き家庭での家事育児について話を聞いた。

(取材・森永志歩)

 

川久保皆実(かわくぼ・みなみ)さん(弁護士、株式会社リージット代表取締役、つくば市議会議員) 10年東大大学院法学政治学研究科(法科大学院)修了。15年鳥飼総合法律事務所入所。18年株式会社リージット代表取締役就任。20年つくば市議会議員就任。

 

違和感に素直になって

 

  弁護士になった経緯を教えてください

 

 中学2年生の頃から法律家を目指していました。特に大学1年生の時に「法と社会と人権ゼミ(通称川人ゼミ)」に参加したことで、弁護士になって人権に関する仕事がしたいと思うように。しかし1回目の司法試験では不合格。法律の勉強への意欲を失ってしまい、約3カ月後にITベンチャー企業に就職しました。その数年後、社会人として生きていく中で何か武器になるものが欲しいと思い、もう一度弁護士を目指すことを決意。2回目の司法試験で合格し弁護士になりました。

 

  弁護士とは真逆に思えるITベンチャー企業に就職したのはなぜですか

 

 1回目の司法試験に落ちた後、しばらくは翌年の試験に向けて勉強していたのですが、1カ月ぐらいしてから何も手に付かなくなってしまいました。これからどうしようと1週間ほど家で悶々としていましたが、知人からのアドバイスで一人旅に出てみようと思い、勉強道具を全部置いて2週間石垣島に。今までの自分だったら2週間全く勉強しない状態に強い焦りを感じるはずでしたが、石垣島から戻った後も全く法律を勉強したいと思わず。そこで弁護士になるのは今ではないと思い、自分が本当に好きなことをやろうと、クリエーティブな側面のあるITベンチャー企業に就職しました。

 

  クリエーティブなことには以前から興味があったのですか

 

 法律家になると決めてから脇目も振らず頑張ってきましたが、大学時代に法律の勉強が好きだったわけではなく、このまま法律家の道を進んでいいのかずっと違和感を持っていました。そこで1回目の司法試験に落ちた後、自分が本当に好きなことを知るために、小さい頃からそれまでの間で好きだったことと嫌いだったことを紙に書き出してみることにしました。その結果、自分は図工などの物作りが好きだったことを思い出し、クリエーティブな方向に進もうと決めました。小規模なITベンチャー企業で働くことに多少の不安はありましたが、そこでの仕事がとても楽しかったので、自分の選んだ道に自信を持てました。

 

  弁護士だけでなく、昨年からつくば市議会議員も務めていますね

 

 昨年、新型コロナウイルス感染症の流行を機に、東京都千代田区から地元の茨城県つくば市に移住しました。その際、千代田区に比べて、つくば市の公立保育所は保護者の負担が重いと感じ、制度的なギャップを解決したいと思って出馬しました。

 

  選挙の際「仕事と育児を犠牲にしない」を方針の一つにしていたことが印象的でした

 

 出馬の際、一市民が選挙に出ることのハードルの高さを感じました。街を変えたいと思っても、多くの人は仕事や育児を犠牲にしてまでやりたいとは思いません。私もそのスタンスだったので、仕事や育児の合間で、自分が効果的だと思うことに絞って選挙活動を行おうと思いました。私の当選によって、このようなやり方もあると多くの方に知ってもらえたらいいなと思います。

 

  現在、将来について迷っている学生や就活中の学生に、メッセージをお願いします

 

 もし自分が進もうとしている道に対して違和感を抱いたら、その感覚に素直になっていいと思います。世間体などを気にして将来を決めるときっと後悔します。自分が本当にやりたいことをきちんと立ち止まって考えて、これだと思ったらどんどん挑戦してほしいです。

 

夫婦で話し合いベストなバランスを

 

  つくば市議会議員として、子育て支援制度改善も推進しています。ご自身も2児の母親ですが、家事育児はご夫婦でどのように分担していますか

 

 うちは家事育児を夫と半々で分担しています。私の兄が積極的に家事育児をする人なので、兄が家事育児に取り組む姿を夫に度々見せて分担の意識を持ってもらうようにしました。また夫とは同じ職場で働いていたことがあるので、誰よりも私の仕事への熱量を理解し、能力を買ってくれています。そのため、家事育児の分担によって私が働きやすい環境を整えることにも意欲的でいてくれています。

 

  お仕事が非常にお忙しいと思いますが、外部の家事サービスは利用していますか

 

 2週間に1回ほど食事の作り置きや水回りの掃除などの外部サービスを利用しています。しかし私の住む茨城県は外部サービスの対象外となっていることが多く、サービスの選択肢が圧倒的に少ないという印象です。特に東京との大きな格差を感じています。

 

  夫婦で協力しながら家事育児を行っていくために大事なことは何だと思いますか

 

 まずは結婚当初にきちんと役割分担を決めることです。不都合が生じてきたら感情的にけんかするのではなく、どうすれば改善されるのか2人で冷静に話し合う必要がありますね。うちの場合は夫婦どちらも仕事が大好きなので家事育児は半々で分担していますが、半々がどの家庭でもベストというわけではないと思います。話し合いを重ね、それぞれの夫婦の生き方にとって最適なバランスを見つけることが大事だと思います。

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