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2021年9月15日

イグ・ノーベル賞 東大から2人受賞 「歩きスマホ」実験で歩行者の流れを研究

 人を笑わせ、考えさせた業績に対して贈られる賞「イグ・ノーベル賞」の授賞式が9月9日(日本時間10日)に行われた。「なぜ歩行者が時に他の歩行者とぶつかるのか解明すべく実験を実施した」という功績により、村上久助教(京都工芸繊維大)、東大の西成活裕教授とクラウディオ・フェリシャーニ特任准教授(両者とも先端科学技術研究センター)、西山雄大講師(長岡技術科学大)の4人が動力学賞を受賞した。

 

 受賞のきっかけとなった論文は今年3月18日に米科学誌『サイエンス・アドバンシス』に掲載されたもの。この論文の中で、村上助教らは、歩行において互いに動きを読むことが歩行者の流れに秩序をもたらすことを発見したと報告していた。

 先行研究で、個々の歩行者が未来の他の歩行者の動きに備えて自分の歩行の仕方を変える「予期」を行っていることが強調されてきた。一方、個々の予期が歩行者の流れにどのように影響を与えるかはよく分かっていなかった。

 

 村上助教らは、双方向の歩行者の流れの中で一方向のレーンが自発的に形成されるレーン形成実験を実施。その際、一部の歩行者にいわゆる「歩きスマホ」の状態で課題に取り組ませることで視覚的に彼らの予測能力を阻害したところ、集団全体の歩行速度が低下し、流れが滞った。さらに、歩きスマホをした歩行者のみならず他の歩行者も衝突回避のために急ターンをする場面があった。

 

 この実験は、歩行者間の衝突回避行動が通常は協調的なプロセスで、歩行者間の相互予期が効率的なレーンの形成を促進することを意味する。

 

 本研究で示された群集における相互予期の重要性は集団での意思決定、動物の群れといった他分野に影響を与えることが期待されるだけではなく、大規模イベントや災害時の避難などでの人流制御への応用が期待される。

 

 イグ・ノーベル賞はノーベル賞のパロディとして1991年に設けられた賞で、日本人の受賞は15年連続となる。本年度は、授賞式はオンラインで実施され、賞品として現在は貨幣価値のない10兆ジンバブエドルの偽札と、印刷して組み立てると紙製トロフィーになるpdfのデータが贈られた。

 

 受賞した西成教授は「これからもあらゆる人々にとってスムースな移動が出来る社会に貢献していきたい」、フェリシャーニ特任准教授は「(数ヶ月前に受賞の連絡が来ていたので)黙っているのが大変でしたが、やっと発表され、笑いながら喜びました」とコメントしている。

 

【記事修正】2022年4月14日午後11時7分 「村上助教授らは」は「村上助教らは」 に修正しました。お詫びして訂正します。

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