大学受験は悩みが尽きないもの。どうせ誰かに相談するなら、その道のプロにアドバイスをもらいたい! そんな受験生や保護者などからお悩みを募集し、東大生や東大の教員などに話を聞く連載企画「受験なんでも相談室」。今回扱うのは「塾・予備校選び」に関する質問。高校時代に利用していた外部教育機関について、東大生3人に話を聞いた。塾や予備校は利用した人でなければ実態が分からない。後悔のない選択のために、ぜひ参考にしてほしい。(取材・石橋咲)
今回の質問
塾・予備校はどのように選ぶのが良いですか。(高校生(2年生以下))
参加者
Yさん 理Ⅱ・1年 大手予備校の対面授業を利用。高1で英語・数学、高2で物理、高3で英語・数学・物理・化学を受講した。
Sさん 理Ⅱ・1年 大手予備校の映像授業を利用。高3の4月から数学・物理を受講した。
Mさん 文Ⅲ・2年 通信教育を利用。高2の夏から英語・数学、高3で英語・数学・国語・世界史・日本史を受講した。
自分の性格、合格実績、自習室を考慮
──学校と外部教育機関のどちらに重点を置いて勉強していましたか
Y(予備校) 通っていた高校では受験に向けての指導があまりされませんでしたが、塾の授業をベースにしていたわけでもありません。毎日塾の自習室に通って、自力で勉強していました。
S(映像) 東大合格者が年に1〜2人程度の和歌山県の公立高校出身なのですが、好きな先生が多かったこともあり「内職」はせず真面目に授業を聞いていました。予備校は夜遅くまで使える自習室としても利用していました。
M(通信教育) 東京の中高一貫校に通っており、授業は比較的ちゃんと聞いていた方だと思います。学校で知識や基礎を学んで通信教育で記述力を身に付ける、と使い分けていました。ただ、数学は高3では学校で受講していなかったのもあり、通信教育をメインに利用するなどと教科によっても分けていました。
──利用していた外部教育機関を選んだ理由を教えてください
Y(予備校) サボり癖があったので、映像授業では真面目に受けられないと考えて対面授業を選びました。自習室の収容人数が多くきれいだったので、集中して快適に自習ができる環境だと思い、通うことにしました。兄や友人が通っていたことも決め手になりました。
S(映像) 近くに対面授業が受けられる大手の予備校がなく、映像授業を受けられる二つの予備校で迷って東大合格者が多かった方に決めました。
M(通信教育) 映像授業や予備校講義のように講師からの一方的な知識伝達が中心になる形式よりも、問題を解いた後に模範解答や添削された答案を見て弱点を自分で分析し補強する方が性に合っていると思ったので選びました。あまり体力がないので、夜遅くまで塾に通うより家で勉強した方が良いと思ったのも理由の一つです。
実際、どうだった?
──利用していた外部教育機関が提供するサービスの利点は何ですか
Y(予備校) 自習室の使い勝手が良かったことです。新型コロナウイルスの影響で図書館が開いていないこともあったので9時から21時まで開いているのには助けられました。個人ブースに加え友人と集まって勉強できる場所、大きな机を自分一人で使える場所、コーヒーを飲みながら勉強できるカフェのような場所もあり、毎日使い分けることができました。居心地が良く部活に打ち込みながらも自習室に通う習慣をつけられました。対面授業の予備校のメリットは、好きな先生を見つけて直接質問したり相談したりできるところだと思います。私は高3のときに初めて親身になって応援してくれる先生に出会うことができ、受験前々日の夜には記述の答案を持って行って添削してもらいました。
S(映像) 同じ高校で東大を受ける人がいなかったのですが、予備校には東大を目指している人がいたので良かったです。チューターとその人が受け持っている生徒数人で勉強の進捗などを確認する会が週に1回あり、自分の状況を話す機会を与えられたのでメンタル面では助けられました。映像授業のメリットは、いつでも巻き戻して視聴できるところです。対面授業と違ってこま数も制限されないので、短時間で学力を身に付けるのに適したツールだと思います。
M(通信教育) 体力や時間を余計に取られないところです。書いた答案を添削してもらうのがメインなので、記述力を上げるという点では効率が良かったです。私自身は首都圏に住んでいるので周りに塾がないという状況ではありませんでしたが、どこに住んでいても届けてもらえるので機会が平等なのも一つの特徴かなと思います。学習内容に関する質問や受験勉強についての相談ができるシステムも整備されていました。
──利用していた外部教育機関が提供するサービスの欠点は何ですか
Y(予備校) レベルの高い授業は全て志望校別になっているところです。私は高3の夏に志望校を京都大学から東大に変えたことに伴い受ける授業も京大コースから東大コースに変更したのですが、出題形式や傾向が全く違うため、それまでに京都大学対策の授業に掛けたお金や時間が無駄になってしまったと感じました。
S(映像) 授業料が高かったところです。本当は高1のうちから、たくさんの教科の授業を受講したかったのですが、親との相談の結果高3から教科も絞って受講せざるを得ませんでした。
M(通信教育) 強い意志があって自己管理ができる人でないと溜めてしまいがちなところです。できない人は何らかの工夫が必要になると思います。また、塾の授業内での小テストのようなものもないので、単純な暗記の知識は自分で学ばなければなりません。人によっては自習室がないこともデメリットになると思います。
自分に合った選択で、後悔のない受験勉強を
──塾・予備校選びに際して意識すべき点は何ですか
Y(予備校) 自分に合うかどうかだと思います。合否は結局自分の勉強次第なので、自分が一番頑張れる環境を選んでほしいです。
S(映像) 「この予備校で大丈夫かな」と悩んだり後悔したりするのが一番無駄なので「ここなら絶対に受かる」とビビッと来たところを選ぶのが大切です。
M(通信教育) 自分の性格、環境、使える時間や体力、お金などを総合して自分に合ったところを選ぶということに尽きると思います。
──受験生への応援メッセージをお願いします
Y(予備校) 私は東大を受験すると決めてから受験までの期間が短く、緊張のあまりつらくなることもありましたが、やるかやらないかで迷う暇もなく決めたことを無心で毎日こなしていました。感情的にならず、淡々とやるべきことをやるのみです。頑張ってください。
S(映像) 東大に行くのは天才だけだと思ったり、模試の結果に不安になったりするかもしれません。しかし、東大に来てから出会った人の大部分は普通の人だと感じました。模試の結果が悪くても、自分で分析して次につなげれば大丈夫です。誰でも不安にはなりますが、その中で勉強できるかどうかが合否を分けると思います。勉強をやめないで頑張ってください。
M(通信教育) 東大に受かる人は1年に3000人もいるので、絶対に無理に思えても意外と何とかなるかもしれない、という気持ちで臨んでください。どうせ受かるなら、例えば教材を溜めてしまったなどの後悔を残さず、決めたことをしっかりやり切った達成感と自分の努力で受かったという実感が得られるような、合格後に誇れる受験勉強をしてほしいです。