自分の場所は自分で守る
本郷キャンパスの正門から150mほど西に進んだ先に、本郷消防団第三分団本部の建物が見える。本郷キャンパスは本来第一分団の管轄だが、工学部周辺が現場となる時は、距離の近い第三分団が出動することもあるそうだ。
第三分団には東大関係者も数人在籍する。入団して1年半の鈴木敦己さんは、工学部建築学科の3年生。建築を学ぶ過程で、コミュニティー内でどのような活動が行われるかに興味を抱き、地域住民で組織される消防団に入団した。
勤続13年で副分団長を務める中嶋信さんは、医学系研究科法医学教室の技術専門員で、解剖の際には焼死体をよく扱う。火事の現場を経験することで死体の状況から出火原因をどのように突き止められるかという問いに対するヒントが得られるのではないかという思いが、入団を後押しした。
分団長を務めるのは、勤続43年の大ベテランで本業はタクシー運転手の西脇繁和さん。消火活動では団員の安全を考えて指示を出す重大な責任を負っている。
消防団の主な活動は、お祭りでの警戒や学校での防災訓練といったイベントへの出動。活動は週末に行われることが多いため仕事がある団員も参加できるものの、平日に行われる場合は主婦などが中心となり出動する。
消火活動では、主に消防署員が火の中に入り、消防団員は交通整理や残火処理を任される。残火処理では炎が収まった後、がれきの下敷きなどになってくすぶり続けている火の元を探し出し鎮火する。場合によっては何時間もかかる大変な作業だ。
団員数の維持には苦労していると語るのは、分団長の西脇さん。第四分団の管轄下の根津では商店を営む人が多く一定の団員数が維持されている。だが第三分団が管轄する本郷通りから西方面には商店が少なく、転勤のあるサラリーマンの団員が多いので、団員数が安定しないのだという。「根津などに比べてこの地区は高台で川の氾濫や火災が少ないので、住民の防災意識が低いことも、団員数の少なさの原因かもしれません」と懸念する。
消防団は随時団員を募集中だ。「東大生や教職員にはぜひ入団してほしい。理系の研究室には薬品など危険物が多いので、どこに何があるのかを知っている内部の人間が消火活動に関わるのが最善です」と中嶋さん。「自分たちの場所は自分たちで守るのが基本」と皆、口をそろえて強調した。
消防団は随時団員を募集しています。応募方法は下記リンクから
https://tokyo23city-syobodan.jp/
この記事は2020年2月4日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。
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地域の顔 本郷編:本郷消防団第三分団:
キャンパスのひと:江田和音さん(文Ⅲ・2年)
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