硬式野球部（東京六大学野球）は今年も多くの感動を届けてきた。特に秋季リーグ戦では7年ぶりの2勝を挙げ、思い出に残るシーズンとなった。そんな勝利を語るには欠かせない選手たちに、2024年の振り返りと今後の目標を聞いてみた。インタビュー1人目は、今年の秋季フレッシュトーナメントでは主将も務めた門田涼平選手（文Ⅲ・2年）だ。（取材・高倉仁美）

　今年の春季リーグ戦、チームは攻守ともに奮わず全敗という結果になった。試合にならないような試合も多かったという。一方、自身にとっては初めて六大学野球の舞台に立った記念すべきシーズンだ。「とにかく緊張していて、気づいたら打席は終わっていました」。夢の大舞台での初めてのリーグ戦は、緊張して浮ついた気持ちでいるうちに4打席全て凡退に終わってしまった。「全然通用しなかったんで、実力の問題かなって思っていました。今思えば、バッティングフォームも全然ダメでしたし、打席でも自信が持てず中途半端な考え方をしていました」

　自信を失いかけた春から4カ月。秋季リーグ戦は「とりあえずヒットを1本」打つことを目標にしていたと言うが、その目標を大きく超えて、チームが勝利をつかむために欠かせない存在となっていった。全試合でベンチ入りメンバーに名を連ね、スタメンに立って2試合目の慶大2回戦では早くも初安打を記録。「ヒットが出たことで結果を恐れずに強いスイングができるようになった」と振り返る。

　実際に、翌週の法大戦では目覚ましい打撃を繰り広げた。2回戦、同点で迎えた九回裏。1死二塁で打席が回ってきた。初球から力強くスイングすると、ミートした打球は右中間を鋭く破り、二塁から走者が一気に生還。劇的サヨナラヒットでチームは記念すべき７年ぶりの2勝目を獲得した。「いい場面をもらったなという感じで、絶対に自分で決めようと思って打席に行って…。打ってからはもう、うれしすぎて覚えていないです。みんながハグしに来てくれました」とはにかむ。「無駄のないバッティングフォームを固めて、甘い一球を仕留められるような打ち方ができたのが大きかったです」。1回戦と3回戦で対戦した相手投手・篠木は横浜DeNAベイスターズからドラフト2位指名も受けた実力者。篠木が繰り出す豪速球と鋭い変化球は、簡単に打てるものではない。涙を飲み励んできた練習の成果が発揮された瞬間だった。「篠木から2本ヒット打てたという、大人になったら自慢できそうなことが1個できました」と満足げに語る。

　普段はセカンドの練習をしているが、秋季リーグ戦では終始ファーストを守った。「今ファーストをやらせていただいているんですけど、もっと長打を打てるような、守備面では180（センチ）を超えているような選手の方が向いていると思っています」と、その見事な守備とは裏腹に、自分には他のポジションが向いているとほのめかす。来季以降はセカンドやサードにつくことを視野に入れているようだ。

　現在の3年生を主軸とした新チームには、ファンからも大きな期待が注がれている。「ピッチャー陣は渡辺さん（農・3年）がいて、外野はベストナイン（受賞者の3人）で固められそうだし…ってなると、やっぱ内野がどこまで頑張れるかで結果が左右されるのではないか」と、内野手としての責任感を打ち明ける。

　秋季リーグ戦での自身の活躍は、10点中7点と評価。「立大戦が不調で打率が落ちてしまい…2割5分を上回りたかったです」と悔しさをにじませる。今後の課題は打撃の対応力とのこと。スイングスピードを速くし、より長くボールを見切れるよう、来春までにフィジカル面を鍛えることが目標だ。「レギュラー争いがまたゼロから始まるので、まずはレギュラーを絶対に取って、そしてベストナインを争えるような選手になりたいです」と語るまなざしには闘魂がみなぎる。先輩も顔負けのプレーでスタンドを沸かせ続けてきた門田選手。残す4季、どんな成長を見せてくれるのだろうか、今後の躍進が楽しみだ。