「こんな製品やサービスが、あったらいいな」「起業して、社長になれたらいいな」といった、漠然とした希望を抱いている人は少なくないかもしれない。しかし、それがどのようにして「こんな製品やサービスをつくろう」「起業しよう」といった、具体的な決意に変わるのだろう。東大生時代に起業に挑戦し、現在も活躍する2人に、漠然とした希望が具体的な起業の決意に至る過程や、東大生へのメッセージを聞いた。(構成・小原優輝)
アイデミー 企業の変革をサポート
2014年設立。「先端技術を、経済実装する。」を掲げ、AIやDX(デジタルトランスフォーメーション)に関する教育・研修と、その内製化を支援するサービスを提供する。
興味をもったきっかけ
小さい頃から絵を描いたり工作をしたりするのが好きで、パソコンを自由に触らせてもらっていたので、プログラミングやウェブサービスの作成に興味を持っていました。中2の時に自分でホームページを作って公開していました。
また、中学生や高校生のころ、親の協力を得てYahoo!オークション(当時、現ヤフオク)でモノの売買に実際に触れた経験が、小規模ながらもビジネスを自分で作ったという成功の原体験になっています。そのころから漠然と起業に興味がありました。
前期教養課程での活動
大学1〜2年次は、友人に影響されKINGというビジネスコンテスト運営サークルに入り、ビジネス8:授業2程度の比率で力を入れ活動に没頭しました。また「東京大学×博報堂ブランドデザインスタジオ」などの授業から、ビジネスアイデアや企業の見方などの実践的な知識を得ることができました。
もし起業をするならソフトウェア分野だな、と思っていました。
教員になりたいという気持ちもあり文IIIで入学したのですが、技術を学んで起業したいと思い、理転して工学部都市工学科に入りました。文系で入学しても理系学部に進学できるのは東大の良いところだと思いますね。
起業へ
大学3年次の5月にビジネスコンテストで優勝し、早く社会に出たいという思いが抑えられなくなり起業しました。周囲に起業をしたいと思っている仲間が多く、ハードルを高く感じにくかったということもあります。
最初は全く違う事業を行っていましたが、AIやデジタル技術などについては先輩や教員でも詳しい方が少なく、学ぶハードルが高かったのを問題だと学部時代に感じたことが一因で、17年8月に現在の、AIやDX(デジタルトランスフォーメーション)について学ぶ場を提供するサービスを運営し始めました。社会のニーズが高く、事業開始間もなく売り上げも伸びました。
経営での困難
起業してから最初の3年間は、事業を起こしては失敗し、停止する、ということを繰り返していました。現在のデジタル人材育成事業は5、6個目です。
事業を開始する瞬間には当然、失敗するとは思っておらず「これで世界を変えるんだ」という意気込みでやっていましたし、仲間も私のために貴重な時間を割いて協力してくれているので、事業が失敗して停止する瞬間はつらいです。ですが、一つのサービスに固執せずにいろいろな事業に挑戦する中で、より初速の付きそうなサービスを選べたという面もあるので、結果的に失敗して良かったのかなと思います。
東大での起業支援
書類や手続きなど、具体的な起業の方法については、起業をした先輩に聞いて学びました。契約書を作るとき、起業などを学ぶプログラム「東京大学アントレプレナー道場」を運営している職員の方に相談をしたり、無料の添削を受けたりしていました。
今では、私が起業した当時よりも支援は増えていて、例えば東大を含めた国立大学数校が共催する、設立3年以内のベンチャーの資金調達の支援などを行う1stRound というプログラムをはじめ、さまざまな機会があります。もし私が今学生だったら、こういったものを使うでしょうね。
学生へのメッセージ
1年休学して留学をするというのはよくある話ですが、同じように起業に挑戦する選択肢も広がっていいと思います。借金をしない起業の形もたくさんあります。仮にうまくいかなくても就活というセーフティネットも残されていますし、面接時に自身の経験として語ることもできます。
起業して失敗するより、起業しなくて後悔する方がつらいと思います。社会人になって年収が安定してきたり、結婚して子供を持ったりすると、起業に踏み切りづらくなる可能性もあります。起業するなら学生のうちにすることを強くおすすめします。
【前編】
【前編】「あったらいいな」が「起業しよう」になるまで 東大卒起業家2人にインタビュー WOTA・前田瑶介さん「目的を見つける大学生活を」
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