2024年9月12日

【官庁訪問2024】東大出身者が語る 国家公務員の仕事 ②農林水産省(技術系)・農林水産省(事務系)

官庁訪問サムネ

 

  毎年多くの東大生が受験する国家公務員採用総合職試験。国家公務員を志す学生にはもちろん、まだ進路に悩んでいる人にとっても国家公務員自らが語る職務の実情やその素直な感想は参考になるだろう。

 

   今年は、法務省・財務省・農林水産省(技術系、事務系)・文部科学省・気象庁の東大出身者に取材。現在の省庁を選んだ経緯や担当する業務内容、省庁の魅力や就活生へのメッセージを聞いた。第二回では、農林水産省(技術系)と農林水産省(事務系)を紹介する。(構成・本田舞花、取材・山下凛太郎、青木佑磨)

 

【官庁訪問2024】法務省と財務省へのインタビューはこちら

【官庁訪問2024】東大出身者が語る 国家公務員の仕事 ①法務省・財務省

 

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【官庁訪問2024】東大出身者が語る 国家公務員の仕事 ③文部科学省・気象庁

 

農林水産省(技術系) 日本の食と農業を守る

 

村山さんDATA

 

村山さんデータ
村山怜子(むらやま・れいこ)さん/農林水産省農産局農業環境対策課。22年農学生命科学研究科修了。

 

村山さん就活年表

 

 修士1年次の3月に就活を開始した当初は、民間企業への就職をメインで考えていた。食べることが大好きで、食を守りたいという思いがあったため、食品関係の企業を中心に約30社に応募。しかし、いろいろな企業を見ていくうちに、民間でできることへの物足りなさが募った。「(民間は)作った商品を介したアプローチが主になってしまうと感じました」。生産現場から家庭の食卓、食文化や食育まで、幅広い観点から食に関われる農水省に引かれていった。

 

 国家公務員試験の受験を決意したのは出願締め切り日の直前。試験対策期間は1カ月だった。研究室での活動後に図書館で勉強する毎日。過去問1年分に目を通したほか、大学の教科書を使って知識を詰め込んだ。だが、内容が院試と一部重複しており「そこまで大変という感じではなかった」という。

 

 入省後、最初の2年間は食品安全に関する業務を担う消費・安全局食品安全政策課で食品中の化学物質について調査等を行う班に勤務。長期にわたり取りすぎると健康に悪影響があるとされる「トランス脂肪酸」の担当になり、国内外の情報収集や国内の実態調査の計画に従事した。「論文を読むことも多く、思ったよりかなりピンポイントで学術的でした」。その後、現在の農産局農業環境対策課に異動。農地土壌の調査や農地土壌から排出される温室効果ガスに関する取り組みなどに携わる。

 

 始業は午前9時半、終業は平均で午後8時ごろ。国会対応が入る時期もあるが「基本的にはすごく忙しいということはないです」。土日はオーケストラで趣味のチェロを演奏するなど、生活にはゆとりがある。

 

 印象深い体験は、入省2年目のときマレーシアで参加した国際会議だ。各国の代表が集まる大会場で、上司の意見が受け入れられ、結論に盛り込まれる様子を目の当たりにした。日本代表という立場で発言することの重みを感じ「公務員の仕事ってこういうことなんだなと実感しました」

 

 また、普段の業務で若手の意見もしっかり聞いてもらえるのも魅力だ。例えば、班として次年度どのようなトピックの調査を行うかについて若手も意見を出せ、入省年次にかかわらず平等に検討してもらえる。

 

 服装は自由。男性はスーツも多いが女性はほとんど私服だという。「公務員は堅苦しいイメージもあるが(農水省は)そうでもないです」。休憩も柔軟にとることができる。上司とも話しやすく、オフィスにはいつも会話がある。困るのは「冷暖房の効きが悪い時があることくらい」だと話す。

 

 仕事において農業そのものについての知見が求められる部署もあるため、これから農水省を目指す人は、学生のうちに農業の現場を知る体験をしておくと良いという。

 

農林水産省(事務系) 食・農は国民生活に直結

 

片桐さんDATA

 

片桐さん
片桐博紀(かたぎり・ひろき)さん/農林水産省消費・安全局動物衛生課。23年法学部卒。

 

片桐さん

 

 人の役に立つ仕事がしたいと考え国家公務員を志望。官庁訪問で農水省を訪れ職員の話を聞き、農業は経済活動の一環であると同時に国民の食を支える公的な側面も強いと実感。課題を抱える日本の農業を守りつつ変えることにやりがいを感じた。

 

 就活は民間企業と並行して進めた。コンサルや大手通信インフラ企業などの選考と並行して予備校に通い試験対策を行った。省庁の説明会にも多く参加したが、官庁訪問で志望が固まった。「多くの人と話すことで農水省の良さをひしひしと感じました」。農業の公的な側面に加え、自分の質問に対し率直に答えてくれる農水省の職員の誠実さも決め手となった。知り合いにも官庁訪問で志望先が決まった人がいるという。「官庁訪問で濃密な話を聞くことで、各省庁のビジョンが見えてくる。さまざまな省庁を訪れることを勧めます」

 

 食・農を扱う農水省の仕事は国民生活に直結する。「鳥インフルや豚熱が発生すると卵や肉の値段が上がってしまうため自分の頑張りが国民の生活につながります」

 

 入省以来消費・安全局に所属し、関係者間の連絡・調整が業務。いわゆるパイプ役として「交通整理」を行う。業務に関係する内容が多岐にわたるため、普段から周りを見て、分からないことは詳しい人と意思疎通をすることが重要だという。

 

 国民の生活が懸かっている上、家畜の感染症はいつ発生するか分からない。スピードが大事で、緊張感が求められる。「疲れがたまらないよう、オン・オフの切り替えをしっかりすることが必要です」

 

 入省して意外だったのは、1年目から多くのタスクを任されたこと。「自分で考えて、意見を発信することが求められました」重要な政策立案にも関わり、大きな仕事ができると実感した。1年目、消費者行政・食育課にいた時のこと。消費者の理解醸成に関する政策の議論のため、調査をし、仮説を立てることを任された。時間をかけ多くの関係者に話を聞いて資料を作成。データの取捨選択にも腐心した。「力作の資料でした」。資料は局幹部にも好評で、省内の政策の議論で多用された。「1年目にし
て政策の議論に関わり貢献できた良い経験でした」

 

 自分の考え・信念を持っている人、やりたいことを発信できる人が活躍できると片桐さんは感じているという。「農水省で働くならば、やはり食・農に関心があるとやりたいことが浮かんできやすいと思います」

 

 国家公務員を志望する学生には官庁の説明会に積極的に参加したり、複数の官庁へ官庁訪問をしたりしてほしいという。「各省庁を比較することで、自分の考えが深まります」

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