「東大生の勉強法」「東大生のノート術」。「東大」を枕ことばにした教育書を書店で見つけるのは容易だ。しかし東大生は1学年3000人。勉強法も生育環境も個人差があってしかるべきだろう。それでも互いの話をすれば、違う中にも共通点が見えてくるのでは?東大生4人の座談会から見えてきた、育ちの共通項を掘り下げていく。(構成・清水央太郎)
参加者
堀(経・3年)
幼稚園の頃に宇宙図鑑を愛読
条(経・4年)
1歳半でかな文字の概念を理解
広(養・4年)
保育園・学童保育所の蔵書を読破
井(養・4年)
自由帳に素数や旧国名をお絵描き
オープニング
条:というわけで本日は、無事に教育の失敗作になり損ねた皆さんにお越しいただきました!
堀:すごい始まり方ですね。
条:まあ、君たちのご両親はさぞ鼻が高いことでしょうけれども。
広:なんで自分を除いたの(笑)?
井:何はともあれ、みんなの幼少期の話はすごく興味あるわ。
公園の遊具で遊んでいるようじゃ東大は厳しい!?
条:まずはみんなの就学前のエピソードが知りたいね。
井:どうやら僕は公園に行っても遊具で遊ばず、砂場でお絵描きをするのが好きな子どもだったらしい。
条:それ分かる!俺も遊具アンチで、公園の入り口で棒立ちするキッズったらしいわ。
広:私も遊具ではあまり遊ばなかったな。砂場じゃなくて、木から松やにを取るのが好きだったらしい。
井:そんな幼少期エピソードは初めて聞いたかも(笑)。
条:やっぱり幼少期に才能の片りんが見えるのは、公園と家の寝室だと思うんだよね。堀君は公園でどんな才能を見せていたの?
堀:皆さんが特殊すぎるだけで子供は普通、遊具で遊ぶんですよ(笑)。僕はブランコが好きでしたし。
条:確かに(笑)。でも遊具で遊ばなかった人がこんなに多いのは意外だね。「遊具で遊んでいるようじゃ東大合格は厳しい説」あるかも。
井:さすがにそんなことはないと思うけどね(笑)。
「大人になっても記憶に残る」 図鑑と絵本
条:じゃあ次はアウトドアじゃなくてインドアの話に移りたいんだけど。
井:キャラの図鑑を暗記するのは好きだったみたい。アンパンマンとかのキャラを覚えるのにハマってた。もう少し大きくなった後は都道府県の特産品を覚えるのも好きだったかな。
堀:僕の家にもアンパンマン図鑑がありました。
条:なるほどね(笑)。俺の家にもキャラもの含め図鑑は多かったわ。でも日本人としては珍しく、アンパンマンが嫌いだったんだよね。病院とか幼稚園で泣き出した時に、大人が良かれと思って渡したアンパンマンのおもちゃを見て、さらに泣くことが何回もあったらしい(笑)。
一同:ええ……。
広:そんな子供が存在するんだ(笑)。
堀:やっぱり図鑑は文字情報だけじゃなくて、絵や写真が豊富でイメージしやすいのが大きいですよね。
井:そうだね。今の暗記力の素地は、図鑑でキャラクターとかの情報を覚えたことでできたのかもな、と思う。
広:図鑑より絵本派だったかな。園庭で遊ぶ時間にも1人で絵本を読んでるくらい大好きだった。『おしいれのぼうけん』(童心社)が怖かったなあ。
古田足日・田端精一『おしいれのぼうけん』童心社、税抜き 1300 円
堀:僕も毎晩のように読み聞かせしてもらっていました。『はらぺこあおむし』(偕成社)が好きでしたね。
条:俺は『かじだ、しゅつどう』(福音館書店)が大好きだったな。絵本って名作多いよね。俺は最近の子育て事情をあまり知らないんだけど、もしネットの普及で絵本に触れる機会が減っているとしたらちょっと悲しいかも。
井:僕はあんまり絵本の記憶がないかな。幼少期に絵本に触れることで身に付いたと思うことは何かある?
条:個人的には絵本を直接読むんじゃなくて耳で聞くことで「情景を思い浮かべる」能力が身に付いた気がする。この能力がないと、成長してから小説とか楽しめなくなっちゃうと思うわ。
広:1人で読む時はそうだけど、読み聞かせで情景を思い浮かべていた記憶はむしろないな。昔話を混ぜた即興話をしてもらって、ひたすら笑っていた記憶。もっと面白い話をせがむと「全身白い犬がいました、尾も白い」で終了だったけど。内容が何でも「小さい頃に枕元でお話をしてもらった」って記憶自体に意味があると思うよ。
エリック・カール『はらぺこあおむし』偕成社 税抜き1200 円
編集部員たちは新聞を読んでいたのか
井:われわれは「東京大学新聞社」ということで新聞に携わっているわけじゃん?みんなやっぱ新聞を読んでた?
堀:朝日小学生新聞を取ってました。
広:全く同じだ(笑)。
条:俺は小2から、小学生新聞じゃなくて一般紙の朝日新聞を読んでた。共働き家庭だったから下校後は祖父宅にいたんだけど、娯楽があんまりなくて。祖母の勧めで新聞を読み始めたんだよね。最初は4コマ漫画から始めて、スポーツ面とか社会面とか徐々に読める記事が増えてった。
堀:やっぱり朝日新聞が多めですね。
条:ちなみに井君の住んでいた長野県は何新聞が強いの?
井:皆さんご存知、長野のニューヨークタイムズこと信濃毎日新聞ですね。
堀:初めて聞きましたけど(笑)。
「制限の抜け道探しが子供を成長させる」 ゲーム機、タブレットとの付き合い方
条:最後に気になるのはゲームやタブレット端末の時間制限だね。ここは気になってる親御さんも多いと思うんだけど、みんなの家庭はどんな感じだった?
広:ゲーム機は買ってもらわなかったな。放課後は学校から学童保育所に直行だったから、欲しいと感じるタイミングがなかったんだと思う。
堀:受験をしたので、僕も小学生の時はゲームする時間がなかったですね。
井:中学受験してない家庭からすると想像できなすぎる……。僕はもちろんゲームしてたけど、長時間やり過ぎると注意される程度で特に制限された記憶はないかな。
条:うちは「ゲームは1日30 分まで」だったから、親の目をどうごまかすかばっかり考えてたね。友達と外でやれば制限から逃げられるから、遊ぶ予定入れまくったり親が寝た後にこっそりやったりとか。
広:確かに、弟はゲームの時間を制限されてたな。
条:弟は買ってもらえてたんだ(笑)。
広:親を出し抜くことで言うと、小6でパソコンを買ってもらった時、指の動きを盗み見てパスワードを推理してた。
堀:僕もiPadを持っていたんですけど、全く同じ手段を使ってました。
条:何か制限をかけられた時に「それを突破する方法」を考える時が一番頭を使うよね。
堀:分かります。
井:今日はみんなのバックグラウンドが分かってすごく面白かった。意外な共通点が結構あったね。
条:下宿先だとあまり親と連絡を取ることがなかったけど、今夜は久しぶりに電話しようかな。感謝しかないし。
一同:間違いない。
この記事は昨夏弊社発行の東大受験本『東大を選ぶ2024 東大未来』から一部編集して転載したものです。今夏発行の『東大を選ぶ2025 もがけ東大』では、紅白出場歌手のキタニタツヤさんへのインタビューなどを掲載。迷いや葛藤にも迫った記事の数々に乞うご期待!
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