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2023年5月10日

4年ぶりの利き酒、大観客の中での製鉄、仕切りなしでの漫才。五月祭に向け学生の思いは

 

 本年度の五月祭は来場者の入構制限なし、飲食物の提供ありで行われる方針だ。予定通り開催されれば、入構制限の撤廃はコロナ禍以降初、飲食物の提供は五月祭としては4年ぶりとなる。一方で昨年度に引き続き、対面開催とオンライン開催を組み合わせたハイブリッド開催で行われる。五月祭常任委員会はどのような検討を経て開催形態を決定したのか取材するとともに、「4年ぶり」に合わせて企画を工夫する企画団体の担当者に話を聞いた。後編ではコロナ禍を経てそれぞれの対策と思いを持って企画に臨む3団体を紹介する。(構成・金井貴広、取材・青木佑磨、中村祐貴、岡拓杜

 

【前編はこちら】

4年ぶり入構制限なしの五月祭で何が変わるのか。常任委員会に聞く

 

【農学部生命化学工学専修】4年ぶりの日本酒提供

 

コロナ禍以前の利き酒(写真は山田さん提供)
コロナ禍以前の利き酒(写真は山田さん提供)

 

 2019年の五月祭の人気投票で総合3位を獲得した目玉企画が4年ぶりに復活する。4銘酒の日本酒の飲み比べを無料で提供する。試飲前には日本酒を楽しんで飲むこつを伝えるプレゼンを行い、試飲後にはアンケートに回答してもらう。アンケート結果を各酒蔵に届け、商品の改良につなげる。日本酒は全て各酒蔵から無料で供与してもらっている。今回は事前に試飲したい銘柄について一般公募を行い、用意する日本酒の種類に反映させた。コロナ禍以前からのつてを頼りに、約90の酒造から98銘柄を集めた。2日間で約3000人の来場者を見込んでいる。

 

 主体となる学部4年生にとって4年前の五月祭は入学前であり、今回は右も左も分からない状態からのスタート。そのような中2月下旬に委員会は五月祭での開催形態の方針を決定した。2月までにも企画のための手配は進めていたが、早めの発表のおかげで現実味をもって準備できたという。

 

 キャンパス内でアルコール類を購入・所持する際には五月祭常任委員会が発行する「アルコールパスポート」の着用が必須だが、「利き酒」でも飲酒ブースに入場する全ての人にパスポートを提示してもらう。

 

 学園祭は飲食物あってこそとした上で、「利き酒」は来場者からの注目度が高いことを意識しており、期待に応えたいと意気込む。

 

談・山田健登さん(農・4年)

 

【工学部マテリアル工学科】マテ工の面白さ伝えるたたら製鉄

 

手作りの炉で製鉄
手作りの炉で製鉄(写真は田中さん提供)

 

 東大工学部マテリアル工学科は、たたら製鉄の実演を実施する。たたら製鉄は砂鉄と木炭を用いる日本古来の製鉄技術で、ジブリ映画「もののけ姫」にも登場する。マテリアル工学科の伝統企画で、製鉄するための炉は既製品ではなく、学生たちで組んだものを使用する。企画の最後に鉄を取り出し、それを冷却した上で来場者に触れてもらうことを予定している。

 

 昨年も屋外企画として行ったため、感染対策上の変化はあまりない。今年の五月祭では入構制限がなくなり、来場者が多くなると見込まれる。課題として考えられるのは来場者の安全確保だ。炉に近づけないようにする、多くの人が集まれるように広いスペースを確保するなどの対策を考えている。

 

 入構制限がなくなったため、多くの人に来てもらえる可能性があることがうれしいと話す。昨年はオンラインでも学科を紹介する企画を行っていたが、今年は見た目で人を引きつけることができるたたら製鉄に企画を絞り、対面での魅力発信に注力する。日本刀や工具、農具の素材となる、たたら製鉄で作られた鉄を見てもらい、ポスターを用いながら学術的な内容を含めた説明も行う。マテリアル工学が「科学の基盤」であることを発信することで、その面白さを感じてもらいたいという。「必ずしも製鉄がうまくいくわけではないので、まずは成功させたいです」

 

談・田中一樹さん(工・4年)

 

【お笑いサークル笑論法】コロナ禍を超え笑いは届く

 

仕切りがあった昨年の五月祭
仕切りがあった昨年の五月祭(写真は勝山さん提供)

 

 東京大学お笑いサークル笑論法は、漫才をはじめ幅広いジャンルのネタを披露している。普段の小規模なライブより観客数の多い五月祭でのパフォーマンスは、大会と並ぶ特別なイベントだ。部員たちの熱意も高まる。ただ、コロナ禍では種々の制限に苦しめられたという。

 

 3年ぶりに対面でのパフォーマンスが可能となった昨年の五月祭でも、入構制限や座席間隔の確保により収容できる観客数は制限され、笑い声が集まりづらくなった。そうした経験を踏まえ、昨年の駒場祭では制約の多いステージから自在な運営が可能となる教室へと場所を変更し、時間も終日公演とした。その結果、観客数は満席の80人を記録し、跳ね返ってくる笑い声も段違いだったと振り返る。希望する部員全員に出番があるように公演数を増やせたことも利点となった。コロナ禍で引き継ぎがない中、手探りでたどり着いた新しい形だ。今年の五月祭でもこれを踏襲する。

 

 駒場祭から変化する点もある。通常のライブに近い形態での開催だ。これまで設置義務があったアクリル板やフェイスシールドが不要となることで、ライブ中に感じていた客席への声の通りづらさが解消されるのがうれしいと話す。入構制限も撤廃され、新たな客層として期待される中高生に合わせてネタ内容も調整しているとのことだ。「大学お笑いの精鋭たち」が繰り広げるネタの数々を見逃すことはできない。

 

談・勝山雄一朗さん(理II・2年)

 

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