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2018年11月29日

赤十字国際委員会(ICRC)ロールプレイアジア大会で東大チームが準優勝

 10月6日、マレーシアのクアラルンプールにあるマレーシア国民大学において、赤十字国際委員会(ICRC)主催の国際人道法(International Humanitarian Law: IHL)ロールプレイアジア大会が開催された。このロールプレイコンテストでは3人1組で構成されるチームに分かれ、武力紛争下における様々な架空の状況のもとでICRCの代表者や軍や武装勢力のアドバイザー、人道支援団体や国連職員などの与えられた役割に基づいて、IHLの知識を活かしながら議論や交渉などのロールプレイを行う。また、マレーシア地域大会の優勝チームには、IHL模擬裁判の世界大会であるジャン・ピクテ(Jean-Pictet)大会への参加に向け、ICRCによるサポートや、ICRC地域事務所でのインターンシップの機会などが提供される。

 

 IHLは日本ではあまり知られていないが、紛争時に各主体が守るべき国際法だ。ここでは、戦闘時においても保護されるべき対象や、使用してはならない武器などが規定されており、その一部は慣習法としても機能している。ロールプレイ大会では、IHLの知識を基礎として、架空の紛争状況をシミュレーションとして扱い、参加者が様々な主体を演じることでIHLが実際にどのように適用されているのかを理解することができる。

 

 この大会には、マレーシア、シンガポール、インドネシア、日本など、各国の予選を勝ち抜いた8チームが参加した。会場は各国チームとも和気藹々(わきあいあい)としており、参加者相互のコミュニケーションも積極的に行われていた。

 

大会ラウンド2での東京大学チーム

 

 大会は大きく2ラウンドに分かれている。第1ラウンドでは二つのシミュレーションが行われ、その評価でファイナルに進む2チームが選抜される。今年の第1ラウンドでのシミュレーションはどちらもICRCに関わるもので、一つはICRCの代表者として政府により爆撃された地域での情報収集を行うもの、もう一つはICRCや現地の赤十字機構の代表者として記者会見を行うというものだった。ファイナルでのシミュレーションは武装組織における作戦会議の形をとり、IHLの視点から作戦の提言を行うものだった。どのシミュレーションでも専門的な知識ではなく原理原則への理解とその現実の状況への適用が問われることになる。審査員を務めるのはICRCの職員や国際法の専門家であり、彼らがロールプレイの相手方も演じる。例えば、情報収集であれば軍人や被害にあった人々など、記者会見であれば記者役を審査員が演じた。実際に業務に従事している職員の演技は真に迫っており、ついつい気圧されてしまう。しかし、審査員自身もこのロールプレイを楽しんでいることがよく伝わってきた。参加者全員が楽しみつつ、真摯にロールプレイに取り組む姿は印象的だった。

 

大会の決勝、向かって左側が東京大学チーム、向かって右側がシンガポール国立大学チーム

 

 東大からは辻村優毅さん(文Ⅰ・2年)、倉島さらさん(文Ⅲ・2年)、童菲さん(文Ⅰ・1年)がチームを作り、国際法のキハラハント愛准教授(総合文化研究科)のコーチのもと、短期間に国際人道法の知識とロールプレイの練習に励んだ。初めての出場で分からないことも多かったが、第1ラウンド、第2ラウンドで与えられた役を演じきり、決勝ラウンドに進むことができた。決勝では惜しくもシンガポール国立大学のチームに負けてしまったが、3人がそれぞれの役を演じながら力を合わせてチームとして機能していたという点を高く評価したと、大会後に審査員長から言葉をかけられた。来年は日本国内大会も企画されるようだ。東大からもぜひ積極的に参加してほしい。

 

写真右から、辻村優毅さん、倉島さらさん、童菲さん、キハラハント愛教授

 

(寄稿=辻村優毅)

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