文部科学省は5日、国立大学法人が2013年度に実施した業務に対する評価を発表し、東大は「濱田純一総長の下で『法人の基本的な目標』に沿って計画的に取り組んでいる」という全体評価を受けた。総合的な学部教育改革や初年次長期自主活動プログラム(FLY Program)の開始などが評価されている。一方で東大が関わる研究不正疑惑などについて、12年度評価に引き続き、再発防止に向けた課題が指摘された。
総長主導の取り組みを評価
全体評価として東大は、濱田純一総長が掲げた将来構想「FOREST2015」を基に総長主導で目標達成に向けて取り組んでいると認められた。「戦略的・意欲的な計画の状況」として、部局別改革プランを策定したことや、来年度から全学部で4ターム制を実施すること、2016年度入試から推薦入試を導入することなどが挙げられている。
「機能強化に向けた取り組み状況」としては、教育改革に向けた経費・総長裁量人員の確保など学内資源配分の最適化が挙げられ、総長主導の取り組みが評価されている。東大は13年度、7億円の総長裁量経費を確保し、総長裁量人員として12人、教育研究分野に36人を新規に配分している。
その他には、国際社会での指導的人材育成を目指し本年度から本格的に始動した「グローバルリーダー育成プログラム(GLP)」や、英語で学位が取得できるコースを拡充していることなどが挙げられた。
英語で学位が取得できるコースとして東大は、12年度秋から「PEAK(教養学部英語コース)」を開始。本年度10月からは理学部で「グローバルサイエンスコース」を開始し、海外の大学で2年以上修めた学生を学部3年生に編入させる仕組みを整えた。本年度は化学科で実施し、授業は全て英語となっている。
運営や財務内容は「順調」
項目別評価で見ると、「業務運営」の部門では「順調」という評価を受けた。評価は5段階で上から「特筆すべき進捗」「順調」「おおむね順調」「やや遅れ」「重要な改善事項がある」。12年度評価では「特筆すべき進捗」とされており、1段階評価を下げた。13年度評価では、評価を受けた全90大学のうち長崎大学のみが「特筆すべき進捗」、84大学は「順調」、残り5大学が「おおむね順調」と評された。
東大はその他の項目で、12年度評価と同じ評価を受けた。「財務内容」は「順調」とされた。12年度評価では、給与・福利厚生費などの一般管理費の比率が法人化以降最も高くなったことが指摘されたが、13年度評価では改善に向けた取り組みが進んでいると評価された。
「自己点検・評価・情報公開など」についても「順調」と評価された。「財務内容」「自己点検・評価・情報公開など」は共に、全90大学が「順調」と評された。
研究不正疑惑など課題も
施設設備・安全管理・法令遵守が含まれる「その他業務」は「やや遅れ」とされ、12年度評価に引き続き数点の課題が挙げられた。
SIGN(慢性骨髄性白血病治療薬)や、アルツハイマー病に関する臨床研究「J―ADNI(ジェイ・アドニ)」の研究不正疑惑が挙げられ、事実確認や再発防止などが課題とされた。
他にも教員が学外で学生の個人情報が記録されたノートパソコンなどを紛失した事例など個人情報の不適切な管理事例が計9件あったと指摘。個人情報保護に関する危機管理の強化が求められた。
国立大学法人評価は大学の質の向上などを目的に、文部科学省の国立大学法人評価委員会が毎年行っているもの。各大学の中期目標・中期計画の進捗状況について、大学側が提出した報告書を基に評価する。評価結果は次の中期目標や中期目標期間での運営交付金の算出に反映される。
この記事は、2014年11月18日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。