東大の学習管理システム「ITC-LMS」と学務システム「UTAS」。ITC-LMSは今年から新システムに移行したが、ITC-LMSが新システムに移行したことはおろか、二つのシステムの機能の違い、並立する理由が分からず混乱する人も多いだろう。ITC-LMSを管轄する情報基盤センターと、UTASを管轄する学務課に取材した。(取材・中井健太)
異なる管理主体
ITC-LMSは情報基盤センター学習管理システム(Information Technology Center Learning Management System)の略だ。資料の共有など教育活動の支援に加え、学生、教職員を含めた東大の全構成員を対象とした情報セキュリティ教育の基盤としても利用されている。
2014年3月に運用を開始、前期教養課程の科目、履修者情報の登録を開始した旧ITC-LMSは、15年に全ての学部・大学院の科目、履修者情報を登録。17年には情報セキュリティ教育の提供を開始し、現在のシステムと同程度の機能を備えるようになった。
UTAS(UTokyo Academic affairs System)は、東大の独自の学務システムだ。前身である前期教養課程の「UTask-Web」と後期課程・大学院の「UT-mate」を統合し、17年から現行システムとして運用されている。
情報基盤センターのITC-LMSの運営担当者によれば、ITC-LMSとUTASの主な違いは、利用期間・目的だという。「UTASの重要な役割は成績を含めたあらゆる学籍情報を、卒業後の成績証明などに備えて数十年のスパンで蓄積することです。一方ITC-LMSはタームやセメスター中、教員と履修者のデータのやりとりを支援するのが主な目的です」
お気に入り登録した科目情報の共有など、UTASとの連携を強化したいと思っても、それぞれの管理主体となる組織や、実際にシステムの管理を外注している企業が異なり、容易でないのが現実だという。ただ、学務システムと学習管理システムが分かれているのは、他大学でも見られる事例だとした。
学習データを活用
新システムに移行したITC-LMSだが、基本的にはこれまでのシステムの機能を踏襲している。既存の機能を強化した点としては、アップロードしたレポートなどのファイルをプレビューできるようになった点や、LINEへの更新通知を送れるようになった点がある。
それ以外に機能の強化が図られたのは教育学習データの活用だ。導入から時間がたち、東大でITC-LMSの利用者が増加、相当に普及したことで、より大量のデータが蓄積されるようになった。そこで、ITC-LMS上での学生の操作を記録するLRS(Learning Record Store)というシステムを導入し、教育支援用の外部のシステムやツールなどと連携するための標準規格にも準拠したという。
授業で利用し始めたのは今年の4月から。ITC-LMS担当によれば、まだ解消できていない不具合もあるが、運用上致命的な不具合は存在しないという。