日本は3千余りの温泉地を持つ世界屈指の温泉大国だ。しかし時間や距離の問題で、実際に温泉に赴くことがそれほど頻繁でない人も多いだろう。今回は、多種多様な発信活動を通し温泉好きの輪を広げる活動を行う東大温泉サークルOKRの代表の高舘直稀さん(法・3年)と、上山和輝さん(工・3年)に温泉の魅力や楽しみ方を聞いた。
(取材・田中美帆)
五感で気軽に楽しむ
「OKRでは温泉を楽しむため、五感を重んじ体験を鮮明にすることを大切にしています」。例えば、風や湯の音に耳を澄ましたり、肌に触れたお湯の感触を確かめたりする。湯の色や透明度も目で楽しむ要素だ。とはいえ温泉の楽しみ方は十人十色。高舘さんはその温泉を過去に訪れた偉人の資料を見て、過去に思いをはせるという。また、泉質にこだわる上山さんは「鉄成分が多く鉄サビの匂いが強い温泉や、CO2が多くシュワシュワな温泉(炭酸泉)が好きですね」。飲用スペースや湯口に準備されたコップで源泉を飲める温泉を好む人もいる。他にも昔ながらの建築を見たり、風呂上がりに縁側で風を感じたりするなど、自分なりの楽しみ方を発見するのが良いという。
温泉地というと敷居が高く感じる人もいるかもしれないが、身近なところにも温泉はある。都内の銭湯の中には温泉水を使ったところがあるという。東大からアクセスが良い温泉銭湯を2人に紹介してもらった。
六龍鉱泉
根津駅徒歩5分と本郷キャンパスから抜群のアクセス。古風な建物も魅力の一つだ。都内有数の熱湯で、墨汁より少し透明度が高い黒色の湯が名物。銭湯内の壁のタイルには、美しい自然を背景に錦帯橋が描かれている。「ワンコインで入浴可能なため、1人暮らしの東大生に薦めたいです」
高井戸天然温泉 美しの湯
高井戸駅徒歩2分と駒場キャンパスから行きやすい。特徴的なのは琥珀(こはく)色の湯。湯の成分に塩が多いため湯冷めしにくい長所がある。炭酸泉(週替わり)もあり健康に良いだけでなく、水風呂やサウナ(2種類)、地下のリラクゼーションスペースなど、設備が整っている点も魅力だ。
どちらも大学が終わった後、帰宅の前に気軽に寄れる。「カフェやカラオケのノリで、友人と気楽に遊ぶ場としても楽しんでみてください」
気軽に行ける都内の銭湯だけでなく、全国津々浦々の温泉も訪れて魅力をもっと知ってほしいと口をそろえる2人。大きな湯船で安らげることや、美肌効果などの温泉ごとに異なる効能を得られることにとどまらず、温泉には日常から離れ心理的に解放される効果も期待できる。「温泉がある宿も、ない宿と宿泊費は大きく変わりませんし、もっと気軽に温泉に行ってほしいということに尽きます」
湯治で安くのんびり
OKRが温泉の楽しみ方の一つとして挙げるのが湯治。湯治とは、長期間温泉に滞在し療養することを指し、元々は上流階級の人々が行っていた。江戸時代になると、閑散期の農民や漁民も家財一式を宿に持ち込んで、自炊をしつつ長期間滞在したという。「当時の姿を完全に再現することは不可能ですが、長期間の滞在や宿泊者が自炊を行うといった点で現在も湯治のエッセンスを受け継ぐ旅館があります」
湯治を味わえるOKRお薦めの温泉は二つ。近接しているため一緒に楽しむ人も多いという。
大沢温泉(岩手県)
豊沢川沿いの景観が美しく広い露天風呂「大沢の湯」が名物。古くから湯治場として親しまれ、昔ながらの建物からはおもむきが感じられる。「食事時に共同炊事スペースで和気あいあいと自炊を楽しめました」
鉛温泉(岩手県)
同じく自炊を満喫できる。源泉を沸かしたり薄めたりしていない掛け流しの自然のままの温泉が売り。深さ約1・25mの立って入る温泉「白猿の湯」が有名。全身に湯圧がかかることで健康効果があるという。
湯治の魅力は、宿泊者が自炊をしたり布団敷きを自分で行ったりするため、通常の温泉旅行に比べて宿泊費が安価になっていること。お金に余裕のない学生時代に特にお薦めできる。また、2泊以上の連泊が普通なため、1泊2日の忙しない旅に比べて中日もあってゆったりとした時間を過ごせる。「楽しい予定を詰め込み最後はくたくたになりがちな旅行ですが、湯治でのんびり過ごすことで、疲れや病気を癒やす観点から温泉を満喫できます」
OKR厳選 泉質と景観が魅力の温泉
温泉に行こうとしても数ある候補の中から選ぶのは至難の技。そこでOKRお薦めの温泉2選を紹介する。
韮崎旭温泉(山梨県)
少し足を延ばした日帰り温泉として、山梨県の韮崎旭温泉がある。営業時間は午前10時から午後8時で、料金は大人600円。炭酸泉の中でも泡がしっかりとしていて「発泡入浴剤を30個入れたくらいの刺激を楽しめますね」。泡を保つため通常低温のことが多い炭酸泉の中でも、比較的高温であることも特徴。源泉を入浴中に飲むことも持ち帰ることもできるのも魅力だ。
乳頭温泉郷(秋田県)
景観の美しさでは秋田県の乳頭温泉郷が有名だという。東京駅からは新幹線で2時間50分。七つの温泉宿があり、入湯料金は600円前後で宿泊費は8千円台後半〜約2万円。宿自体が一つの町のようになっている。「広い露天風呂からは美しい景色を満喫できます。冬の雪景色は格別です」。いずれかの宿の宿泊者は、「湯めぐり帖(1800円)」を購入し泉質の異なる七つの温泉を巡ることもできる。
この記事は2019年9月24日号に掲載された記事の拡大版です。本紙では他にもオリジナルの記事を公開しています。
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