本郷キャンパス周辺にオープンした「HELLO,VISITS東京大学」は、東大シリコンバレー計画を掲げるコミュニティスペースだ。大学生・大学院生なら無料で使うことができ、ドリンクやアイス、ポップコーンなどのフリーサービスも充実している。さらに、WiFiや電源まで完備している。
こんなお得なスペースの仕組みや目的について、運営を取り仕切るディレクターの加島考司朗さん(文III・2年)に話を聞いた。
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外観は全面ガラス張り。店内に入ると、天井が高く開放感あふれるおしゃれな空間が広がる。所々にソファが置かれ、学生たちがパソコンを開いて作業していたり大きなテーブルで話し合ったりしていた。奥に進んで2階に上がると、加島さんが出迎えてくれた。あいさつをした後「どうぞ」と紙コップを渡された。「本来なら下の受付で渡すんですけどね」と加島さんが言う通り、受付でもらうコップに、セルフサービスでドリンクを入れる仕組み。無料で提供するための資金は、協賛する企業から得ているという。椅子に腰掛けると、座り心地がよく作業もはかどりそうだ。
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しかし、ただ居心地の良い作業空間というだけではない。加島さんによると、「HELLO,VISITS」のコンセプトは二つあるという。一つは「セレンディピティ、つまり偶然の価値ある出会いを生み出すこと」。もう一つが「出会いを通じてイノベーションを生み出すこと」。この場合のイノベーションとは「新しい何かを生み出すことに加え、既存のモノや概念を結合して新しい価値を生み出すこと」を指す。これらの実現に向け、セミナー、ワークショップ、懇談会などさまざまな形態のイベントが、社会人を交えつつ行われている。学生スタッフは皆「コミュニケーター」として、訪れる人同士の間に立ち、交流が円滑になるように努める。「イベントで意気投合した学生同士が一緒に企業さんに話を聞きに行ったという話も聞きます」 と加島さん。将来的には、 学生スタッフ主導のイベントも増やしたいと考えている。「進学選択や留学に向けた先輩と後輩の交流会などをやりたいですね。よく知らなかったり関心が無かったりする分野でも、他の人と話をすることで、面白さが見つかるかもしれません」
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このように、「HELLO,VISITS」にはイノベーションを起こすために必要な環境が整っている。将来的にはシリコンバレーのように世界中の人々が本郷に集まる日も近いかもしれない。新しい見地をもたらしてくれる出会いを求めて足を運んでみてはいかがだろうか。
(武井風花)
この記事は、2018年9月18日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。