2024年9月13日

【官庁訪問2024】東大出身者が語る 国家公務員の仕事 ③文部科学省・気象庁

就活サムネ

 

 毎年多くの東大生が受験する国家公務員採用総合職試験。国家公務員を志す学生にはもちろん、まだ進路に悩んでいる人にとっても国家公務員自らが語る職務の実情やその素直な感想は参考になるだろう。

 

   今年は、法務省・財務省・農林水産省(技術系、事務系)・文部科学省・気象庁の東大出身者に取材。現在の省庁を選んだ経緯や担当する業務内容、省庁の魅力や就活生へのメッセージを聞いた。第三回では、文部科学省と気象庁を紹介する。(構成・本田舞花、取材・渡邊詩恵奈、清水琉生)

 

【官庁訪問2024】法務省と財務省へのインタビューはこちら

 

【官庁訪問2024】農林水産省(技術系)と農林水産省(事務系)へのインタビューはこちら

 

文部科学省 教育を通じて未来の社会に貢献

 

文科省DATA

 

望月さんデータ
望月貴史(もちづき・たかし)さん/文部科学省初等中等教育局財務課企画調査係。22年教育学研究科修了。

 

 

 文科省を志望し始めたのは中高時代。教育格差への問題意識が根底にあった。金銭面や機会に恵まれない子供へのサポートがビジネスになりにくいことや、本質的な問題へのアプローチは公的機関からの方がしやすいと考えたことから文科省を視野に入れた。文Iから法学部に進んだ後、文科省に入省する前に教育に関して勉強したいと思い、大学院教育学研究科に進学した。

 

 合気道部での6年の活動や学習支援系のNPOの経験は文科省に入っても生かされている。前者で基礎的な練習の重要性を学んだことは自分の担当している施策の勉強で役立っているという。後者で身に付けた他者を説得するための論理展開やチームで意識をすり合わせた経験も直接生きている。

 

 試験対策は民間企業の就活が落ち着いた大学院1年の冬に開始独学で対策を続け、演習とインプットを繰り返した。

 

 入省後は大臣官房政策課で勤務。主に省内の政策文書の取りまとめを行い、デジタル田園都市国家構想総合戦略などにも関わった。政府全体での施策の方向性を決める文書を調整する過程で、文科省の交渉の進め方を間近で見ることができた。

 

 2年目からは初等中等教育局財務課で、学校における働き方改革や処遇改善、学校の指導・運営体制の充実に関する業務を担当している。教育分野は世間の関心も極めて高く、国民の意見が一致するような政策を立案するのは簡単ではないという。

 

 未来の子供のために働いているという確信を持って勤務することができるのは文科省の魅力の一つ。「意見が分かれる中でも多くの専門家から意見を集め、現場を見て一番良い選択をしていく」ということがあり、そういった難しいやり取りをできる点が面白いと話す。

 

 入省してみると想像通り、役職の違いに関わらず建設的な議論ができる風土があった。適切な知識や論理の裏付けをもって上司の意見に反論した時には、上司も聞き入れてくれるそうだ。

 

 資源が乏しく、人口も減っていく一方の日本では社会の豊かさを維持するために一人一人の力の底上げが必要になる。そこで教育は非常に重要な役割を果たすと望月さんは話す。「社会の豊かさと個人としての幸福の実現を両立し得る教育制度や内容を整えることで、100年後の日本がより良い国であるように貢献したい」というのが望月さんの考えだ。

 

 「文科省の所管領域である教育・科学技術・スポーツ・文化に関心がある学生や、自分の能力を日々の仕事に反映させながら、社会を動かしていきたい学生には文科省は非常に向いていると思います」

 

気象庁 国民を守る地球観測へ

 

気象庁就活年表

 

橋口廉太郎(はしぐち・れんたろう)さん/気象庁大気海洋部業務課気象技術開発室。23年理学系研究科修了。

 

気象庁就活年表

 

 東大入学まで興味があったのは気象ではなく、素粒子などの物理学そのものだった。しかし理学部地球惑星物理学科へ進学後の大学3年生の時、令和元年8月豪雨が起きた。地元の佐賀で多くの親戚や知人が被災した上、橋口さん自身もエレベーターに閉じ込められた。「防災の力で誰も悲しまないようにしたい」と、気象学の専攻を決意。学科の講義では気象現象や火山から地震に関するものまで、基礎を網羅的にカバー。総合職試験で対象区分にある自然科学に関する知識はもちろん、気象庁職員としても通用する知識が習得できた。

 

 気象庁一本で志望を固めていたが、ある程度専門的な研究経験があった方が良いと思った。学部卒での就職活動は行わず、修士課程へ進学。「秋雨前線の気候学的な特徴」を研究し、関心のある大雨現象について知見を深めた。

 

 入庁1年目は政策の企画や白書の取りまとめ業務を担った。綿密な連携をとる防衛省との連絡窓口となったり、15言語に対応する気象庁ホームページの周知をしたりするなど、気象庁のイメージになかった一面を学んだ。今年1月の令和6年能登半島地震では災害資料の取りまとめなどで応援。入庁前イメージしていた業務は気象状況を24時間体制で監視するものだったが、資料で専門的な内容も扱うと知り、行政の面からも楽しさを見出している。

 

 本年度からは線状降水帯の予測精度向上に関する開発に携わる。発生2〜3時間前の情報発表を2026年までに実現させるべく、プログラミングに加え、いかに避難行動につながる有効な情報にしていくかについての上司や同僚との議論・検討も含めた開発に日々取り組んでいる。

 

 専門的な業務内容だが、気象庁は行政機関。特定の誰かを対象とするビジネスではないため、国籍問わず日本に住む人々全員の安全を考慮する責任を持つ。「情報がダイレクトに国民に伝わるのは反応も分かりやすく魅力ですが、気は抜けないです」

 

 いつかは南鳥島にある気象観測所で業務をしてみたいと橋口さん。全職員の3分の2が本庁以外の気象台などで活躍する。各地で異なる気候の特色があり、勤務地によって全く違った業務ができることが魅力だという。

 

 現在主な業務内容となるシステム開発のプログラミングには、大学3年次の授業で学んだFortranや大学4年次のコロナ禍時に独学したPythonの知識が生きる。気象庁は専門的な業務が多く、大学までで学んだことを生かしやすい場。同期入庁した総合職職員もほとんどが院卒だ。「気象に直接関することでなくても、理系のバックグラウンドがある学生が大活躍できる職場だと思います」

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