国際高等研究所東京カレッジの主催する講演会「小さな国の大きな力 国際関係におけるアイスランドの役割」が24日、本郷キャンパス福武ラーニングシアターで開催された。アイスランドのグドゥニ・トルラシウス・ヨハネソン大統領を講師に迎え、小国論をテーマに今後の世界の在り方への展望を含めた講演とディスカッションが1時間半にわたり行われた。
講演ではまず、同国の近現代史を専門とする歴史学者でもある大統領自らが自国の歴史や概要について簡潔に説明。人口が約35万人と世界的に少ないアイスランドは北大西洋中の島国で、火山による災害に見舞われてきた歴史や国家産業である漁業、文学が盛んであることを紹介した。
講演の後半では学問的見地から国際社会でアイスランドの果たした役割についてジョークを交えながら話す。漁業権を巡る英国との確執を語る場面では、手元のペットボトルや時計を使いながら英国船を撃退したエピソードをコミカルに話し、会場は笑いに包まれた。冷戦中には米ソといった大国に毅然とした態度で臨み、植民地の独立や他の小国を援助した歴史を紹介。自国の歴史を誇らしげに語る大統領の姿に、聴衆は真剣なまなざしで耳を傾けた。
人間の権利や正義を尊重し、対話を模索する姿勢を貫いているところにアイスランドの強さがある。「われわれは、一夜にして世界を変えることはできないが、徐々に正しい方向に向かうことはできる」と大統領はスピーチを締めくくった。講演後は学生らからの質問が相次ぎ、アイスランドの未来や日本の抱える課題、地球温暖化への取り組みなど、多様な分野に関する意見が交わされた。
この記事は2019年10月29日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を公開しています。
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