秋山雅人講師(九州大学)や鎌谷洋一郎教授(新領域創成科学研究科)らによる理化学研究所の研究グループは、日本人約19万人のゲノム解析を行い、身長に関する573の遺伝的変異を同定した。身長に影響する二つの遺伝子を新たに特定した他、頻度の低い遺伝的変異が高身長につながる傾向にあることも判明した。成果は9月27日付の英科学誌『ネイチャー・コミュニケーションズ』(電子版)に掲載された。
体重など、遺伝的要因と環境的要因で生じる特徴を多因子形質と呼ぶ。多因子形質の特定にはゲノムワイド関連解析(GWAS)という、ゲノム上の遺伝的変異を網羅的に選別する方法が用いられていた。しかし日本人の頻度が低い遺伝的変異は解析精度が低く、十分な検討ができない上、日本人を対象とした研究は小規模なものだけだった。
鎌谷教授らは多因子形質の一つである身長に注目。「全ゲノムインピュテーション」という、実験で測定されていない遺伝的変異を推定する手法で、従来の100倍近い数の遺伝的変異の比較を可能にした。結果、573の遺伝的変異が日本人の身長に関わることが分かった。うち64の変異は、従来の方法では検出が難しいものだった。
さらにタンパク質に影響する遺伝的変異の情報を用いて遺伝子単位で調べることにより、二つの遺伝子が人種にかかわらず、身長を高くすることに関わっていることを明らかにした。日本人の頻度の低い遺伝的変異は身長を高くする傾向にあることも分かった。日本人の集団では身長を高くする効果を持った遺伝的変異が自然淘汰を受けていたこと、つまり高身長が日本人に不利な影響を及ぼしていたことが示唆される。
この記事は2019年10月15日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を公開しています。
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