大学受験は悩みが尽きないもの。どうせ誰かに相談するなら、その道のプロにアドバイスをもらいたい! そんな受験生や保護者などからお悩みを募集し、東大生や東大の教員などに話を聞く連載企画「受験なんでも相談室」。今回扱うのは「英語」に関する質問。話を聞いたのは、東大入試を中心とした大学入試研究を行う「東大入試研究会」のメンバー、村山裕和さん(工・3年)と綾野拓全さん(理Ⅱ・2年)。グローバル化がますます進む現代日本では、英語は単に受験科目として重要であるのみならず、アカデミアや社会で生きていく上でも必須のスキルであることは論をまたない。来るべき秋に向けてラストスパートをかけたい受験生や、英語が苦手でなんとか成績を伸ばしたい中高生必見のインタビューだ。(取材・近藤拓夢)
今回の質問
・英語の長文を速く読めるようになるにはどうすればいいですか。(高校生(2年生以下))
・英単語を覚える時、綴りが長いものだとその発音を覚えるのに精一杯で意味と結び付けられません。覚えるコツなどありましたら教えて頂けると有り難いです。(高校生(2年生以下))
速読は、文法理解・英文解釈にこだわろう
村山さん(以下、村) 私は最初、英文解釈自体をそもそも知りませんでした。しかし、英文和訳の際にきちんと英文の構文を取る練習をすることで、英文を読むということがどういうことか分かりました。学校の授業に加えて予備校や参考書などで英文解釈の技術を補強して、自力で英文の構造を理解できるようになる必要があると思います。また、和訳では英単語を一対一対応で直訳的に解答を作成するのではなく、自然な日本語に訳すという努力を怠らないことも大事です。模範解答の表現を吸収するがごとく、何回も解答を書いて練習して、きれいな日本語表現にこだわりましょう。
綾野さん(以下、綾) 私は学校のテキストを使って文法力や長文読解力を養いました。村山さんと同様、英文解釈には気を付けました。学校の授業では、文脈や感覚による判断に基づいた長文読解の指導をされることもあるかもしれませんが、私は文法にのっとった読解を心掛けました。英語において重要なのはまず文法で、単語や文脈などは二の次だと思います。英文を速く読むための方法については、速く読む前に、ゆっくりでもいいので正確に読めていけなければならないということを指摘したいです。英文を正確に読むためには、文法を正しく理解する必要があります。読解速度は、文法をしっかりと押さえていれば自然と速くなるものだと思います。文法などを軽視して、分かっていない文章を速読しようとするとかえって内容をつかみきれず、読解の遅さにつながるのではないかと思います。
村 例えば関係詞の係る場所を詳しく考えるなど、構文把握や英文解釈をしていると、どうしても読解のスピードは遅くなりがちです。しかし、それを不安に思ってはいけません。あやふやで、誤読の多い状態で英文を多読しても、それはもはや英文読解とは言えません。英文解釈のトレーニングを積むことで、考えるべき箇所の取捨選択や思考プロセスの自動化を自然とできるようになり、その結果コンパクトな英文読解が可能になります。また国語的な読解も重要でしょう。構文や単語だけではなく、筆者の主張や内容の整理をも理解し、頭の中で整理する必要があります。
単語暗記は「語感記憶」と「周辺的知識」で効率性を求めよ
村 私は『鉄緑会東大英単語熟語 鉄壁』(KADOKAWA)の確認テストを利用していました。また、順番やページ数などの非本質的な情報で英単語を覚えることのないように、最後のページから逆向きに英単語を覚えることもしました。
綾 単語を単体で覚えるより、例文の中で単語を意味も併せて記憶したり、発音を併せて覚えたりというように、周辺的情報も一緒に記憶することで処理水準が上がり、英単語がより身に付きやすくなると思います。また周辺的知識として、語源と関連させて英単語を覚えることもある程度効果的でしょう。
村 長い英単語は、接頭辞や接尾辞などのパーツに分けることができる場合も多いので、それらを活用して意味を覚えていくことも良いと思います。さらに、書いたり聞いたり音読したりすることで「語感」を記憶して覚える工夫をしてみましょう。語源で英単語を覚える方法も良いとは思いますが、その方法だけだと逆に覚えづらい単語などもあり、限界があるかもしれません。
入試内容は変わっても、学習の本質は変わらない
綾 (大学入試に対する変革の風潮がある中で)変革に対するサポートが不十分な地域があるのではないかという懸念があります。またその結果として、予備校や教育サービスの有無や質、家庭の経済力といった要素がこれまで以上に学力に影響する可能性もあります。リスニングやスピーキングといった英語能力も確かに重要だとは思いますが、読めないものを聞いたり話したりすることはできません。大学側も英会話ができる人材だけを欲しているのではなく、アカデミックな文脈で英語を活用できる力を重視しているのだと思います。変革を進めていくならば、受験が「身の丈に合った」ものにならないよう、慎重な姿勢が求められるでしょう。また受験生のみなさんは、目先の形式の変化に過剰反応することなく、従来通りの姿勢で外国語学習を続けましょう。
村 共通テストにおける出題内容の一変や一部大学の入試における民間試験導入に際して、取り組むべき勉強の内容は多少変化したかなと思います。しかし国公立大学の二次試験に関しては、難化しつつあるものの、基本的な学習姿勢を変える必要はないでしょう。