学術ニュース

2016年12月1日

葛飾北斎の工夫ヒントに「除染スポンジ」開発 福島県での実験で効果

 アダヴァン・キリヤンキル・ビピン特任研究員(工学系研究科)らは、浮世絵師葛飾北斎が顔料に施した工夫をヒントに放射性物質セシウムを選択的に吸着するスポンジを開発したと発表した。東日本大震災被災地の除染作業の効率化が期待される。成果は15日付の英科学雑誌『サイエンティフィックリポーツ』(電子版)に掲載された。

 

 通常、除染では放射性物質の前に大量の他の化学物質を取り除く必要がある。北斎が用いた顔料「プルシアンブルー」はセシウムを選択的に吸着する除染の特効薬として知られていたが、水に溶け出しやすくセシウムの吸着後回収できないという問題があった。

 

 アダヴァン特任研究員らは今回、北斎が顔料に施した雨に溶け出さない工夫から着想。セルロースでできた非常に細い繊維とプルシアンブルーを結合させて不溶性プルシアンブルーを合成し、除染スポンジを開発した。福島県での実験では1カ月で放射線量が半減。除染スポンジに植物を植え、根からセシウムをスポンジまで吸い上げると除染効率が高まることも判明した。

 

 使用後圧縮が可能なスポンジは廃棄場所縮小にも貢献。今後大規模な実証実験を行い、実用化を目指す。

 


この記事は、2016年11月29日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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