オンライン授業や外出自粛により、自宅にこもりがちになっている読者も多いだろう。インドア派の記者もさすがに息が詰まるようになってきた。そこで部屋に潤いを与えるべく、今回は空きこまを利用して生け花に挑戦する。
生け花の文化は室町時代に成立したとされ、今日に至るまで長く親しまれている。生け花の世界では、植物の持つ形と風情を生かしつつ作者の思いを表現することを目指す。フラワーアレンジメントとの違いは「線を見せること」。フラワーアレンジメントでは花をぎゅっと集めて形を作るが、生け花では茎や葉の線を生かして空間を造形する。「生け花」と聞くとお堅いお稽古ごと、という印象を受けるかもしれない。しかし今回挑戦するのは池坊の「自由花」。少しのこつさえつかめば、文字通り自由に楽しむことができる。
前置きはこのくらいにして、早速始めよう。
15:10 用意する道具は花器と剣山とはさみ。花器は家にある食器で十分だが、水を張れる程度に浅すぎず、深すぎないものが望ましい。剣山は華道具店やインターネットで1500〜2000円程度で購入できる。花材として選んだのは、花屋で購入した1500円のサービスブーケだ。花材を用意するときには、線を表現するラインフラワーと主役になるマスフラワー、穴埋めと肉付けをするフィラーフラワー、そして葉物があると生け花らしく見える。
今回使用するのは、リンドウ(ラインフラワー)、カーネーション、バラ(マスフラワー)、スターチス、アストランチャ、スプレーカーネーション(フィラーフラワー)、縞ハラン(葉物)。ちなみにリンドウは今(8月〜11月)が旬の花である。
15:25 まずは花器に剣山と水を入れる。水の量は、茎下が水に漬かる程度入っていれば大丈夫だ。
最初に生けるのはラインフラワーのリンドウ。花をくるくる回しながらよく観察して、最も美しく見える向きを探す。生け花の世界では花材の長さや配色バランスで7:5:3の比を作ることと非対称にすることが大事にされるため、これらを意識するとぐっと生け花らしさが増す。今回は、2本のリンドウで高さの7:5を作った。花の茎が剣山の奥の一点に向かって伸びていくイメージで、真っすぐ挿してから倒すと良い。
アウトラインができたらマスフラワーを生ける。先ほどリンドウで高さの7:5を作ったが、バラも入れて7:5:3が完成。カーネーションを使って挿し口を隠したのがポイントだ。
次に、フィラーフラワーを生けていく。密・疎、長・短などの対比を作るのがきれいに見せるこつ。リンドウとバラ、カーネーションで大体の形はできているので、好きなところに好きな長さで生ける。ただし、水に葉が漬かったり隣の花と触れたりするとバクテリアが繁殖して花持ちが悪くなるので注意が必要だ。
最後は葉物の縞ハランで仕上げ。これが入ると一気に印象が変わって引き締まる。
16:35 後片付けも忘れずに。特に、使ったはさみはきれいに拭こう。バクテリアがたっぷりついたはさみで花を切ると道管閉塞(どうかんへいそく)の原因になってしまうのだ。
16:40 完成した作品を部屋に飾る。本来生け花は床の間に飾り座って鑑賞するものなので、目線の高さで正面から見られる壁の前に飾ると良い。殺風景な部屋にも彩りが添えられたようだ。
剣山は何度でも使えるので、2回目以降は花材を買ってくればすぐに始められる。旬の花材や好きな花材を使って、自由に楽しみたい。【楡】