東大は、2018年に学部生を対象に実施した学生生活実態調査の結果を昨年12月1日付で公表した。今回の調査では従来の日本人学部生・国内に生活拠点を持つ外国籍学生への調査に加えて、東大の学部に留学している学生向けの調査を初めて実施。学部留学生の生活の特徴が浮かび上がるとともに、日本人学部生の学生生活との違いが明らかになった。
18年の調査から開始された「留学生生活実態調査」では、多くの質問項目が日本人学生・国内に生活拠点を持つ外国籍学生向けの調査(基本調査)と共通するが、留学生向け独自の項目も設けられた。独自項目では留学生の生活実態把握のために必要な内容を扱っている。
留学生向け調査の対象となったのは、交換留学などではない正規留学の学部生のみ。対象者数は東大に在籍する留学生全体の約8.5%に当たる286人で、回答したのは100人(回答率35.0%)だった。なお、基本調査の対象者は3359人、うち35.5%に当たる1194人が回答した。
基本調査と留学生向け調査の比較から、調査を行った学生委員会学生生活調査WG(WG)は学部留学生の主な特徴として①学業をその他の活動よりも優先する②多くが入学時に後期課程での専攻を決めている③親や同国人以外の相談相手が不在で、インターネットを長時間利用する傾向がある④学内の相談施設などの認知度や利用頻度が高く、要望も多い⑤生活費を切り詰める可能性がある の5点を挙げている。
①について、基本調査に回答した学生のうち「アルバイト・仕事」「サークル・クラブ活動」に費やす時間については、週に「1〜5時間」と答えた人がそれぞれ31.8%、30.2%で最も多かった(図1)。一方「授業とは関係のない学修」を週に1時間も行わない人は33.7%だった。これについてWGは「学習時間の絶対量が少ないのではないか」と評している。対して、留学生が「アルバイト・仕事」「サークル・クラブ活動」に費やす時間については、週に「0時間」と答えた人がそれぞれ42.0%、44.0%で最も多かった。「授業とは関係のない学修」に費やす時間を「0時間」と答えた人は17.0%だった。
③については、不安や悩みを感じたときの相談先として父・母に「よく相談する」「時々相談する」と回答した学生は、基本調査では合計44.0%だった一方、留学生向けの調査では合計64.4%と約20ポイントの違いがあった(図2)。留学生からの回答では父・母の他「大学内学科研究室同国人友人」や「学外同国人」への相談が比較的多かった。
学生生活実態調査は毎年1回行われ、今回で68回目となる。08年の調査から学部生と大学院生が毎年交互に調査対象となっている。
この記事は2020年2月11日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。
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