冬場にインフラが止まったら、何を食べて過ごす? カセットコンロと鍋、ポリ袋があればできる湯煎(せん)調理を紹介。この記事では家庭にありがちな常温保存できる食材を使ったカレーを作る。ひとこま=105分を少しオーバーするが、休講日などにぜひ挑戦してほしい。ポリ袋調理への挑戦をきっかけに「ローリングストック」を始めてみるのもおすすめ。新年、防災対策も見直してみては?
「ポリ袋調理」または「パッククッキング」とは、ポリ袋に食材を入れ、鍋で袋ごと湯煎して作る調理法。加熱用の湯は食材に触れないため再利用でき、袋を皿に被せて盛れば洗い物も少ない。また、カセットコンロを使えば電気やガスの供給が止まっていても大丈夫。警視庁警備部災害対策課のTwitter公式アカウントでは、鮭のバター醤油煮、白菜と肉団子のスープなどの和食のほか、蒸しパンや炊き込みご飯などさまざまなレシピが紹介されている。
この記事では、警視庁警備部災害対策課のTwitterではまだ紹介されていないカレーライスの調理に挑戦。「ツナ」「やきとり」「サバの味噌煮」の3通りの缶詰でカレーを作り、それぞれの味を確かめてみる。
材料
白ご飯 | ||
米 | 80g(1/2合) | |
水 | 100mL(炊飯用) | |
200〜300mL(研ぎ汁用) | ||
カレー | ||
にんじん | 1/6本 | |
玉ねぎ | 1/4個 | |
じゃがいも | 1/2個 | |
(野菜の調理ができない場合) | ||
(大豆) | 1缶 | |
(コーン) | 1缶 | |
A | カレールウ | 1カケ(パッケージの表示から割り出した1皿分) |
シーチキン/やきとり/サバの味噌煮 | 1缶(サバの味噌煮は1/2缶) | |
水 | 100mL | |
湯煎用の水(再利用可) | 1.5L(袋が浸かるまで) |
表1
レシピ
- カセットコンロ、ガスボンベ、ポリ袋、鍋、鍋底よりひと回り小さな皿、材料(表1)を用意する。ポイント:ポリ袋は高密度ポリエチレン製で、「耐熱」「湯煎料理可能」などの表記があるものを使う。
- 無洗米、水をポリ袋に入れ、米の浸水を始める(30分)。無洗米がなければ袋に水を入れてとぐ。
ポイント:といだ米は水気を含むため、水の量を10mlほど減らす。
- 野菜を切る。にんじん、玉ねぎは厚み1〜2mm、じゃがいもは厚み3〜4mmほど。野菜がなければ缶詰の大豆、コーンなどで代用。ポイント:厚く切ると火が通らない。ポリ袋に野菜と表1のAを入れ、口を結ぶ。米の袋も同様に結ぶ。
ポイント1:缶詰は汁まで入れると味がつく。水っぽくなるためその分水は減らす。
ポイント2:食材のすぐ上からポリ袋をねじり上げ、なるべく高いところで結ぶ。空気が残っていると袋が膨れ上がってしまい、下で結ぶと膨らみ切れずに破裂する。
- 皿を鍋底に敷き、ポリ袋を皿の上に置いた後で湯煎用の水を浸るくらいに入れる。カセットコンロにかけ、火をつける。沸騰後30分ほど煮る。
ポイント1:鍋底に皿を敷くのはポリ袋が鍋に直接触れるのを防ぐため。袋の結び目は鍋の内側の側面に直接触れないよう内側に。
ポイント2:加熱の始めからポリ袋を入れておくと、沸騰するまでの熱が無駄にならない。火を消した後も、食べる直前まで湯に入れておいた方が温かく食べられる。
記者が挑戦
まずは調理器具の用意だが、警視庁警備部災害対策課のTwitterで注意されているのはポリ袋の耐熱性。表示を確認し、高密度ポリエチレン製で130度以上の耐熱があるものを探す。
試しに、高密度ポリエチレン製で湯煎調理が可能との明記がある袋、スーパーのレジ袋、食品を冷凍する際に使うフリーザーバッグに水を入れ、実際の調理を想定して煮沸してみた。
