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2023年10月31日

東大ガールズハッカソン2023開催 参加者の記憶に残るイベントを

集合写真

 

 女子学生を対象に、プログラミングをゼロから学びアプリケーションの開発に挑戦する「東大ガールズハッカソン2023」が921日、22日に開催された(主催・東京大学新聞社) 。ハッカソン(hackathon)とはプログラムの作成を意味するハック(hack)とマラソン(marathon)からなる造語で、一定の期間でマラソンのようにプログラムの開発を集中的に行い、チームごとにアイデアや成果を競うイベント。4年ぶりの対面開催となった今イベントの様子をレポートする。(取材・松本雄大)

 

開発テーマは「思い出を作る、残す」

 

 東大の情報理工系学科の女子率が低い状況を受け、プログラミングや情報理工系への進学に興味を持ってもらうための本イベント。情報理工系学科での男女比不均衡の改善やIT業界における女性エンジニアの活躍を目指し、2016年より開催している。本年度参加したのは学部生と大学院生合わせて15人で、半数超がプログラミング初心者だった。

 

 参加者はハッカソンに先立ち、8〜9月にプログラミング講習を受講。プログラミング学習サービスProgateを利用してJavaを学習し、プログラミングの基礎知識を習得した。9月8日には、ハッカソンで開発するアプリのアイデアを出し合うアイデアソンを開催。参加者は3~4人ずつの計5チーム(「スペースコアラ」、「なつやさい」、「choCOdings」、「spring32」「我愛猫」)に分かれた。白熱した議論により思わぬアイデアが生まれていた。

 

 今年の開発テーマは「思い出を作る、残す」。新型コロナウイルス流行によるさまざまな制限が緩和される中アプリ開発を行うチーム「なつやさい」で、旅行やイベントなどの多様な活動が再びできるようになった社会情勢を鑑み、ここ数年作り得なかった思い出を新しく作り、また残してもらいたいという希望を込めてテーマを設定した。

 

アプリ開発を行うチーム「なつやさい」
アプリ開発を行うチーム「なつやさい」

 

白熱した議論 考え抜いた18 時間

 

 迎えたハッカソン当日。1日目は9時に開始し、昼食・夕食を挟んで20時までアプリ開発に取り組んだ。チーム「なつやさい」は、開発テーマからお祭りの運営を想起し、その運営を手助けするアプリケーションの開発を行った。担当者が毎年変わる仕事では情報の蓄積が必要となるため、アプリ内で年度ごとに各仕事の引き継ぎ資料ページを作り、QRコードと資料ページをひも付けることで誰でもQRコードからその資料に飛び、書き込みを行えるように実装。チーム「Spring32」は子供の自主性を高めることを目指し、親が立てることの多い旅行の計画や身近な地区の散策コースを子供が自ら立てられるように補助し、旅行の思い出を記録に残すアプリ開発を行った。日数や時間、行き先を入力するとコースを提案するアプリの開発はUI(ユーザーインターフェース)を含めて難易度が高く、苦労している様子だった。対面での開催ということもあり、グループ内での活発な交流が見られた。

 

 2日目もアプリ開発は続き、発表スライドの提出締め切りの午後4時半までどの班も開発・スライド作成に励んだ。

 

 2日目の午後5時から発表会が開始。各チームの持ち時間は発表5分、質疑応答5分で、各協賛企業と東京大学新聞社の審査員が評価した。スライドも洗練され、伝わりやすい発表が多く、実際に目の前でアプリのデモを披露することで各アプリの工夫がじかに伝わった。

 

 「我愛Pet」というアプリを開発したチーム「我愛猫」は、班員が行ったアンケート調査からペットとの思い出をより鮮明に残し、その記録を発信するアプリに需要があることを見いだし、開発を行った。

 

 チーム「スペースコアラ」は「Yulbo」というアプリを開発した。少し時間が空いているときに他の人と予定を調整してくれるアプリで、人を誘うという行為をアプリ上で行うことで心理的な抵抗を下げる、時代の流れを捉えたものだった。

 

 チーム「choCOdings」は一人旅が好きな人をペルソナにした「TrabvelLogger」というアプリを開発した。旅の記録を残すことのできるこのアプリは地図上から旅行先で撮った思い出の写真やその時に記録した文章を記録することができる他、動いた経路の記録も可能だ。

