知的財産をめぐるグローバルな競争が激しくなるなか、知的財産をめぐる国際的な交渉術について、日本で体系的な教育が行われていないことが問題視されてきた。
東京大学ソーシャルICTグローバル・クリエイティブリーダー育成プログラム(GCLプログラム)は、「ロールプレイ形式で学ぶ知財戦略と実践交渉:共同開発編1」と題した講義を4月27日に行った。学生が実践的に知的財産のネゴシエーション(交渉術)を学ぶ機会を提供し、交渉の基礎を身につけた人材を育てることを目的としている。
その背景にあるのは、日本の知財ネゴシエーション教育の遅れだ。特許に関する交渉が世界的に増加し、高額の特許売買や、特許をめぐる訴訟が増えているなかで、グローバルな汎用性を持つ知財ネゴシエーション教育が必要とされている。
講義では、東京大学政策ビジョン研究センターの二又俊⽂さん(客員研究員)と、インフォート国際特許事務所の木村晋朗さん(弁理士)が、知的財産にまつわるネゴシエーションの必要性や、それを理系の学生が学ぶことの意義を説明し、交渉のテーブルでの注意点や、交渉を円滑にすすめるための基礎知識について語った。その後、学生が2つのグループに分かれて実践的な交渉のロールプレイを行った。
ロールプレイは、架空の日本企業がヨーロッパの企業と共同開発した製品について、発売時期の調整のためにドイツのミュンヘンを訪れるという設定で行われ、学生が2つの会社の役割を演じて交渉を行った。学生は共同開発の背景と、担当した会社の状況だけを読み、相手の状況を知らないまま交渉にあたった。多くの学生が、相手方の出す予想外の情報に、妥協点を見つけることを難しく感じていたようだ。
学生のロールプレイを見て、二又さんは、
・正直過ぎる応対をせずに相手が出した情報の分だけを答えること
・相手の事情をていねいに聞き、それをふまえて事前に考えていたシナリオを活用すること
・小さな合意を積み重ねていくこと
などをアドバイスした。
参加した教育学研究科修士2年の学生は、「情報が限られているなかで、自社の優先順位と相手方の優先順位とを考慮して合意点を見つけるのが難しかった」と語った。
(取材・文 須田英太郎)
この記事はGCLプログラムとの共同企画です。
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