10分ほど煮沸した袋を取り出すと、高密度ポリエチレン製袋とレジ袋は感触も変わらず、形も保っている。フリーザーバッグはくたくたになってしまった。これが調理のために数十分になったり、水でなく沸点の高い油分を含む食材を入れたりするとなれば溶けてしまうこともありそうだ。それもそのはず、このフリーザーバッグには「加熱不可」の表示がきちんとある。冷凍を想定して作られたビニール製品は加熱に向かないことが多い。レジ袋はポリ袋と同じ頑丈さを発揮していたものの、表面のインクが流れてしまった。また、レジ袋の持ち手部分が邪魔で鍋に入りきらない、中身を食べにくいという調理器具としての利便性の低さも気になる。
高密度ポリエチレン製でも耐熱温度の低い製品もあるので、パッケージの表示をよく確認。湯煎調理可能との表示があるポリ袋を使う。カセットコンロとガスボンベは一人暮らしの学生の家にはないかもしれないが、これを機にいっそ買ってしまったら心強い。
野菜は小さく、均一に。火が通るよう、体積当たり表面積を増やすつもりで切る。にんじん・玉ねぎは、さいの目切りやみじん切りにしてもよかったが、食べ応えは残したいためそれぞれ短冊切りと薄切りにとどめた。じゃがいもはこれでもかと細かくする。煮溶かして汁にとろみをつけることが狙い。袋の口を結び湯煎するこの調理法では、水分が飛ばないため汁が水っぽくなりがちだという。
レシピでは水から食材を加熱することになっているが、記者は先に水を沸騰させてしまった。沸騰が近づくにつれ、皿の底からボコボコという音が聞こえ、皿が持ち上がっては落ちて鍋の底にぶつかり、ガタンガタンと暴れ回る。皿が割れてしまわないかと不安になってしまう。沸騰後に袋を投入するやり方でもおいしく作れたものの、食材を入れてから水を入れ、火を付ける方が水やガスの無駄もなさそうだ。
いざポリ袋の湯煎を始めると、口のねじり上げが甘かったのか袋がどんどん膨らんでしまった。米と3種のカレーの4袋を一度に煮ているのもあり、膨張した袋が鍋の蓋を押し上げてしまう。なお、袋の口をねじり上げて空気を追い出し切っても、水分が蒸発するためどうしてもある程度は膨らんでしまう。できるだけ袋の上の方を結び、膨らむ余地を作っておこう。
数十分煮て完成。ご飯は一度上げた際には芯が残っていたため、水を30ml足して5分ほど追加加熱している。
ご飯の袋を外から触った実感では、米がみっちりと詰まり、重く固い。炊飯器で炊いたご飯とは似ても似つかず、不安になってしまう。しかし袋を開けた途端、なじみのある白い湯気が立った。スプーンでご飯をほぐすと、みっちりとしていた外見とは裏腹に、ほかほかと柔らかな「炊き立てご飯」になった。いつものご飯と遜色ない味だ。電気釜もなしに、湯煎だけで米が炊けることに驚いた。
カレーは袋を外からもんで混ぜる。スプーンでご飯をルーの袋に移しながら食べていく。じゃがいもから出たとろみが感じられるが、基本的には3種類ともかなりシャバシャバしている。しかし味が薄いわけではない。最もカレーとしてまとまっているのはツナだ。やきとり入りはタレがルーのコクを増し、ご飯によく合う。サバの味噌煮を入れたものは完全な味噌味になっていた。おそらく味噌のせいではなく、量の多い缶詰を丸ごと入れたためだろう。実践の際は半量をおすすめする。カレーの味ではないが、ご飯とともにおいしく食べられた。調理を実践した11月28日は最高気温が15度を割っていた。コートを着て調理していたものの、暖房を付けない室内はそれなりに寒い。温かいカレーを食べ、ようやく人心地つけた。
湯を入れるだけで温かい食事を取れる防災食はたくさん市販されているが、備蓄の場所がなかったり、備蓄したことを忘れて期限を過ぎ、無駄にしてしまったりするかもしれない。「ローリングストック」は、普段食べているもの、使っているものを多めに買っておいて災害に備える方法だ。ポリ袋の素材を見直すこと、カセットコンロを用意することは防災のためだけなら面倒かもしれないが、生活に少しずつ取り入れるなら苦ではない。今年から始めてはいかが?【広】
【関連記事】