 

 全てのチームの発表が終わると、審査を経て、協賛企業から企業賞が授与される表彰式が行われた。三井住友銀行賞を受賞したのがチーム「なつやさい」。もうけが出るかというビジネス的な視点と社会的価値の創造の2軸で評価した際に、ボランティア活動的な必要だが維持が難しいのを管理しやすくするという視点の良さが評価された。

 

 Bloomberg賞を受賞したのは「我愛猫」。3年前の東大ガールズハッカソン参加者が審査員を担当した。2日間という短い時間にもかかわらず、さまざまなツールを組み合わせたことが評価された。

 

 日本生命賞を受賞したのは「choCOdings」。マネタイズやペルソナの設定が評価され、社会的な需要が見込まれることやアプリ自体の拡張性が評価された。

 

 Progate賞を受賞したのは再び「なつやさい」。発表面ではどの技術を使用したのかを明記したところ、アイデア面では自分が欲しいものではなく、誰かの課題を解決するためのものという点が評価された。

 

 最後に東大新聞賞を受賞したのはこちらも2冠目となる「choCOdings」。一人旅という映(は)えないものを世に広めるという視点に一新聞記者として共感したこと、スマホやインターネットの登場から記録をすることへのハードルが下がり、その点をうまく突いていると審査担当者は評した。

 

 東京大学新聞社理事の川出良枝教授(東大大学院法学政治学研究科)は「今年で8年目になる本イベントですが、依然として情報分野は男性優位の世界であると思います。その中で女性が参入していく一助になればうれしいです。」とコメントし、イベントを総括。

 

 学習期間やチームでの開発時間は短かったが、対面での開催ということもあり、参加者にとって新たなつながりをつくるなど大きな意義のある濃密な時間になっただろう。2日間の奮闘を終えて成長した参加者の今後の活躍に期待したい。

 

(参考)今回のアプリ一覧

 

ハッカソン参加者の感想

 

上山千乃さん(工・3)

 

去年からガールズハッカソンの存在は知っていたのですが、アプリ開発を行った経験があまりなかったので参加せず、今年はプログラミングのサークルに入ってある程度コードを書けるようになったので参加を決めました。チームでは子供向けアプリの開発を行ったため、見た目を平仮名にし、分かりやすくシンプルなシステムにすることを心掛けて開発しました。しかしJavaでUIを作ったことはなく、一からその部分を学ぶ必要があったのが大変でした。ハッカソンを振り返ると、プログラミングサークルなどに所属してもあまり女子学生の人数は多くない中で、女子だけのチームで開発できたのは珍しい経験ができ良かったです。

 

櫻井美里さん(理一・1)

 

 駒場キャンパス内に貼られているポスターを見てこのイベントの存在を知りました。情報系やアプリ開発に興味があったことと、夏休みの日程的にも都合が良かったので参加を決めました。アプリ開発ではFirebaseを利用してサーバーからデータを取得しようとしたのですが、データの連携がうまくいかずなかなか取得ができなかったのが難しかった点ですね。一方でプロトタイプを作ってから必要な箇所のコードを書くことを意識したので2日間という短い時間の中で必要な箇所を明確にしてプログラミングを行えたのが良かったです。チームは全員Androidアプリ開発の初心者だったのですが、終盤では各自役割分担して開発することができるようになり、自分の知らないうちに新たな機能がチームメンバーによって実装されているというワクワク感が味わえたのも良かったです。

 

ハッカソン運営代表のコメント

 

 今年で東大ガールズハッカソンは8回目を迎えました。プログラミングに親しんでもらい、最終的にはIT業界での女性エンジニアの活躍を目指し行ってきた本イベントですが、今回過去の参加をきっかけにエンジニアになられた方がメンターとして参加してくださるといううれしい出来事もあり、このイベントの意義を再確認することができました。今年のテーマは「思い出を作る、残す」ですが、このハッカソンも参加者の皆さんの思い出の一つとなり、将来ふと思い出してもらえるようなものになれたら幸いです。

 

 最後に、本ハッカソン開催にあたりご尽力いただきました皆さまに感謝申し上げたいと思います。ありがとうございました。

 

【協賛企業】

三井住友銀行

日本生命保険相互会社

Bloomberg L.P.

HLab Inc.

株式会社Progate

ビッグホリデー

ジョルダン

 

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