イベント

2018年9月6日

学生の自由が生み出す新演出 オペラ企画はまぷろがドニゼッティ「愛の妙薬」を上演

HAMA project(はまぷろ)について

 

写真はHAMA project提供

 

 はまぷろは、学生および若手演奏家を中心としてオペラを上演する団体として2017年に設立されました。3月には初回公演として「フィガロの結婚」を上演しました。オペラを上演するために、異なる役割を持ったメンバーがいます。

 

 まずは歌手です。歌手には、劇の中心となる登場人物を歌うキャストと、その背景で群衆として劇の展開を支える合唱がいます。

 

 次に、オーケストラです。公演によって規模は様々ですが、弦楽器・管楽器・打楽器とフルオーケストラがそろい、指揮者のもとでオペラの屋台骨を作り上げます。公演中は、舞台から一段下がったオーケストラピットにいます。

 

 最後に演出チームがいます。衣装・大道具・字幕など、多岐にわたる業務をこなし、歌手とオーケストラによる音楽が表現する世界を、目に見える舞台の形にします。

 

はまぷろの目指すもの

 

写真はHAMA project提供

 

 プロとアマ、そして音大と一般大とを問わず、多くの若者が集まり、共に「オペラ」を上演する。これは、いわゆる市民オペラや音大の卒業制作とは一線を画するものであると思っています。

 

 オペラは音楽を中心とした「総合芸術」です。演奏の質は間違いなく公演の核になりますが、それが真価を発揮するためには、物語の解釈、演技、空間設計、衣装の作製、字幕への翻訳といった作業が全てかみ合い、一つの世界を表現しなければなりません。多くの小規模な公演では、衣装を出来合いや自前のもので集め、演出は外からの招聘(しょうへい)や模倣で賄ってしまい、借り物のような印象になってしまうことがままあります。小回りのきく集団で、公演の背骨となるプランから造っていくことが当団の醍醐味です。

 

写真はHAMA project提供

 

 また、オペラはそれぞれの演目が「上演史」の上に成り立っています。お客さんの中にも、既に何回も同じ演目を見ている方が多くいます。しかし、オペラは固定された何かを繰り返すものではありません。オペラの歌詞は反復が多く、時間の割に非常に文章は少ないものです。なぜ彼はこの歌を歌うのか、彼女はどのようにそれを聴いたのか、これまでに世界中で様々な演出が行間を補う形で生まれてきました。ここに、新しい演出への挑戦が可能になるのです。時には定番の解釈をあえて裏切って驚かせる。それが成功した時、我々は作品の新しい魅力を引き出せるのです。

 

 最後に、職業や大学といった垣根を越えた「自由」が公演に力を与えてくれます。我々の公演は、合唱サークルが華やかなドレスを着るための舞台や、門下生として練習の成果を発表するための舞台ではありません。作品を中心に自由に準備を進めていけるのです。プロの公演でも、特に学生はなかなか作品に向き合うという根幹の部分に関わることができず、経験者の指示のもとでオペラの一端に触れることしかできません。音楽、演技、装飾というあらゆる要素と協働しながら、巨大な作品の中に自分たちの新たな物語を作り上げる、という過程は、他ではなかなか味わえないやりがいと経験を与えてくれます。

 

次回公演「愛の妙薬」について

 

2018年9月14日、18:30開演、ムーブ町屋ムーブホール

ドニゼッティ作曲「愛の妙薬」(全幕原語上演、字幕付き)

入場料1500円(全席自由)

団体HP http://koyohamamoto.com/hamapj/

 

 今回の秋公演では、より挑戦的な表現を模索し、「愛の妙薬」を読み変え演出でお送りいたします。劇中で歌われる「人知れぬ涙」は、多くの方が一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。しかし、この切々とした旋律の他の場面は、ほとんどが軽妙な音楽に満ちた喜劇なのです。浮いている、とまで言われることもあるこの名曲のイメージを大切に、そのさらなる魅力を引き出そうと、新演出を考案してお待ちしております。ぜひお越しください。

 

HAMA project

バリトン・ドラマツルグ兼任 伊藤薫(医学部医学科4年)

 

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