宇宙線研究所などが完成を目指していた大型低温重力波望遠鏡KAGRA(岐阜県飛騨市)が9月30日、報道陣に公開された。KAGRAは、超新星爆発など大きな天体現象が起きた際に発生する重力波の観測施設。今年6月に機器の設置が完了し、本格的な観測に向けて調整作業が進められていた。今回、今月4日に予定されている完成記念式典に合わせて内部が公開された。年内の本格観測の開始を目指す。
(取材・渡邊大祐 撮影・衛藤健)
観測では、レーザー光線が直交する二つの坑道中を直進。端点にある鏡で反射し、坑道を往復する。戻ってきた二つのレーザーの到達時間の差を利用して重力波を捉える。重力波による空間のゆがみは「太陽と地球の間で水素原子1個分が揺らぐ程度」(大橋正健教授、宇宙線研究所)ほど微小なため、高精度な観測には外部からの振動による影響を取り除くことが必要とされる。KAGRAでは、神岡鉱山の地表から200m以上の深さにある地下トンネルに施設を設置し地面振動による影響を軽減。サファイア製の鏡を氷点下253度まで冷却することで、熱による物体の微小な振動の影響も取り除いた。
重力波の観測では2015年に重力波を世界で初めて直接観測し、重力波の存在を確認したLIGO(米国)とVirgo(イタリア)が先行する。KAGRAは、地下への建設と低温に冷却した鏡という新手法によってLIGOと同等以上の観測精度を目指す。また重力波の国際観測網に参加することで、重力波が発生した方向などが従来以上に正確に分かるようになるという。
重力波観測研究施設長を務める大橋教授は「予算化から10年近くがたち、ようやく完成した姿を見せられること、また国際観測網に参加できることにほっとしている」と語った。KAGRAでは宇宙線研究所の大学院生も、観測開始に向けた研究に参加している。修士2年の大柿航さん(宇宙線研)は「重力波天文学の日本での幕開けに立ちあえそうで幸せだ」と話した。
重力波観測研究施設長の大橋正健教授(左)とKAGRAに関係する研究を行う修士2年の大柿航さん
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重力波望遠鏡KAGRA本格稼働へ
【記事修正】2019年10月2日18時2分 タイトルを修正しました。