外部の人にとっては想像がつきにくい、大学院。漠然と進学を考えている学部生や、他大学から受験を考えている人も多いだろう。東大の大学院に通う学生たちは、何を学び、どのような日々を送っているのか。4人の大学院生に、大学院での生活や学習・研究、大学院入試対策について話を聞いた。(構成・松崎文香、取材・上田朔、清水央太郎、新内智之、松崎文香)
*取材に基づく試験内容は今後実施されるものと異なる場合があります。
院試対策スケジュール
Q1. 最も力を入れた院試対策は?
A. 授業資料の振り返りです。(工学系研究科・平田さん)
A. 研究計画書を書くときには頑張ってたくさん論文を読みました。(理学系研究科・仲里さん)
Q2. 自分に合うゼミ・研究室の選び方は?
A. 教員や研究室・サークルの先輩など、自分より経験を積んでいる人たちに相談するのが良いと思います。(工学系研究科・平田さん)
A. 研究内容だけでなく、教員の教育方針も自分に合っているかどうかも重視しました。(理学系研究科・仲里さん)
Q3. 学習・研究で楽しい瞬間は?
A. それまでの学習・研究などで得たさまざまな情報が頭の中でつながる瞬間です。(工学系研究科・平田さん)
A. 人と議論した後。(理学系研究科・仲里さん)
Q4. 奨学金・バイトなど経済面について
A. TAなど、専門性を生かしたアルバイトをしています。(工学系研究科・平田さん)
A. 学術振興会特別研究員(DC1)の研究奨励金に加えて、TAなどをしています。(理学系研究科・仲里さん)
工学系研究科 都市工学専攻
学部時代は東大工学部都市工学科で、水処理や大気汚染、廃棄物処理など、生活に関する環境問題全般を学びました。卒論では資源循環をテーマに、使い捨てプラスチックを日本国内でどれだけ減らすことができるかを研究しました。
院進を決めたのは、4年次に上がる直前の春休みです。元々漠然と進学を考えていましたが、春休みに企業の説明会に参加する中で、社会人の方から「専門性を生かした仕事がしたいなら大学院に行ったほうが良い」とアドバイスされ、進学を決めました。現在も学部と同じ研究室で、植物由来のものやリサイクルされたもので、原油から作るプラスチックをどれだけ代替できるかを研究しています。答えが出ない問題に取り組むのは大変ですが、その大変さを楽しめています。
学部時代からの大きな変化は、自分の興味関心に基づいて主体的・能動的に学ぶようになったことです。学部生の時は、学科で用意された授業に沿って知識を付ける、受け身の学習をしていました。研究も指導教員がある程度レールを引いてくれましたが、大学院ではいろいろと寄り道をしながら、自分で「何を学ぶべきか」を考えて学んだり、参考になりそうな先行研究を探したりして、自らの研究に生かすことが求められます。自分の興味関心を突き詰め、専門性を深められるのは大学院の魅力ですね。修了後はシンクタンクで、プラスチックの資源循環に関する業務に携わる予定です。
理学系研究科 物理学専攻
宇宙の研究を志して東大理学部物理学科に進学しました。現在の指導教員である吉田直紀教授(東大大学院理学系研究科)との出会いは学部2年次に受けた物理数学の授業です。授業の最後に吉田先生が「いつでも研究室見学に来てね!」とおっしゃったので即メールを送りました。学部4年次には吉田研卒業生の方の指導を受けて初期宇宙のシミュレーション研究を行いました。
私が院試を受けた年は、パンデミックの影響で物理学専攻では筆記試験が実施されませんでした。研究計画書を提出する必要がありましたが、こちらもどう対策すればいいのか分からず……。ただし、学部生の頃から研究を見据えて勉強していたことはプラスになったと思います。
大学院入学後は先輩方の熱量に圧倒され、自分もピッチを上げて研究を進めました。最初の研究は修士1年次に論文になったのですが、同時期にジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が打ち上げられました。望遠鏡で直接見える銀河は、それまで研究していた初代星よりずっと後に形成された天体です。私自身銀河に関する基礎知識が全然なかったのですが、吉田先生の勧めもあって修士2年次からは観測チームに加わって銀河の研究を行っています。
卒業後の進路は未定ですが、海外で研究したい気持ちもあります。学術振興会の若手研究者海外挑戦プログラムなども活用して将来を見据えた場所に行ってみるべきなのかな、と考えているところです。
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